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鏡の地平 (5/9)


 



……密林の中……


 

 


「 いたい!いたいよぅ、」



 血を流しながら……腕と脚に、その原因の金属片の破片が刺さっている状態の、

 ラキアがその土の地面の上に、転がって、倒れていた。



 

「うっ……ぐっ、くっ、…〈倍力魔法〉っ!…

 ぁっ、うあっ、…てぁっ!」



 あっっ! はーっ、はーっ、はーっ…あーっ…


 

 力任せに、……ラキアは、

 なんとか破片を引き抜いた。



……痛覚鈍化魔法、止血魔法、治癒修復魔法、それから……

 ぅう、ううぅ、!


 地面の土が傷口に入って染みる!

 激痛にたちまち目から涙を溢れさせたラキアであったが、一瞬遅れて、痛覚鈍化の魔法が効果を出して、幾分の度合いか、痛みのボルテージは多少和らいだ…


「み、んな、は……」


 薄暗い密林の中、上空では、仲間たち魔法少女と、それから……

 飛竜というのは、見たことがある。学舎の教練で見せられたことがあるからだ。

 巨鳥類も同じく。

 このふたつは、敵の今回の戦力として、たしかに空中で接敵して、戦った。


「う、ぅう、っ、」


 だが……

 なんだあれは、単座の飛空艦?

 ノイズィーな、クラフタ……耳障りな騒音を立てる、何がしかの乗り物。


 

 それというのと、激しい交戦をしている。

 

 


「魔力が、足りない……魔動機の機関を再作動させて、充填回復しないと、


………、…、


 ! かかった!

 

 予備機関は作動する!

 だけど、メインの主機関が、作動しない……」



 ラキアは、絶望を呻いた。

 


「 魔動機に、スタートが掛からない……

 非常時の炸薬式緊急始動もできない……

 土地の湿気で、火薬カートリッジが駄目になってたんだ……」

  

 

 嗚呼、

 


「……アヴトリッヒ製の新型の魔導機なら、

 ディーなんたらとかっていう新型の魔導出力機のおかげで、

 こういうことにはならない、って聞いてたんだけどなあ……


 だけど、

 わたしたちには、その機械が、回されてなかったんだよね……」

 

 


 所詮は、人身御供……生贄、なんだな……わたしたち。




(…帰らないと。無事に、基地まで、帰らないと…

 おれちゃんさんのこと、

 名前でちゃんと呼びあえたこともないのに、

 名前で呼びかけたこともまだだったのに、

……まだ…死ねない…

 死にたくなんか、ないよぅ!!)





…… 。、、。、……


 


「 あ……」



……遠くから、密林の林を掻き分けて来る音。

 バキメキベキ、と、枝と幹が折られて、葉が散って落ちてくる音、

 それが巨大な歩行の足踏みの音とともに、地鳴りのように、響いて、近づいてくる……



「 敵の、ランナバウトが接近してくる……わたしが目的?! 」 



 

 先日のナヴァルの発言もあって、真っ青な表情になるしかなかったラキアだ。

…捕まったら、どうなってしまうのか?

 

「……~~っ!!?」

 

 一気に身震いがしてきて、両腕の手で、両の肩を抱きかかえて、震えてしまった。

 それが、最後のタガが外れた瞬間だった。


 下半身から、尿の失禁をしてしまった。



「…あ、…うぅっ、えっぐ、ひっぐ、……うぁわあぁあん……」


 

“ラキアちゃん、敵の航空部隊は撃退したよ!”


 

「え。?」

 


“ラキア、いますぐ迎えに行く、助けに行く、まってろ!”


“待っててね! いま、私達が、あなたを助けに行くから!”


“ラキアちゃん、がんばって!”



 

「みんなぁっ!!」



 ラキアは、喜びに、泣きべそと鼻水まみれの己の顔を、輝かせた。



 これで、あの人のところに、帰れる。




 わたしたち、勝ったんだ!



 

「……ぇ、」


 

 

……次の瞬間、ラキアのその表情は、凍りついたものとなった。

……地上のランナバウトから、火器管制装置の統制による対空射撃が開始されたのは、その刹那だった。

 



「こ、これは……?」



 

 この機を待っていた、……ランナバウトの乗員らの舌なめずりが見えたかのような気分だった。

 連発して飛翔発射される、短距離対空ブラストログ、対空魔導速射銃の類……

 仲間たちは被弾しながらも、絶叫を呻きながら、それでも、ラキアを助けようとして……、

 そのたびに、地上のランナバウトに、良いように、弄ばれて!

 

 

 

「ちがう、敵は、わたしを、生き餌の釣り餌がわりに、つかってるんだ!」

 



 もう、やめて!




 


「ナヴァル……聞いたか?」


 

「ああ、もうやめろ、とさ。」


 

「バカにされた気分だ。……このシミターを、なぁ!」

 

 



 えっ……?



 絶望と失血で朦朧とする頭であったが、

 通信から聞こえたその声に、ラキアは目が覚めるような思いが感じられた。



 

 バキボキメキ、と、密林の樹枝と幹をへし折って、現れた姿が、もう一つ現れていた。

 


 シミターだ。

 そうしてそのうち、この、一機のシミターが、この時、相手のランナバウトたちに対して、

 何回も、機銃の斉射を吹かしながら、

 ゆっくりと……一歩、二歩、三歩、……と、


 ジャングルの只中から現れさせた己の機の機体を、

 前進を停めさせず、

 まるで、披露するかのように、出現をさせた。



「ナヴァル!」「アイ・サー!」


   


 次の瞬間、始動したシミターが、駆動機の轟音を奏立たせながら、

 まるで暴風のように…

…わずか三秒の内に、機体の進行速度を、目まぐるしい速度の高速にへと、かっ飛ばさせた。


 

 突撃が開始された瞬間だった。 

 

 

 シミターの吶喊とっかんであった。

 

 

 

*****


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