異世界貴族っ子、お風呂に入る。- 改定・高解像度版(1/6)
描写が薄かった話を、実験的に高解像度化してみた次第です
みなさま、どうぞごゆるりと……
* * * * *
…………
がちゃ、と。
「おっ、ラッキー!
湯船に、お湯張ってあんじゃん。」
再び、ばたん、
…………
「おふろ♪ おふろ♪」
よろこびはしゃぐ、ルー
ルーを伴って、ゆうたは自宅の脱衣所の中に居た。
(どうする、か…………
ひとりで入れさせるか? いやいや、なんか水の事故とか起きたら怖いし、
そうしたら……)
考えるゆうたに、ルーは顔を何も考えていない笑顔にさせながら、
「ユウタ、ユウタ♡ いっしょにはいりましょうっ♪」
「とはいってもな……」
「家ではメイドが、いっしょにはいってくれますよ?」
いや、おまえさんちではそうなのだろうが、ってなわけだろうて、
ともあれ、あの銀髪メイドといっしょに風呂か…………
うらやましい……
ユウタはそう雑念を譫言させた……
はてさてそれで、
(おふろ、オフロ♡……////////、……///)
…………
(…………、、、)
(おふろ、ってなんだろ……♡)
ルーは一瞬、はてな? と考えた。
(もくよく、沐浴……だったら、きれいで気持ちの良い湖の水で、
身体を清めるのですけど……)
なにせ、湯の中に入った記憶と経験は、実のところ、このルーには、産湯以来の経験は、なかった。
ルーは目を瞑って、
勝手口の境にした向こうの、自らの生活のなかの“入浴”を回想した。
(……沐浴……)
自分の住処の、祖父の屋敷。
その近くにある、ちいさな湖に、一週間半に一回、メイドと家族総出で沐浴へ行く。
なにも特別と言うことはない。
しかし、屋内で、薪を用意して、熱い湯につかるとしても、水の都合がつかないのだ。
必要から逆算された、ではなく、できない、から逆算された、
消極的な結論づけによって、その習慣に収束したといってもいい。
とはいえ、悪くはない、とルーは感じている。
(むふ~、……//////)
冷たい水の温度で、己の躯が磨かれたような感覚がして……
そのときは、ルーにとって、自分の、“男子、として振る舞う為”の、この嘘の格好からほどかれて、解き放たれる、わずかな瞬間だ。
冷たい、ひんやりとした水で、己の躯……肉体を、荒い、清める。
髪はもちろん、脇……胸……背中……それから、股。
自らの“本当の性別”からは肉体のつくりは逃れられないが故に、特に、清めは念入りに行う……
肉体の芯まで、骨身の随まで、内側まで、肉体の中の心まで、磨き濯がれるような、そんな体感をすることが出来る。
(でも…………、、、)
開放的になれるのはたしかで、
しかし、思わないところが、ないわけではない。
(でも、冷たい水……は、“終わらない秋”のアブトリッヒ領だと、すこし身体が冷えすぎてしまうのです……
おふろ、って、なんだろ?)
なにせ、このめずらしいだんじょんのことだから、きっと驚かされるようななにかが、あるのだろう。
期待に胸打ちときめかさせる、ルーである。
なので、
まず、誰に隠して、誰に秘めるべきなのか。
そんなこんなで、ルーは、まず大前提である、己の“秘密”のこなしかた、について、失念してしまっていた……
「ユウタといっしょに、おっふっろっ、♪……」
「…………」
「!?っ」
ぽかん、となにも考えずに、ここまで来たルー。
しかし、そのとき、肝心なその事を失念していたことに、いま、気づいた。
「どうした、ルー」
「あの、あの、ぁの、やっぱ、り、というか、その、ボク…………」
そう言いつくろいながら、ルーがゆうたの方を見やって…………
ルーは驚愕した。
「ユウタがはだかになってる?!」
「そりゃあ風呂だから、脱ぐさ…………」
そんな、ゆうたは、というと、
(手元のタオルで、俺は股間を隠しながら、である。
女々しい? かもしれんが、しかし、こいつ相手には、なんというか、、…………)
そこまでユウタは考えて、
「なんだよ、俺と入りたいのか? どうなのん? どっちなのさ」
「あの、あの、あの、その、ボク、実は、その…………」
一方の、ルーは……
(言えないよぅっ?!)
お風呂に待望して顔を元気に色づかせていた数瞬前から打って変わって、
真っ青……とまではいかなくとも、真っ白、に、表情が変わってしまっていた。
(ボクが、じつは、その…………)
(……おんなのこ、の、からだ、……で…………)
(おとこのこ、……じゃない、なんて……)
* * * * *
いつかの昔……
……ルーにとっての、物心ついた頃の記憶……
〈いいか、よいか? ルーよ。〉
“はいっ、おじいさまっ”
〈おまえは、己のちからを、秘めた物として扱え。
誰にも、己の異能で、害を与えては、ならん!
そして、そのために、おまえは、男として、そだてられてきて、これからもそれは変わらん。
おまえは……ルーは、おぬしルーテフィアは、いつかくる日までは…
…男として過ごさなければ、ならん。……おぬし自身の身を、自らの異能で、滅ぼさないためにはっ〉
“はいっ、おじいさまっ!”
〈………………〉
“ ? ”
〈……おぬしに、過酷な人生を、死ぬまでおくらせるつもりは、我にも無い……
いつか絶対に、おまえに、何にも枷させられない、そんな日が来るように努力する。
だから、今は耐えてくれ………………〉
“それは、いつまでですか?”
〈それはな、ルーや…………
おまえの異能も、なにもかもを、受け止めて、おまえに絶対の忠義と無二の愛情を尽くしてくれるような…………〉
……
…………
………………
「いつか、そんな好い方に、出会える時が、くるまで…………」
「………………、、、、」
「ユウタ…なら、ボクのこと、…………//////」
「おーい、なにたそがれてんだ?」
「ひゃぅっ?!///////////////」
不意に掛けられたゆうたの声に、譫言していたルーテフィアは不意打ちのように驚いた。
「一衣帯水? とかなんとか……意味違うんだっけ??
同じ湯に入る仲、っていいまわしあったっけ?
まあそういうことでもあるわけだし、」
ゆうたの方は、裏表無く、
(風呂周りの事故させるわけにもいかんしな。
しかし、ずいずい迫るわけにもいかんじゃろし、はてさてどうしたものか……
こりゃ、まいったなぁ!)
しかし一方のルーテフィアには、
己の秘密と正体という、なによりもの隠し事が、あるわけで。