アルヴィスは太陽とともに……(7/10)
「はやく、浮上走行装置にもう一度、火を入れろ! あれに近づかれては、わたしは、この我が艦は!」
無理です! 前方向への前進は砦の壁があって無理ですし、後退進方向には二速までしか入りません!
「 そんな?! 」
ならば、
「 この場で旋回させて、真後ろに艦首を半周させることができんか! 」
や、やってみます! 機関班、動力班! 今から、……──
従卒が叫んだときのことだった。
せ、接近してくる!
「……──~~!!!」
もはや恐慌状態であった。
「 インパクターをつかえ! 接近してきた間際に、やつの動きさえ止めれば!」
は、ハァッ!
指示が矢継ぎ早にブリッジの人間から伝えられるたびに、
発令を受けた艦各部のセクション員は応答するしか無く、
そのたびにブリッジには、
リンリンリン、とベルチャイムが鳴り響く……
……混乱は累積し、不注意と齟齬を誘発し、その結果は破局をもたらす……
「インパクター、作ど……「待ってください、上陸した陸戦隊が!」…あっ……」
ドコォン、と雷鳴の如き轟声がとどろいたのは、今のこの間際のことであった。
……インパクターは作動したのだ。
…… ……
「…、被害を報告せよ!」
取り返しのつかないこととなった確信に染まった顔で、副長は伝声具に声を込めた。
遅れて、マグナホンはそれの可能性に思い当たった。
嘘だろ?
「 ひ、被害報告だと……?」「本艦から出撃した、友軍部隊が、インパクターの作動で損害があった模様!」「そ、そんなものは、……~~!!」
……一瞬のうちの一発で、血屑と肉塊にへと変化還元がなされたのだ。
それも自分自身の手で。
血潮に掛けて、育ててきた部下たちが!
このような、こうまで至ったのだ。
このことの是非と責任は、誰に所在と所以がある?
答えは明白だ。
そうならば、己の、明日からの軍役は?
それからのさらなる未来の日々は?
どうなのだ。
さらに2隻の陸上艦の艦橋部位が着弾し、爆光に掻き消えたのはその時だった。
もう猶予はない…その有様を横目に見て、マグナホンはさらに焦るしかなかった。
もう、もういいだろう。もう、勘弁してくれ……
たった数十分間のあいだだけで、
マグナホンは、すっかり耄碌老人の仲間入りだった。
「……っんだ…」
は、…は?
「……うて、もう、撃て! 撃つんだ!!
まわりなどしらん、とにかく、やつを、寄せ付けるな!」
「え、そ、その……」
バゥン! バゥン……──
そうこうしているうちに、僚艦への被害が、続発していく。
「ふたたび、インパクターを使え!」
も、もう無理です! 魔力蓄圧が、もう底を着いています、このままでは……
「 も、もう無理なのか?!」
しゃ、車長!
「な、なん……──〜〜!?ッ」
側面まで接近していた灰色が、肉薄。
ゼロ距離にまで詰めてきたその機体が、アルヴィスの艦体に、取り付いた。
……各艦の迎撃砲火が、この瞬間、完全に途絶えた……