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アルヴィスは太陽とともに……(2/10)




 省みると、それでもチャンスが無かったわけではない。



 いちおう、この艦に所属する陸戦戦闘隊には、出動と応援の提供には当たらせた。

 けれども、任された仕事は弾薬類の運搬等や陣地構築のその設営、高級将校向けの氷菓子の提供製造とその供給……などと、とてもじゃないが、わかりやすい軍事的成果が得られるようなものとは、遠かった。


 しいて言えば、本艦の陸戦隊に所属するファルコナー屍甲化部隊が、出撃して進軍していったことくらいだろうか。

 元来は司令部の応援要請で砲兵部隊への荷役作業というのを命令されていたのだが、市街への侵攻作戦を進めていた飛空艦隊所属の陸戦隊群らに先んじて、戦闘行動に従事することを“黙認”した、その本人の艦長が、マグナホンであった。

 顛末はというと、両軍ともにブラストログによる制圧射撃の作戦が行われていた当時、

 その射撃インターバルの間隙をくぐり抜けていく……という命令違反まで犯して、市街の奥深いところまで進撃したとのことであったが、

 途中の中途で、「エルトールの勇者」に襲撃され……全滅した、ということである。

 通常こうならば、マグナホンにも何かしらの必罰がくだるのが、軍の命令系統というものであろう。

 しかしF部隊の活躍により市街地に橋頭堡を築くこと自体には成功したという作戦全体での大金星もあり、

 それは陸上艦閥側垂涎の“功績”となって、このマグナフォンの手柄として落ち着いたのが、一連の一部始終でもある。

 このことに、

 このアルヴィスに付属して随伴していた、戦隊を組んでいるその僚艦艇の艦長や艇長らから、

 惜しみない賛辞が……通信旗による信号にて……送られるに至ったほどだ。

……もっとも、この際の一連は居合わせた軍の高官たちの不興を買っており、 

 この戦いが終わった後での自身の都合をつけるには……進退の窮みから脱して自分らたち陸上艦閥の栄光を掴み取るためには、なんとしてでも、これ以上の手柄を打ち取ることが求められても居た。

 すくなくとも、マグナホンの認識としては、そうであった。




 そして、今日で四日目となる本日であったが、今日も今日とてやるべき内容は変わらなかった……

 このフネを客室設備がわりにまんべん遠慮無く使っている軍の将兵からは、ホテル・アルヴィス、……などと莫迦にされ始めているとも聞く。



 軍役としての実存を得たいマグナホンにとっては、全く、屈辱的といえた。



 それでもなんとか説得して、備え付けの備砲で、攻略地点への砲撃支援も行ったりした。

 しかし、それはすぐに中止せざるを得なかった。

 仮眠所のホテル代わりに使っていた軍の高級幕僚が、

「己の睡眠に差し障りがある」として、中止の命令を下したからだ……



 斯様に、腸が煮えくり返るのはその限りであった。



 おのれの軍功は、このフネとともに真価が光らないままに終わるのか!?

 マグナホンは大変に失望したし、焦りもした。つくづく天運やその定めというのを呪わずには居られなかった。



 しかし、今しがたになって、その雲行きが、俄に変わった。




 というのも、曰くがある……

 4日に掛けて五波に渡って行われた攻略戦は、今に至るも成果を出せていなかった。


 特に、エルトールの要塞であるガリウス砦に、正体不明の新型兵器が運用されているとのことであった。

 新型機関砲と思われるそれらによる銃撃により、こちらの陸上侵攻部隊は、都度、全滅。

 航空戦隊による攻撃も、逆に反撃がなされて、損傷、損壊する艦が多発。

 現在、戦力を立て直すべく、損傷したフネを後方送りとしつつある……そのような情勢であるとのことだった。


 航空艦による攻略が不発に終わったので、自分たちのオハコがいまさら、回ってきたのである。



……──陸上艦は数合わせのための兵科ではない!

 常々、そう信念を不屈としてきたのが、このマグナホンという人物であった。



 後方の野戦デポに引き返す飛空艦たちを、陸上艦の船窓の中から見ながら、ファッキューサインをしてやったりもした。

 そのときは、従卒はもちろん、その場に居合わせた下士官から下級の兵士から! 

 全員で大笑いをしたものである……マグナホンは思い出し、笑みを漏らした。

 




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