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アルヴィスの栄光(1/4)

アルヴィスについての前日譚相当の話になります

ぜんぶで4話分です…みなさまごゆるりと…







 異世界の、霞むような青空。

 されどどこまでも広がっているそんな晴天の下に、

 山間を縫う深い街道と、それに連なる丘陵地帯が、はるか遠くまで続いている。


 この異世界、アリスティリーゥの大地は、深い緑に息づいている……



 二国間の国境・ルラフィス森林地帯での模様である。

 その街道は、兵士たちの行軍で賑わっていた。

 軍楽隊のマーチが聞こえてくる。そうして徒歩での進軍が今進められていた。

……センタリア国軍・侵攻部隊の様相だ。

 宣戦布告から、一晩が経過していた。

 そしてその対峙国・エルトール国の勢力を撃破するべく進出中と自負する彼ら彼女ら。

 その兵士たちの顔には、屈託はなく、楽観的で、士気は鼓舞されて旺盛であり、

 どこまでも自分たちの幸運と勝利の先の栄光があるものだと、疑うようなものはなにもなかった。



 そのかれらの勇攻を象徴たりえる、というのが、今見上げればその目の視界の中に、余すこと無く、飛び込むであろう。

 精鋭たる、ワイバーン飛竜騎兵による航空騎兵飛行隊による制空戦闘部隊、

 それから、数の上での主力でもある、巨大な鳥……巨鳥類を使役しての、スカイホーク・戦闘攻撃飛行隊、アルバトロス戦闘攻撃爆撃隊、それらの編隊飛行が、“波”のように空を西の方角にへと、

 東…我が母なるセンタリアがある方角だ…の方向から、ズームしてきて、飛んでいく。

 いくつもの飛行部隊が、つばさを広げて、何遍と進んでいったことでもある。


 そして、それよりもさらにシルエットが大きく、その空の上の中を進んでいく、“空飛ぶ船たち”……

 銀色で、魚のような姿かたちを大まかにしているそれらは、“ブリキの魚”“ティンコッド”……とも形容がされる、

 センタリア軍の誇る・飛空艦艇隊。

 その飛空艦部隊の戦隊が、遠く動力音の響きを唸らせながら、いま空を進行していくのが、頭上の光景として、すべてのモノたちに見て取れたであろう光景だった……



 もう、第何波ともしれない、進出部隊のその栄光たる勇姿だ。



“西を目指せ!”というのが、スローガンに掲げられるそのとおりのことであった。



 ただ、同時に、陸を歩かされている、“一般の”陸軍兵士らは想った。


 あれら飛空艦の中に収容された戦闘艦隊せんとうかんたいつき・艦載陸戦隊の連中に比べれば、自分たちは脚をこうして歩かせて行かなければならない。

 それへの悲嘆と不平というのは、あるといえばある……


 ただ、自動貨車、というものだったり、はたまた鬼車、といったものもある。

 そうした装輪式なり装軌式なりの、各種の交通手段も、この世界の科学の産物として、無いわけでない。

 だが、それらは、科学による文明の開化と進歩を掲げた、嘗ての魔王大帝国の生み出した、忌むべきモノとして……

 タブーというのは往々にしてそうなるのであろうか。

 長らく解析研究にも人類たちは本腰を取り組められなかった、そうしたいわくつきのものだ。

 それ故、この世界の人類勢力の科学力では、まだまだ洗練と基礎的なポテンシャルが需要要求のクオリティーの水準に達しきれてない、というのもあった。

 ただ単純に、いたずらに高価であり、現段階時点での実用性と整備性は悪く、機械としての信頼性と安定性がない、ということではあろう。



 そうした様相であったのだ。ならば……

 陸を進むのに、もっとこう、具合の良いものはないものであろうか? 誰しも思うことであろう。



……地響きが聞こえてきたのはその時のことだ。

 次いで、独特な動力音。

 地の底の悪魔の、その唸りの呼び声かのように脈動するそれらによって、空気がビリビリと微振動する音。

 これは、陸を進む兵士たちには正体がわからないものではなく、またか、といったような、ある種うんざりとしたような表情であった……


“クジラどものお通りか。”


 すぐに、街道の道を、自分たちが邪魔だから避けろ! と高圧的に下令がなされたのも、その苛みに拍車をかけた。

 しかしそうしなければ、自分たちはたちまち轢き潰されて、それ見ろ、地面の砂と礫の、その仲間入りだ。

 陸上の兵士たちはそう嘆息した……「陸上艦の、お出ましだ」と。






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