イメージテキスト・いつか先の物語(1/4)
お久しぶりです。
久々になんとか書けました……今回はこの短編のみです。
この短編は四話組みですー!今日からあと3日、一日一話ずつ投稿いたします。
みなさまごゆるりと……
……さまざまなモノによる、風を切って擦過する音とともに、熾烈な銃撃の銃声が轟いている……
“バシ、バシバシ、!”……
──弾丸の散布!
その飛来と着弾によって、土ぼこりと土砂の飛沫が、まるで荒ぶる様に吹き上がった!
……そして土砂敷きが剥き出しであるその演習用地のグラウンドで、
弾着によるつむじ風が拭き上げた砂埃のスクリーンを貫き破って、その機体群のシルエットたちが、躍り出てくる……
数機の機械型機動兵器種……この世界の俗世間では、一概に、ランナバウト、と通称されるに至っている……が、
ドタバタとせわしなく、土煙を上げながら脚部歩行を駆動させて、互いに走行を繰り広げて…
…模擬戦とはいえ、激しい戦闘の乱舞を続けていたのが、今のこの瞬間である。
生体ではない、機械の怪物同士の蠢き合い。
それ同士の絡み合いが、せめぎ合ったりほぐれたりしながら、今日も、このエルトール軍・シミター搭乗員養成キャンプにて活発に行われていたのだ。
……状況は白熱していた。
だが、その戦況は、果たして奇妙なものであった。
五機のCVTが、戦いを挑んでいたのだ。
しかし、その相手は……同じく同型のCVT・シミター型ではあったが、しかし、それは…
…一機しか居ない。
多勢に無勢、という言葉があるだろう。
だが、その一機相手に……この五機は……言い様はあるとおもうが、しかし、コテンパンにやられていた。
──……ドドォゥム!!……──
「この、! こなくそ! ……え、あ……アギャ!」
「えぇい、何故思ったように動かん!……ぬ、ぬわぁぁっ」
……バガァアァンッ!……
「「うわぁあっ?!!」」
たった今、悪態を吐いたのは、五機のうちの二機のその搭乗員たちであった。
その訓練生たちは次の瞬間には悲鳴とともに沈んでいったわけだが、しかし、彼ら彼女らはズブの素人というわけではない。
初見では、新鮮で斬新ではあったが、後としてはとにかく退屈なことこの上なかった、俗称・鳩ポッポ……陸上固定式・訓練用リンクトレーナー型教習機材で、
かれこれ延べ時間で80時間以上、この一週間の間、寝る間も惜しんで訓練と習熟に勤しんできたのは確かであった。
それというのは、国の威信を掲げる正規の軍人として、この新型機械兵器を乗りこなさん、とする教育過程のさなかにある人物たちなのだ。
……今回の特別訓練にも、今日此の日の夕食のポトフスープのソーセージの増量をエサに釣られて参加した通り……
その訓練生である所の彼ら彼女らの情熱と熱意は、確かなものであった。
……しかし、今繰り広げられているこの“特訓”において、彼ら彼女らは、なかなか苦労している。
精彩を欠く、
初歩的で工夫がない、
そもそも機体の動作自体がおぼつかない、……
複座になっている教官機……“白線付き”……のその車長が冷酷に述べていく通り、ぎこちない動きしかできなかったのは確かである。
そのひとことひとことが放たれる度に、訓練生たちは非常に奮起するしかなかった。
まあ正直、あの畏ろしい、“灰色の告死天使”がなんと言おうと、ヤッコサンにつきましては、リアルでは唯のちんまい小童でしかないので……
“へたくそ、よわよわ! ざーこざーこ!”
……前言撤回・やはり腹が立つ。むかつく、苛立たしい。プライドが傷ついた! 等など……
そんなのでもあって、それもあるので余計に腹ただしいというのが今はあった。
注釈すると訓練生たち側の勝利条件とは、
互いに火器の使用は自由、訓練生側は“生き返り”自由、とした上で、
“白線付きの胴部コクピット装甲殻に、格闘戦の、ただ一発でもいいので、それを命中させること”
……ということであった。
実戦部隊ならば指揮官機であることを示す、表面に白線のストライプが引かれた、装甲殻のその部位……の、その機体。
その一発に、訓練生たちの今日今晩の夕食のおかずのその是非が掛かっていると来たもんだ。
なので、迫真のつもりで、訓練生たちは真剣に今日のこの戦いに挑んでいたのだ。
だが、それは永劫に叶わないものか、となりつつあった。
現に今この瞬間、そして次の刹那……その間際……
ただ一機の対抗教官機である“白線付き”からの、その搭載機関砲の弾丸……無論、訓練用の模擬弾ではある……の飛来によって、
唯でさえ動きの鈍い訓練生の機体は、回避するのだけで手一杯となった。
白線付きが発砲して飛来してくる弾丸を、訓練生たちはおっかなびっくりで避けていくのがたった今である。
避けていく? しかし、左右に避ければ、それは機関砲の左右操向の、そのタレット可動のドツボに落ちてしまう。
前へは進めない。ロータリーカノンとチェーンガン、その二種類一門づつで二門ある火器系統の、
その十字砲火の只中にへと飛び込んでいく、という意味だからだ。
ならば、後ろだ。
できれば、散開しながら、逃げていくのが良いだろう。
そうすれば、一機あたりへの照準というのは分散するだろうし、
教本でもあったように、十分に散開しきった後に浸透突入すれば、逆に相手を包囲撃破できる! なるほど、問題ない。
だが……そうしたらば、どうやってヤツを倒す?
今の訓練生たちは、まるで練って捏ねられる肉団子かのような有様であった。
動きを封じられた後、後ろに押し下げられるだけであって、反撃というのが碌にできていない。
しかも、相手たる教官は、ただ放っているわけではなかった。
これにもテクニカルが含まれていて、いちいちの狙いと撃つタイミングがとても嫌らしいものであったし、
それというのは単純な回避のみで終わるのが難しい、シミター型CVTの特徴たる、二種類の搭載機関砲の射界と特性をかけ合わせた、一種の十字砲火。
それを、たった一機から訓練生たちにへと見舞ってきていたのである。
弾丸火雨の交差する、その十字のクロスの内外を飛び込んでいけば!
と……訓練生は、さながら死中に活路を見出す心づもりにもなりかけていた。(無論訓練ではあるのだが)
だが、弾火の火線が交差したり、それが開いたり閉じたりする度に……
自分たちは、ただ最適な常則の判断に成り立った上で、その攻撃を回避し続けているのみだ。
そうすると、なぜか不思議なことに、最後には、その火線の外の埒外にへと、はじき出されて追い出されてしまうのである。
一体どういうトリックがあるのか?
これでは、いつまでたっても、懐には飛び込めない!
たった今は、一線が引かれたように伸びる火線によって、
訓練生たちはまるでスクレーパーに阻まれるか、あるいはこそぎ落とされたかであるように、
……或いは、ほうきに払われた塵であるかのように。ちりとりに収められるゴミかのように。
その火線の前で、足踏みをして、今は前へと進むことができなかった。
今も、弾火が訓練生たちの機体の目前を、擦過していく……のを、下がりながら避けていくしかなかった。
こうなると、まるで、砂浜に打ち寄せる白波の際をそのたびに退けてみるかのように……
決して! 子供の遊びというわけではない。ああそうだとも。訓練生たちは本気だったし、全力を尽くしていて、そして真剣であった。
少なくとも、訓練生の側はシリアスであったのは確かだ。
人三人集まれば……とはいうけども、
今回の場合に於いても、訓練生同士で、被弾したら何々をどう、と互いにポトフの具を賭けに使っていたのだ……このままでは全員が具なしポトフを食うハメにはなりかけていたが。
だがしかし、間近に迫った弾丸の火線を、愚直にも、そのまま後ろにへと機体を下がらせて、退けさせて退いていくしかなかったのだ。
……そして、そのまま……訓練生たちは、下がる一方となり、そこから前へと進めなくなっていた。