「5話」カレーの風味は恋のよう?(5/6)
「……んで?」「おう、」
その日の、吾がドウジバシハウス……
「……はぁー、あぁ、
マッタク、何かと思えば。
もうルーテフィアさまに嫌われ切ったわたしに、なんの用よ。」
俺ちゃんは、
アリエスタ、その人を、呼び出していた…、
ルーにばれないように。
「 なに? ルーさまに疎外されたわたしに色目を掛けて、
手籠めにでもする魂胆なの?
今だったら、傷心のわたしをゲッチューできそうだったから?
ばーか。
あんたなんかのねぇ、
そんなもくろみ、通るわけ、ないじゃない……っ、て──」
ふーむ、イマイチ俺へのなじりも、覇気が無い……
そんなやけっぱちのアリエスタに、“それ”を見せてみた。
「 ………………。、、。
なにこれ?
チョコレイト?
……!?」
ぐえっ! ごほ、ご、ほ、…………なんてもの喰わすのよ!
なによ、この油のかたまり!!!!
こんな、風味が変で、辛くてしょっぱすぎるものをー!
鴉はなぜ阿呆と鳴くのであろう……
まさか、カレールゥの粒を、それごと、手に取って食いに掛かる、とは、俺ちゃんは考えても思っても、いなかった……
「ちょこれいと、こないだの時のがおいしかったから!
アンタが、気を利かせて元気付けでくれたのかな?とか、って、思ったのに-!
せっかく、あんたのこと! 思い直してやろうと、思ったのにーー!! うぇぇ……!……──」
そしたら、よ。
……俺は、企みを、伝えた。
「 ! わ、わ、わたくし、は……
……メイドが手伝ってくれるなら、お菓子程度ならつくれますけども……」
そんだけやれんなら、上等だ。
一緒に、謝ろう……ルーのやつに、
先日の、狼藉の一件。
今回のこれは、失地挽回の、チャンスであろう、と。
「……あんた、良い奴ね。」
そう言ってくれるかい?
(む。……前言撤回……なんて言いたくなりますけれども……)
味見……
「 !……おいしい…… 」
できあがりはそのような具合で、
それを携えて、
小屋に向かった、俺ちゃん等。
小屋の扉を開けて、対面したその情景は……
果たして、メイドを傍らに、
卓に着いたルーのやつは、両手にスプーンとフォークをおこさま掴みしていて、
見るからに、お待ちかねの、るんるん気分という奴そうであった。
「 な、な、な、なんで…………
なんで、アリエスタさんがいるんですか!?」
そんなルーは、急転して、激高した。……アリエスタのやつを目撃して、
しかし、それを俺は、遮って押し切り……
「スマン、ルー。俺は誠意の示し方は、こうするしかないとおもった。
おれがやったのもそうだが、
このアリエッタ……「エッタ、って!」……、
……まあともかく、
これが、おれらの、誠心誠意の謝罪の気持ちを込めた、カレーだ…………
食べてみて欲しい。
……もしよければ、なのだが、」
「………………」
「…………、、。。。、。」
「……ま、まあ、よい、でしょう。………………」
漂うカレーの芳醇な香味に、ルーの奴はよだれを垂らしていた。
それで、ルーの反骨心は、
食欲に負けて、ノックアウトのようだった……
なんだったらいま、アリエスタのやつと、
それからアヴトリッヒとハーレンヴィルの両家のメイドどもも、よだれを垂らしていた…………
(ボクのユウタは、なんでこんなに、おばか、なのでしょうか……?)
最上級に怪訝となりつつも、
ルーは、そのおこさまづかみしたスプーンの方で、
カレーライスのひとすくいを、取り……
「 はぐっ、! 」
ひとくちめを食べた後、ルーは未知な程に驚いて、
「あぅ~~♡ おい、し! ……!? …………、、、。。……」
………………しかし、そこで、固まってしまった。
(…………アリエスタ、アリエスタの、その、やつがいるから、よろこぶによろこべない………………)
どうして食べてくれないんだい? ルー……
このカレーは、アリエスタのやつと一緒に作った、カレーなんやで……?
飲み込み掛けためしも飲み込めないほど、かちんこちんに固まったルーのやつに、俺ちゃんはそう声を掛ける……
(!? うぷっ…げほげほ、…そ、それなら、なおさら、! )
かちゃり、……と、白いカレー皿に、スプーンが置かれた…………
「……も、もう、結構、です…………
カレー。おなかいっぱいに、なっちゃいました……」
「……そうか……」「………………」
……アリエスタは顔の表情を沈ませていた……
(……でも、おいしいから、あとで、アリエスタさんが帰ったら、たべよう、っと……)
……なにか気配を発しているルーのやつ。
そんなルーは、なにを考えているのだろうか?
「………………そうしたら、な。」
「ふぇ?」
そんな俺は、最後の手札を、切った……
挽回策、という奴である。
デザートの、ラッシーを作る。その行動を開始した。
そうして、できあがり……
「…………なんで、アリエスタ……さん……も、作って、さしだしてきているんですか」
「え、ええっと、だ、だって、……ドウジバシが、やれ、って……いうから…………」
「…………。、。。……」
こ、こ、、こんなもの、ごときで……
………………
おいしい…………
はたして、この時の選択も、はたしてそうであった。
ルーの奴は、俺が作ったラッシーのみを、ぐびぐびと何度も、俺におかわりも求めた……
「~~~♡、~~~♪ ~~/////////」
ルーのやつは、
無事に、すっかりご機嫌になったようである。
「どうだ? アリエッタ。 味見してみるか?」
「え、えぇ……ルーさま、とってもな、喜びよう……」
くぴり、っと。
「! おいしい……
やっぱり、乳の品質と風味が、アンタのゲンダイチキュー、のものは、とても、良いわね……」
なら、よかった……
(………………、、、。。、、)
(……こんなに優しいやつなら、とうぜん、か、…)
(………………、
ルーさまは、こんな、わたくしなんかよりも、、ドウジバシのことが……)
………………
…………
* * * * *