「第百十一話」錬金チャンバーの完成!(5/5)
……さて、およそ三十分後。
錬金装置。
それなるモノは、この異世界に於いても、なかなか、ただ事ではない事象であるらしかった。
なぜならば、手順を正しく踏んで、調合素材のグレードとクオリティーをレシピ通りにカンペキにそろえて、
それの上で、術者の体力と気力と精神力とスタミナを、ガンガンにぶん回して、ようやく一品か二品が。、仕上がって出来るから…………であるらしかったからだ。
確かに限りはあるが、
その上、そうした準備と手筈を万端にしてこなせば、
理論上は、あらゆる物質が、なんでも作れてしまう。…………という、とんでもチートこの上ない、この異世界流・魔導錬金術の、その、すさまじさ。
果たして、そんなすごい技術である。
いわんもなく、その管理は国や超国家的ギルド類の厳重な管理下にあり、
素材材料や、それに用いる錬金釜や、バッテリーやメモリ端末の代わりの各種エナジー・オーブといった便利品類は、
漏れなくそれら組織の管理下に、流通の全てはあるのであった。
しかし、それを個人の持ち物にするなら?
大きな決め手になった物品がある……──
近所のリサイクルショップで買ってきた、中古の炊飯器だ。
(けっして、釜という言葉から類似性を見いだして、という事では……まあその通りであるのだが)
これの中の内蓋天面に、その運用環境上の為、錬金強化を施した、ディスク端末を、仕込んでやる…………
炊飯器本体も、
まずルーの異能により解析した後、
コンセント口からの経路で、電位差データ入力の手段によりダイレクトに内部データの書き換えを、行った。
密閉が可能である、
というのが炊飯器型の最大の利点であろう。
低熱保温した状態で、
液の流動性を安定して確保した状態で、
その状態で、錬金術を、かけてやれば…………
そのうえ、何処までもかは判らないが、
蓋のおかげで、防爆の性能も、もしやするとあるかも知れない。
「 錬金釜、ボクだけの……♪」
はたして、ルーのお部屋。
発電用の魔導シーケンサ複数と接続された
電源コンセントが完備された結果、
その環境は電子機器類の運用に、まったく問題の無いモノが用意できるに至った。
そうして、アラームが鳴った……
……炊飯器、いや、今となっては、
急造の、魔力魔導錬金機力釜…
…それの試作機の現物の、炊盒の完了した、という呼び出しの電子音である。
俺とルーは、はたしてドギマギしながら、その一連をみようとした…………
ごくり、と息を呑む。
炊飯器の蓋に、手を掛ける。
すると、かぱぁ…………っと、ゆっくりと蓋が開いた…………
「「おぉぉ…………?!」」
果たして、その中には…………
フルカラー彩色! しかも、印刷しただけの状態なのに、関節も、動く!
その上、各部の関節の渋みは完璧だし、
透明箇所はクリアーが再現されてる!
すげえ……!!!
そんなロボメカおもちゃ!
……の一般の市場商売品と、タメを張れる位には品質が高く感じられるように見える、
そんな、ラピッド・プロトタイピングで得られるとしたらば、常識以上の極上に相当する……
……そんなうっとりとできる、品が、鎮座していた。
「わ、わ、わぁ……♡」
ルーは、両目をときめかせている。
それから……涙を両目から散らしながら、
感極まったように、ずずっ、と鼻水をすすった後、
「
す、ごいで、す、すごいですっっ、ユウタっっ♡
ボクが、錬金術も魔法もぜんぶだめで、へっぽこだったボクがっ、
すごい錬金術、さいごまでできてっっ
しかもっ、こんなすごいモノができちゃって/////
やったやったよーっっ!!!!!」
そうか、ルー。
お前にとっても、偉大なマイルストーンが、いま、刻まれたしゅんかんだったんやな………………
「あれ、ユウタ、?」
俺ちゃんは、って?
「………………、、、。。。。」
「わぁっ!? ユ、ユウタ、なんで泣いてらっしゃるのですか?!!」
泣きもするさ…………
このマギウッド何たらがどれだけのモノかは判らないが、
およそ、光造型式の3Dプリンターに比べて、
圧倒的に、できあがりが、素晴らしい……
というのと、
圧倒的に、手間も掛からない……
というのと、
圧倒的に、時間が掛からない……
という、この三つの理由があったからだ。
なんせ、釜を起動させてから、まだ十分も経っていない。
「ルー、二台目作れるかしら? 俺ちゃんも、個人用で、ほすぅい…………。。。。。」
「! わかったよ、ユウタっ///////////
いまから一緒に、もっかいりさいくるしょっぷに、いこういこうっ♡♡////////////////」
今日から、俺ちゃんがせどりで稼ぐ理由が、一つ増えた……
「これは俺たちにとって、最高のアガリじゃあねえのか…?」
そんなどこぞのオルガ団長ではないが……
少なくとも、久しぶりに、素晴らしい気分で模型に取り組めそうであるのは確かだ。
「………………、、、。。。。 # 」
屋敷の錬金釜はそのまま放置してしまっていたので、
後でメイドのタチアナさんに、こっぴどく、おこられてしまった…………
メンゴ!!