「第百九話」錬金釜ちゃれんじ!(3/5)
ルーがみせてくれる、というので、
一緒に、ルーのおうちまで、見に行った。
「なんじゃこりゃ、……釜?」
「そうなのです! わがアヴトリッヒ家の持っている、大切な、錬金釜♪
これは、いちばんちっちゃな、雑作業用の、ですけどね♪」
ふんふん、
はたして、
俺ちゃんの目の前にあるのは、果たして……タヌキが中に入っているんじゃなかろうか?と思わんばかりの、
見事な造型の……何の変哲も無い、釜であった。
「これにね♪」
装着!
ばばーん! と出来上がったのは……
「ほぉ、なかなか怪しげなオブジェだ……」
「どうかな~、? ボクの魔導を見せてあげよう!」
ルーの手により、
釜の側面に、ガムテープで魔導シーケンサが張り付けられたのである……
笑顔のルーである。
そんなルーは、
怪しげな、薬液? ……の瓶詰めを、戸棚から取り出して、
「錬金用液体木質液だよん♪
外観の試作や大まかな形状確認に、うってつけ♡」
そんで、その大きいボトルに入ったそれを、
よぃっ……しょっ……と、ルーはえっちらおっちら、と所定の操作をし、
どぽどぱと釜にそそいで満たしながら、
そこに……ペッパー・ミルの様な容器に入った、
錬金触媒、……なるモノを、何振りか、ふりふり。
釜の底に、魔導の灯火が点った。……加熱用らしい。
ふむ?
「これから、錬金中は、傍目がみれないくらい、集中する必要があるの…………まっててね…………」
ぼぉ…………と、ルーの気配が光り耀き、
錬金術の魔方陣が、耀きを帯びて、その目前の虚空に、現れた…………
神々しい気配と、神秘的な現象のそのさなかで、
ルーのその顔は、すっかり凜々しいモノとなっていた。
いっぱしの、魔導使いの、その面持ち。
ルーのやつ……俺の為に……すげぇ……ありがとう…………
それから、ルーの奴は、
全集中して、微動だにもせずに、術の詠唱とその行使を開始した…………
──しかし、術を始めて、十五分くらい経った頃だと思う。
…………──…………
部屋の中は、樹液をローストしたかのような、
そんな良い香りに包まれている…………
「…………、へ、え、えくちゅっ!!!!」
しかし、その芳香は、ルーのやつのくしゃみを誘発させてしまったらしい。
「「……あっ、!?」」
──ぼん!
「うぉっ?!!
どうした?! なんなんの、このプチ爆発?!」
「けほけほ…………れ、錬金術が、失敗しちゃったよぅ?!」
なに!
というのも、
錬金釜の中で小規模の爆発が置き…釜が割れるとかそういうのはなかったが…それから…………
木の焦げるかのような、壮絶なそのくさい匂いが、
この部屋一杯に広がって、俺とルーの鼻を満たしたのであったからだ。
「え、えぇっと、、ぇえっと…………」
涙目になったルーの奴が、杓子……おたまで、錬金釜の中底を、掬って、漁る…………
すると出てきたのは、
「あ…………」「……うーん、」
砕けてしまった…………
「 人工木質液の、硬化中の、
温度の維持供給を失敗しちゃったんだ!?
ど、どうしよう………… 」
「これは、なかなかに、扱いの難しい機材なんやなー……」
「そ、そうなのですよぅ…………で、、でも、今のは、ボクがへたっぴで、迂闊だったから…………」
杓子の上の、その取り出された造形物を、俺とルーはみていた。
「本当だったら、もっと綺麗に、せいみつに、せいかくに、作れるんですようっ。
だけど、ボクはまだまだで、
叔母さまなら、もしかしたら、だけども…………」
木質液は安全だ、とルーに確認を取ったので、
手に、砕けたその断片を、取ってみる。
でろでろに溶けかかった様なディテールの、
……うーむ……
「…………、、………、、、………。。。。」
ほろり、と涙を流した、ルー。
いやあな、そういうつもりじゃなかったん…………
……いや、待てよ。そうしたら…………
「? どうしたのですか? ユウタ……?」
ちょっと、お買い物。
さあさ、おまえさんも、ついてきてくれ?
「 だ、だけれど…………」
躊躇うルーに、俺が、その脳裏の閃きの内容を、
伝えてみてみる…………
「……!
な、なるほど、たしかに!
これは、でじたる、から、あなろぐ、への、そのデータ転送の差し込みのさわりが弱かった、というのも要因としてあるかもですね……
それなら、ということなら、ぜ、ぜんぶデジタル化しちゃえばいいんだ!
そういうことなのですね?!」
そーいうこと♡
入力機と受信出力器の相互で、
より詳細かつ正確な、
デジタル処理がされていれば…………
「でも、そ、そんな機材を、いったいどうやって作れるのですか? ユ、ユウタ……!」
ふっふっふ…………D.I.Y。すればよいのよ、
「ふぇ?」
なんだっても、おれには、ルー、おまえっつー、
さいきょーの発明家が、ついてくれてるんだからな!
「ぇぅ?!////////////」
思い当たりが、一つあった。
釜、ということならば…………
ほえ、? と涙目のルーを、俺は手招きして誘った。