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「第百七話」ディスク端末、さらに強化中…(1/5)




 妹が自室に帰って行ったのを見計らって…………





 かんかん照りの屋外の気配は窓の向こうの風景にとどめられている、冷房がよく効いた部屋の中。




 夏のその日……




「むー……」



 ルーは唸りながら、目の前の机に置かれた、銀色の輪っか…DVD円盤と、

 手軽な大きさのその家電製品にと向かい合っていた。



 ルー作成のディスク端末。それを、現代日本製の、インクジェットプリンターと無線で接続してみたのだ。

 どうやって?

 ディスク端末の内部に、

極小で無線LANチップを再現したそのエミュレーション回路と、

 魔導式静止型・電力発電回路サーキットの生成が、ルーの錬金加工時にすでにされており、

 只今絶賛演算稼働中のディスク端末の中で、

 前述のそれに後述のそれによる給電が、なされているのである……

 



 プリンターについては……

 試しに廉価型の機種なので、

 一個、家電量販店で五千円。

 俺の小遣いと異世界せどりの収益からしてみれば、おもちゃを買うくらいの感覚での購入だった。



 ここしばらくのルーの成果は絶好調である。


 ルーテフィア自身の作成したディスク端末に

 試作研究として機能を増やしていくことで、

 ルーは自分の力を柔軟にアウトプットするすべを作りつつあった。



 ルーのうなりごえはそのまま、

 ディスクの銀円が、光らせた輝きを、数巡、回るように巡らせながらである。



「むー……えいっ!」



 ピカァ! とディスクが光った。

 そこから巨大ロボットの機体が具現化する……という訳ではないのだが、

 しかしそうして、ディスクそのものの空中投影ビジョンとは別に、

 それと無線で繋いである、小型タブレット端末…対応アプリをルーは組んだのだ…の画面上には、

 これから印刷がされるそれのプレビュー画像が表示されて、




「むっふっふ~ん…♪」




 得意げなルーはがりがりと印刷されたそれを、出力がし終えた次の瞬間にはひったくって目で見た。



      * * * * *



“………”


 ルーの顔は、会心の自作を得られた表情で、

 暫し真剣な顔で紙と見合わせた後、こらえきれない、というように破顔させて、にっこにこになった。



      * * * * *



 それからその絵の描かれた紙を、

 傍らで寝そべって様子を眺める俺の顔に、示すように向けた。



「アルビオン隊!」


「おー……?!!」



 紙には、とあるSFアニメに出てくる、一隻の宇宙揚陸艦と六機の機動兵器が描かれたイラストがプリントされていた……これは、バニングさんがまだ戦死する前の部隊機体編成だな。

 勇壮なテーマが流れて聞こえそうな、迫力のある構図の絵だ。


 さて、この絵はなんなのか?

 才能と絵心があるルーなのではあるが、ここまでの絵は生の腕を使っては、今はまだ、まあ描けるかどうか、だ。




 果たして、ディスク端末はさらに強化改造が施されていた。

 結果、自動筆記装置と魔導ブローチの原理技術の組み込みまで行ったことにより、今ではスタンドアロンの運用能力を獲得、

 さらに運用性が高まった……




 ルーの奴は、この端末類を駆使することで、

 まず、“念写”のスキルを具現化して獲得していた。



 念写というのも大ざっぱなので、どういうことかといえば、


 つまりこのパースとデッサンがびしばしキマった、

 ガンドゥアームなイラストは、ルーのイマジネーションで練ったものを、端末の機能で修正補正しながら、紙に出力した物であった。




……ルーのちからは、触れたモノの仕様や構造、機能、能力、作用と動作の原理を含めた理論類、素材原料段階からの、の製造過程までも……と、作られるまでの由来のなにもかもから、設計や製造にいたるすべてのバックグラウンドを、一瞬のうちに、知識として、カンペキに得れてしまう、……というものだ。



 それらの中には、厳密立った寸法類などというのも、含まれている…………



 そのことにより、

 ようするに、ガンプラを触るだけで、3Dの詳細な寸法が、全て獲得できてしまえるのである。

 それに基づいて、元のキットの形状に忠実とするだけならば、ここまでとするのも、まずできるようになっていた……




 しかし、この絵に描かれている機動兵器たちは、

 プラモの模写で、という様には描かれていない、そんな具合に見て取れる。


 それにも理屈があった……






 つまり……前述のその上で、

 ココ近日のルーの快進撃は、

 現代的な情報資産、知的財産…………要するに、

 コンピュータ・プログラムや、インターネット、

 それとつながったなにもかも……


 各種ITソリューション、といったそれらと、

 特にルーの異能の食い合わせ、噛み合い…が、特別良かったから、というのが基幹前提としてあった。





 先日、ルーがネットにつながったパソコンを、直に触れた、その瞬間が、全ての発起点となったらしい。




 この世の電子機器類とプログラムの全てと、

 その秘伝のソースコードと設計図、そしてそれらの論理的構築ノウハウ、というのを、


 ルーのやつは、一瞬のうちに、

 何もかも、手に入れてしまった、その状態なのである。。。。



 しかも、それらはこの世の表層に現れて我々市民が使っているモノの類に止まらず、


 例えば、実験室レベルのものであったり、

 研究中のモノ、

 或いは社外秘として厳重に封印隔離が為されていたり…………



 そうしたモノの片っ端からというのを、

 ハッキングやクラッキングという手段ではなく、

 現代世界地球のこの世のものではない、

 異世界の魔導ののろいの原理によって、

 外部と閉鎖された社内ネット内の情報だろうが、

 現在線でつながっていない、隔離されたハードウェア上のモノや、書類検討されたのみなどの、

 何もかもを、一方的に! 収穫できてしまっていたのだ。



 そうして、今の現在があった。

 能力で得た膨大な情報を元のベースとして練り上げたプログラムと、

 同じ段階を踏みつつ、



 さらに従来にはあり得なかった、異世界の魔導魔法と錬金の原理を組み込んだハードウェア……


 その珠玉の結晶……というには元手があんまり掛かっていない、

 そんなディスク端末に落とし込んだ自動念写入力機の機能能力で、



 それと接続されたパソコンやスマート端末類の、各種電子機器に、


 デジタルデータ化された呪文や錬金術、それから思念類を、送れるようになったからこそ、ということであった。

 




 現に、ルーは今日までの過程の中でアビリティとして得て、

……結果として、自分の手で、手打ちで打ってもできるといえば出来るが、それでは時間が掛かりすぎる為……

 念写入力の機能のちからによって、

 頭の中にある閃きを、そのままビルドしてコンピュータ・プログラム化できてしまえる、そんな現段階の環境にある。


 もっといえば、その数ステップの踏まえ方で、もはやなんでも出来るようになってしまっていた。



 対応する高度なプログラムさえ、三分クッキングの放映時間よりも短い内に、コード入力とビルド工程の全てを、こなせてしまえるのだ。




 あの日、

 ルーの異能が、インターネットとそれにつながったパーソナルコンピュータに触れてしまった途端に、

 すべての技術とノウハウは、

 一瞬で、得れてしまっていた…………



 大本の公開か非公開かに問わず、

 ルーは、

 この世の知的財産とプログラム資産のおおよそを手にしてしまった、ということらしい。

 そしてそのことは、

 

 雛形になった、魔導ブローチと自動筆記装置などの、

 魔導魔法と錬金術の技術との組み合わさりによって、 この目の前の小さな円盤……ディスク端末、

 というのを、果てしなく強化して、

 そのまま何か、さらに、はてしないシロモノにへと、いくらでも展開と進化をさせていける…


…という、

 そんなどこまでも果てしない可能性の展望を手に入れてしまった、その段階に、今はもう来ていた。




 さて、その一連のもたらした、

 現時点での最新の成果というのが、いまこうして目の前にある。



 ルーが、設定画と、劇中の動画を少し見て、

 頭の中で多少イメージを練るだけで、


 なかなか素晴らしい完成度の、それのテイストを取り入れた状態の…………


 各種の二次元絵画像、というのを作ることが、出来るようになっていた。





 素人離れしたレベルでよく描けているこの絵はいったいどうしたのかというと、そういうことであった。



 これで、とりあえずはルーの持っている自動筆記装置と同じことが、

 こちら日本側でも出来るようになった。


 もともとの異世界では、紙が高価で不足であったから草々使う訳には行かなかったそうだが、ここは現代日本だ。コピー用紙という物がある。

 データ類についても、

 各種記録機器に、いくらでもおさめられることができるのだから、もはや、何の縛りも枷も、ない。



「フフーンっ……そしたらですねぇ、」



 自慢する猫のような仕草で鼻息を高めた後、ルーの奴はふたたび念写の操作を行い、

 がりがり、、と、プリンターで印刷されるのを待つ、ルーと俺。



 待っている内に、二枚の絵が仕上がった。




「グレイファントムとスカーレット隊!」




 一枚目は、優雅で洗練されたスタイルの宇宙揚陸艦と、六機の機動兵器。

 先ほどのとはデザインが違い、それは俺の知る通りのものである。




「サラブレッド隊!」




 二枚目は、今度はまたデザインの違う宇宙揚陸艦が、二隻の宇宙巡洋艦と艦隊を組んで宇宙を航行する場面の物であった。

 一体ずつでコンビになっている、四号機と五号機が、艦隊の先頭にいることがイラストの中に見える。





「すっげー……」




……ところで、見ていて気付いたことがあった。





(つづく)


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