5(5/6)-遊星歯車の悲劇-
卓台の上に、ワインのボトルをごん、と置いて、エリルリアは隅々まで、椅子に縛り付けられたユウタを睥睨し………
「………あーはっはっはっはぁっ!!!」
観察したあと、途端に大爆笑したのは、このエリルリアの心からの嘲笑であったらしい。
そうして、しばらく笑い転げる……とまでは行かないが、腹を擦りながら、こらえきれずの笑いを続け、
「 あーっはっはっは! あの愚姪、ついにここまでやるようになったか!
まったく、犯罪よ!! あっはは!!!
さいっこう! あんたら、コメディアンの夫婦にでもなりなさいよ!!
ひーひひ、ギャグとして最高!
あんた、こんなにあの愚姪からされて、してくるんだから、あんたって、ほんと、あははぁ……
犯罪! どっちも犯罪! ひひひ、いっひひ、イーヒヒヒヒヒ!!!!! きゃははははは!」
なんだ、この酔っぱらい……
そうと内心で毒づく俺のことを流して、
エリルリアのオバハンは、卓上のその残骸物に気がついて、
「お?やるわね愚姪。
もうアンプル使ったのね…
そのわりには、ドウジバシがけものになりきれてないようだけど?
おっかしーわねー…ま、いいか。
さーて、あたしもこの、我がエリルリアの発明品…
…(仮称):元気イッパツヤルキデルミン…の試作品、これの試飲も兼ねて、このあとからきばっていくかぁ。
あ、んぐ、ごく、………」
え、もしや、それは………
「 あら、こんな味付けにしたかしら、まあ、まあ、いい、……って……」
とろぉん、と、途端に、エリルリアの気配と相好が、崩れて乱れ、胡乱げなものになった。
まるで、一瞬で酔っ払ってしまった、かのように……
「 あらぁん? あんた……」
………
……ど、どうされたんですか、
…………
「 ふ、へへ、……
あたしだって、好きで蜘蛛の巣はりそうまでカマトトぶってんじゃないのよ…
この年になっても、どーせ、どーせ!
夢見てるみたい、って、そうでしたわあよ!
そういわれたわよ。そういわれてきたわよ。そうでしたわよ、どうせ、どーせ、………
そんだったら、そんだったら…そうね……あんたくらいで、女の捨場には……へ、へ、ふへ、……
なによ……あんた、けっこー、よくみたら……」
はたして、その胡乱げな目に写る俺ちゃんの顔は、どうであったであろう。
真面目になりきれない俺ちゃんの怪訝とした表情…
…まるで、コビトカバのぷりてぃー・ふぇいす(うるへぇ、俺ちゃんは俺ちゃんの顔面偏差値なんてとうに知り尽くしとるわい)も同然…を見て、
エリルリアは……、、
「 ぷっ、」
「 あはは、動物園! あはは、あっははは!!!あっは……」
“ ゴン! ”
「 あっひゃぁ!? あ、あは、あ、………」
鈍い打撲音。
それが聞こえたきり……
ばたり、…とエリルリアは、床につっぷした……後頭部にたんこぶをこさえて、
唐突なことに、俺は戦慄を見た。
その背後だった場所には…
ワインの瓶を振り下ろした、ルーの姿が、そこにいた。
「 この腐れ年増は、この際捨て置いておきましょう」
は、は、はぁ……