3(3/6)-ルーのお礼?-
翌日には、準備のあらかたは済んでいた。
砂糖に、卵に、小麦粉に、塩、牛乳、バター、
材料はこっち(現代日本)であらかた買い揃えてきた。
とりあえず、基本的なバームクーヘンが作れる材料は、これで揃ったはずだ…
バレないように屋敷に運び込むのに、けっこう体力を消耗した……はぁ、
運んできた台車をここまで押した力の結果、俺の腰はもうへとへとだ。
そう思いながら、ルーと非番のメイドたちと共に昼飯を食べていた頃、
「どーん、と構えてください♪」
ルーの奴が、そんな感じで口火を切ってきた。
「ボクのお礼、なんですから!」
どうも丸太のけーき、ことバームクーヘンのことを言っているらしい。。
「ボクにできる、心ながらのおれいなんです! ぜったい、絶対受け取ってくださいね?」
「え?ああ、そうだな…」
「とっても昔から、変わることのないレシピで作られ続けているケーキなんですよぅ♪
ボクのお家だと、おじいさまのそのひいおじいさまの頃から、このアヴトリッヒ家に伝わる秘伝のレシピがあるんです!
この世界で作られる最高級の素材を使って、ゆっくりと時間と手間暇をかけてつくられるのです。
だから、ボクとゆうたのこれからのすえながい関係のお祝いに……
ボクからのお礼にふさわしい、と思って!
はじめて食べた記憶があるのは三歳のころだったな……
雪のしんしんと降る、寒い晩のことでした。
その時たべた“丸太のけぇき”の味が、いつまでも忘れられなくて!
ゆうたに、ボクの思いでの、その歴史と由緒のある味をたべさせてあげます♪」
「あ、あぁ……、そ、そうだな……」
この異世界の品質がワンランク以上落ちる食材たちのことを思い出した。
つまりおれの用意した材料だと、おもいでのケーキじゃなくなる、ってことじゃん!?
ま、まぁ、俺としても、ケーキにルーがありつけることを願っている…首尾良く順調に運んでいる現在を喜ばしく思っていた。
そんな所で、ルーはだめおしとばかりにいってくるもんだから、
「こうなりゃ、完全なサプライズでいくぞ……」「わかりましたよ、ゆうた様」
タチアナを相手にこそこそトークをする俺である。
「由来がおおむかしからある、まるたのけぇきなんですから! はやくはやく誕生日にならないかなっ!」
ルーのやつは喜色満面。
そういう感じで、その日を迎えることになった……
* * * * *