5(5/5)-末妹の病室-
ルーは、じぶんのぶんのクレネンクを、身を挺して供したつもりだった…大好きで、大切な、ゆうたのためならば、と。
しかし?
なんと、ガーンズヴァルは、自分の分を、つかったのである。
「お、おじいさま……」
一転して動揺しているルーを見据えて、
ガーンズヴァルは……達成した喜びのある面持ちで、
「どうせ、荒事があらば、その折に国と軍から出るだろうよ。それより、みいとやら、無事になったかのう?」
「おじえたん!」
ばっちり、! ……のガッツポーズを、未依はしてみせた。
医者や看護師が集る中、それの姿が、人影の狭間から、見えたのだ。
「何を、気にするか……孫のいたわしい小さな友人を、助けるのならば、なら、その祖父の我のを使うのが、当然だろう……」
「で、でも!」
「それに………」
視線を、ルーからゆうたにへと合わせた、ガーンズヴァルである…
…ゆうたは、目の前の“偉大な人間”が自分を向いたことに、たじろぐしかない。
「ドウジバシ、ルーは、お前を好いている。これは確かなことだ。だから、分かれよ…
我にはこうしてでしか、お主の歓心を買うことができんからな……」
「は、はぁ………?」
「は……? ……あんた、お父さん、まさか!!!」
状況の認識が、たったいま出来たモノもいた。
……エリルリアだ。
「……おとうさん、正気だったの?!」「フム……そうともだ。」
「お父さん!!」
エリルリアは…………怒り切るにも怒れない、というような様子で、
「ちょっと、アンタ。」
ゆうたの方へ、坐った目を向けて、
「……あんた、お父さんの分の、大切なクレネンクを……いや、いいわ。あんたもあんたで、自分の大切な妹を助けたかったのは、まあ分かるわ……
あたしらもあんたに借りと恩があって、そうしてお父さん…ガーンズヴァルが、あんたとあんたのいもうとのために、自分の分をそうつかう、って決めて、決断したんだから、それはそれとして、まあわかってやるわ。
でも、あたしたちアリスティリーヴの人類種の人間が、クレネンクをつかうということ。それも、身内以外の、他人へ……
あんたにとって、このことは、相応に重く受け止めて考えてほしいところだわ」
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「…ってことがあったんだが、どういうことなんだ…?」
「………あんたね……」
日は開けて、翌日。
「あんたに、わかりやすく言ってやるとね…」
金粒貨、650粒ぶん……?
即座に手元のスマホで電卓アプリを起動する。
たしか、こないだのテュポンさんの金粒貨というのは、たしか一粒が七千円で売れたから……
…………
!?
きゅ、910万円………
ルー……
「どうしたのです?」
……いや、なんでもない………
きのうまで、なんなら少し鬱陶しい、とまで感じるようになっていたルーのことに、
俺は、俺自身が情けなく感じるのと、一転した己がこう感じるということの現金さへの、それをどこまでもとてつもなく恥ずかしく感じる…というのので、
プロボクサーのパンチで完膚無きにノックアウトされたような気分だった。
(ガーンズヴァルは何度も実際にクレネンクで復活蘇生した経験がある、魔王退治の英雄である元・勇者で、
ルーテフィアは、その祖父に憧れていて高潔な騎士を目指しているため、
ふたりとも、人助けのためにクレネンクを使うことには、何のためらいもなく、むとんちゃくであった。
ましてや、弱りきった童女のために、ならば! という粋ですらあった。
しかし、それ故に示された善意・百%の挺身的なご厚意(好意)に、
日本の一般的な、その上、人間不信気味でひねくれていて覚悟も根性もないパンピーの小市民の平凡なニート青年である、
そのゆうたには、とても衝撃的だったのだ……金銭価値的な金額のこともあるし、それ以上にも…)
………………
…………
……。。。。。、、、。。。
…あーーーー…………
「…………る、ルー、なんか、……好きなもんでも食おうか?」
「えっ?」
「おまえの好きなもんだったら、なんでも、そうだな、なんでも…いいぞ!! なんならぴざーらのピザのLサイズを6枚たのんでもいいくらいだ!!
そんくらいなら金、だせるから、なんでも、なんでもたべてくれ! おごりだ!」
「ほえっ? …………、、、。。……、、」
ぴと、っと、ルーは、……ユウタのとなりに、
自分の身体を、寄り添わせた。
「そうしたら、ここを、特等席にさせてくださいっ!」
は、?
「ユウタのとなりだったら、ボクは、なんでも良いですよ♪」
「は、は、………」
………
…どうしたらいいんだろう…
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「学会で発表をさせてほしい?」
「ファクターがわからないんだよ、
わたしたちの医療は最高レベルのものだったが、しかし、それを尽くしても、キミの妹さんは、一向に快方しなかったのだから……
できることをすべて尽くしたのに、そうだったんだ。だから、なにか……他の要因が、あるのではないか?とね、」
「エロいフィギュアやかっこいいプラモやすばらしい模型を、
見て、作って、満たされて、たのしめば、どんな病気も治りますと思う。」
「キミの持論だよね! あっはは! 久しぶりに聞いた!!」
「…冗談ではなく、そうなのかもしれない…」
「……」
「俺たちと貴方には、信頼関係はあるとおもっていたんですけどね……!」
「そういえば、こないだは、なにか、変わった人たちを連れてきてたよね?」
「まさか、本物の魔法使いとか?」
ゆうたは無言になるしかなかった。
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決めた。
ガーンズヴァルさんの、借金を返せる、そのお手伝いをしよう……
んで、ルーのやつを、不自由させない!
そういうわけで、
シャッキンの額を、ルーから聞いた。
……
………、、、、。。。。。
も、目標、下方修正しようかしら……
そんな最中に、
ルーの奴は、とても楽しそうに、模型誌などを読んでいる。
未依のところから持って帰ってきた、模型誌である。
模型、プラモデル、ふぃぎゅあ…………
うっとり……とルーの表情はなっていた。
…………!!!!
そうだ、“あそこ”に、行こう!!!
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