2(2/5)-末妹の病室-
「おぬいちゃん!」
よー、未依。げんきしてたか!?
ここしばらくのあいだ、来れなくて、ごめんな…………
「だいじょうぶだよっ! おぬいちゃんも、なにより!!」
あっはっは、さて……
病室の片隅に、大量の本がダンボールに入れられて、積まれている。
その隣には、大量のおもちゃや模型が、複数のダンボールに入って納められている。
「さて、今月の、だっ」「わぁぁ……!!」
ホビジャパと、モデグラ、
模型誌を、絵本代わりに、買い与えている。
「持って帰る本は、ここに積んであるやつでいいか?」
「! おぬいちゃん、そこのそれはまだもってかえっちゃだめ! それから、それから……」
「はいはい、わかったぜ」
「ニホンの、ビョウイン…………」
ルーは、
室内を、見渡して…………
「すごいっ、ですねっ!」
はしゃぐもんではないだろーが。
と、ユウタ。
「あと。ほら、ドライパンサーとキルサイズだ。ほしかっただろ?」
「!!わぁ……!! おぬいたん、ありがとう!!」
天使のような笑顔で、未依は兄たちを出迎えた……
++++
「かわいい……。。。。。。」
一方、ルーはというと、そんな第一印象から観察は始まった。
(ボクと、ユウタのあいだに、子供ができたら……、、、、こんなかんじに……?)
そんなよこしまな想像? 妄想?をしたりなんかしちゃったりして、
(ほぁぁぁぁ…………/////////////)
ぱぁぁ……ぺか~っと、なにやらトリップしはじめたルーであった。……が、このいきものの邪推の回りと、虚構の幸福は長続きしないもので、
(?! ひょ、ひょっとして?! も、もしかしたら、この方は、もう、ユウタとほかのだれかステキな方との間の、娘さん……であったりとか?!!?)
ぽが~~~! と炸裂したぽんこつルーであった……はさておき、
+++++
「ユウタの……いもうとさん?」
「そうだぞ。俺ににてないだろ?」
「うぅーん?」
ルーは両腕を上へと掲げて、顔の表情と共にその手の先をじたばたさせながら、
「 ユウタは自己評価が低すぎですよぅ! それはそれとして、素敵なかわいらしさだとおもいます!」
「ありがとうよ? ま、ほら! 未依も、ありがとー、って、!」
促したおれちゃんと、そんなルーに、
「ありがとー、!」と返事で返してくれた、未依。
あぁ、もう。。。。。
俺にとって、かけがえのない、末の妹だ。
+++
「♡ ♡ ♪」
ニッパーいらずなのが、いいよな~
三期ゾイドのキットは、切り離し済みの部品を、袋から取り出すだけで、組み立てられる……
みいは夢中で組んでいて、、
ゆうたと、ルーは、そのお手伝いをしている。
(いつまでも、この時間が、続けば、いいなぁ…………/////)
ルーは、そう柔らかな心に、あたたかい血流の脈動が穏やかに通って流れるような、そんな感情が満ちていた……
コン、コン、
「ん?」
がらり、と、病室のドアが開き……
「ちょっと、祐太君、こっちに……」
「? ああ。先生! いつも妹が世話になってます!」
「ほえ? せんせぇ?」
「ルー、お前はここにいてくれ、……あっ、お待たせしました、そしたら……」
「あ…………」
……扉は閉じられた。
…………、、、、、。。。。
「むー、つまんないです。」
「ねーねー、そうしたら、こっそり聞いてみる?」
「!? 名案ですね♪ さすがは、ユウタのいもうとさん♡」
「えへへー」
廊下へと出た、ユウタと医者のふたり。
そのふたりの会話を、盗み聞きしてしまおう、というアイデアだ。
未依はそう提案し、
ルーは、それに乗っかった。
“手術までは、まだ半年以上、時間があったはずじゃ、”
“いやあ、それがね、……”
“……病状の悪化が、予想よりも早くなってる?”
「ど、どういうことなのですか? そんな、まさか、?」
たのしい話と思い込んでいた……
そんなルーは、どんな表情になったらいいかわからない。
「や、やだなぁ、そんなことって、ないですよね? ミイちゃ……」
ルーが未依に、顔を向けかけた……その時、
いつの間にかベッドの上から降りていた未依は、
ルーの傍らのそばにいた。
「……ミイちゃ、ん?」
「ふ~ん、これは、こまったぬぇ?」
「困る、というか! こまるというよりも、お医者様がああ言われるってことは?!「おぬえちゃん、こえ、おおきい」 むぐっ!?…………も、もしそうなると、ユウタのいもうとさまの、ミイさんは、それじゃあ、それじゃあ…………」
「いやぁね? でもね?」
混乱するルーに、優しい声で答えた、未依。
「ミイ、ちゃん……?」
「……、、」
未依は、ルーのそばで、しー、と利き手の指を顔の前に立てた。
ゆうたと医者の会話は、まだ続いている。
しかし、ルーには、自分からはるか遠い彼方で話し合っているように、聞き取ることが出来なくて。
「たぶんね、わたしね、このまま、しんじゃうんだとおもうんだ」
「えっ?」
……未依は、そんなルーに向かい、
「がんばってもがんばっても、どんどんげんきがね、なくなっていってるの。
からだの、ほねのなかみ? が、
ぬきとられたみたいに、
からだにちからが、はいらなくて…………
それで、からだが、なかからね? たんさんジュースにつかってるみたいに、 いっつも、じゅわあああーー、って……
。
ねてるときもね? とっても、とっても、くるしいの。
まいばん見るゆめも、どんどんこわくなってて……
わたしね? あさ、かんごしさんがおこしてくれて、毎日おきてるの。
だけど、おきたときも、ぜぇはー、ぜぇはぁー、って、…………それが、どんどん、わるくなっていってるの…
毎日、いちにちづつ……」
「そんな……」
「だから、おぬいちゃんの持ってきてくれる本と、もけー、とっても、とっても、楽しみなのっ。
本を読んでる間は、もけーで遊んでる間は、苦しさが薄くなって、ねるまえも、本のかっこいいもけー、の想像したりすると、ねむるのが、ほんのすこしだけ、こわくなくなるの!」
やや間があった後、
未依が、はにかんだ表情をルーに向けた。
「おぬえちゃんは、おにいちゃんのこと、すき?」
「えっ!?////////// は、はい!
だって、ボクのいのちを、買い取ってくれた方ですから…………///////////」
ふーん?
と、未依は頷いたあと……
「ねえ、おぬえたん、」
えっ?
「おぬえちゃんは、ただのおねえちゃんじゃない、おぬえちゃんだねっ!
ぬ、の文字をつかっていい、すばらしいにんげんだよ!
りある・まっこいのしょうごうに、ふさわしい……
」
よ、よくわからないけど、なるほどです!
「なーんかね、おぬいちゃんも、いろいろあって、
ひとすじなわ? にいかないことばかりのじんせいだったみたいだから、
ひねくれてるようにおもう部分もあるかもしれない。
けど、それは、やさしさの裏返しだから……
おぬえちゃんは、おぬぃちゃんに、よりそってあげてね!」
は、はい! いもうとさん!!
「おぬいちゃんのこと、まかせていいかわからないけど、たのんだ! おねがいだよ? がいじんっぽいおぬえちゃん!!」
ちいさな掌を、ルーに向けた。
「ぇぅ……、、、。。。」
向けられたルーは、……
未依のその手を、……ゆっくりと、
ルーは、自分の手のひらを向けて、合わせた。
……瞬間、
(……むむ?)
ルーは、作動した己の異能で、『視た』。
「……なるほど……これは……なら、これなら…………」
「うにゃ? どうしたの、おぬえたん?」
そのとき……扉が再度ひらかれて、
「わかりました……先生、どうも………
…よ、よっす、ただいまだ。な、なに、してんだ?」
「あっ、おぬいちゃん!!」
「未依、………………」
「またなっ、じゃあなっ、は、ははは、はははは…………、、、、…………。。。」
「おぬいちゃん!」
「また、つぎもねっ 」
……今日の面会時間は、○○時に、終了です……
「…………、……。……」
涙は流すまい、とゆうたは決意していた。
そんなモノで汚してたまるか!
笑顔のあるものとしたいのだ。
それなのに、自分がこんなのだとしたら、どうなのだ。
未依が、いつ死ぬかわからない。自分の末の妹が。
──このストレスは、首を絞められるかのような苦しみは、自分のものなのだ。
そうゆうたは強くあろうとした……していたのだ。
未依の、自分の、末の妹の、その大事な、余命の日々を…………
…………っ
それでも、不意に、不覚にも、涙がこぼれそうになった。
嗤いのときのように、
かみ殺した嗚咽のせいで、
肩ががくついて、動いてしまう・
それを振り払おうと、いつのまにか首の据わりが俯かせていた顔を、上げようとして…………
「あのっ、ユウタ?」
ん?
ルーが、やけに自信のある声で、己の名前を、呼びかけてくる。
──なんや、ルー……?
振り返ってみたとき、果たしてルーは、自信のある顔だった。
フフーン、とルーは無い胸を、ただの虚勢ではないかのように張り、
「ボク、おやくにたてそうです!」
は?……と、ゆうたはその場で呆然とした。
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