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4(4/8)-アリエスタのしあわせムコ取り計画…-




 壮大なお話であった。



 剣と魔法の創世記から……、いや、この世界の場合は、各種の要素はありつつも、そこからは劇的には脱し切れては居ない、ということではあったが。




 異世界、アリスティリーヴ、

 そしてその、西方大陸の、西偏世界。



 その中の、エルトール国…

…その領邦の、アヴトリッヒ領。




 後でウィキペディア情報と比較しながらスマホの電卓で俺がざっと計算したところ、地球の何百倍にも巨大な星……いや、星かどうかすらわからない……この世界で、

 分かっているだけで三十六の数の大陸があるという。

 このアヴトリッヒ領が立地するエルトール帝国があるのは、西偏中心大陸と呼ばれるその一つの大きな大陸の、内陸に入り組んだ、山がちを後背に控える、細長い領土なのであるという。


 南北に伸びるこのエルトール帝国だが、栄えているのは南側らしい。

 帝都があるのは南北の中間に位置するエルトテールであるが、政治と経済の枢軸が集中した事実上の首都が別にあって、南側のクロードハウトにそれがあるという。

 そうして、このアヴトリッヒ領が立地する東北部は、一部を除いて、余り繁栄していない…………

 なんとも言い濁す形で教えられたが、事実上の経済格差だ。

 

 

 そしてこのアヴトリッヒ領は、そのエルトール国の、北の端の、その東端に立地している…

 辺境も辺境、嘗ての魔王戦争の折り、発エルトール帝国から西魔王世界の、魔王領への最短侵攻経路として激戦地だったこの回廊地帯を占領した後、前線の緩衝地域として領土にくわえたのがその成り立ちである。


 

 しかも聞きたくもない(聞いてもビミョウな、という意味で)新たな事実もそこで知った。

 あのジジイ。なんと勇者だったのだ。



 今からだいたい六十云年も前、神とその娘の女神とその遣いに力と武器を賜って、勇者に選ばれた。

 もっともこの選ばれた勇者ってのにミソがあって、なんでも万人単位で、世界中でえらばれたってんだから希少価値が無い。

 でも、ジイさんは鍛錬と努力を人一倍やったし、才能も筋もあった。仲間にも恵まれたらしい。

 そうして頑張った結果、なんと西魔王の討伐に成功した。

 騎士と兵士の大部隊と一緒に、一個師団なんてもんじゃない数個軍団単位の各国連合の大軍団で同時に何度も進出して、押しては逆侵攻されをくりかえし繰り返され、周りを囲まれた魔王世界を三方から侵攻して、おびただしい犠牲とあまりにも大きな代償…土地や地域の荒廃と引き換えに、なんとか打ち勝った。一応……。

 直接、魔王に挑んだパーティだったわけだ。さいごの決戦の時、直掩は全滅壊滅で、孤立無援となった状態で、一か八かだったという。

 仲間と一緒に、魔王の首を討ちとった。

 その報果と褒美として、この領地を拝し遣った……といえば聞こえはいい。

 しかし実体は違った。

 

 西魔王は方々に生き残りの係累と配下を散らして、現在も旧西魔王世界や周辺で再興の機を伺い準備し、一部は穏健な新体勢を打ち出す所もあって直接の攻勢と反抗は控えている傾向にあるが、由来を持つ中小国といえる規模の集まりが方々に数多く点在して、それもあってかつての聖戦討伐軍……西世界の主要国や、近隣の西北世界や北東世界からもそうした地域に投資が入り込んで、エルトール以上に結構な発展をしつつあるし、しかも国力を付けた国や地域同士でにわかに連携を取り始めてもいると聞くし、中には表だって大規模に戦闘をする強硬な残党や治安の悪い地域も大きくあって、叛意ある魔族の進出を警戒して、西世界の各国は、“魔族との戦い”……いつ終わるかわからない討伐と占領と駐留を続けている……

 そしてこの回廊地帯は、逆には大逆をしでかした三連合の、その一つ、エルトールへの最短の攻略ルートでもあって、激戦地の最前線になるのが、いざ事があれば自明の理。

 聞くに、ようするにいつでも滅んでくれてもいい、便利なトカゲのしっぽにされたのである。

 そうして、辺境伯アヴトリッヒ伯として、この何時、火が回るか分からない回廊地域を押し付けられた……というのが、聞きたくもない歴史の真相であった。

 

 このアヴトリッヒ地域やエルトール本国の人間なら、皆知っている常識であるという。

 

 

  

 ともあれ、この商会の一人娘は、実は首都で幼年期を過ごしていたとか。

 

 

 中々に幼少期は難儀したらしく、身体が弱い幼少のアリエッタを気遣って、あのおやじさんの方針で、このアヴトリッヒに越させたのであるとかどうとか。

 

 

 もっとも、愛着はあれどこんなとこで燻っているつもりは毛頭ない、というのが本人の談である。

 

 アリエッタはこの田舎を出て、首都で生活するのをいつか夢見てる……と、いうのを今聞かされた。






「ねぇねえ、」「どした、ルー」



 ルーは、花が開いたかのような満開の笑顔になると、



「ジュースちょうだい!」「うっす、」



 ズコッ! とアリエスタがずっこけたのはその時である、

 

 

 



……ん?


 

 まてよ、

 

 そしたらルーって……………次代の勇者サマ????






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