1(1/8)-アリエスタのしあわせムコ取り計画…-
書き溜めが四十余話程完成いたしましたので、連続投稿を開始いたします…
みなさまごゆるりと…
「マッタク! お前ってば、なんつうことしやるんでぃ」
「ほぇ?」
ざく、ざく、ざく、と地面に積もった草葉を踏み越えながら、
俺とルーは明朝の、異世界の黄金色の森の中を進んでいた。
そう遠くはない距離とはいえ、一路迷わずにルーの屋敷までの道を進んで向かっているのである。
「昨日の晩だよ! おまえ……欲求不満があるにせよ、もう少しどうかと俺ちゃんおもうわけよ。だって、俺とおまえ、同性だろ!?」
ルーのやつは、昨日の晩、せるふぷれじゃー、というやつでスッキリしたからか、そうこの時、
底抜けなく朗らかで清楚で快活な表情でこのときの俺のはなしに応じたのであるが、
「きのうの、ばん? …………、!? 」
一拍の間をはさんで、思い至ると、
「起きてたんですか!?」
ルーはびっくり箱を開いたかのように(歩きを止めて)頬を赤くして、手足をじたばたさせて慌てふためいた。
そう発した後、はっ! となって口を手で覆うと、
なんとも怪しい目と表情になり……
「あ、あれは、なんでもない、というか、その、……ゆめ、
そう! 夢でもみてたんじゃ、ないかな……?!」
「おまえの(唾液)がカピカピのシミになった寝間着を今朝洗濯機につっこんだ記憶がございますよワタクシには」
へう゛、と固まったルーのやつ。
「いいのがれはできませんぞ……?」
「ぁ、ぅ、ぅ……///////」
一拍の間の後、
顔を伏せて、ルーのやつは、どう言い出そうか、と迷うような仕草を見せた。
それからその首を、ぎぎぎ、とこちらの方に鈍く向けると、
両手の指の先同士をあやとりのようにもじもじし始めて、
「あ、あれは///、その//、ちょっと、すこし……その、なんというかな? そう! その、そ……の……、ム、」
「ムぅ?」
俺はダメ押し、というので相づちして、
「ム……ムラムラしたからかな、というか////、
その!!
ゆうたの良い匂い、というか、布団の中も良い匂いがしてたから、というか、その……、つい……////// ぇ、えぅぅぅう、///////////」
かぁぁ、と真っ赤に顔を染めきって、そのままグルグル目になって顔を伏せた。
自爆してしぼんだ、ルーの奴である。
「そ、その、……」
そのルーは、(これが女の子なら……)というか、女の子そのものな造作のその顔立ちで、伏せた表情からの、上目遣い、というのをしてくると、
「ごめいわく、……でした?」
「…………」
この場合、おれちゃんはどの様に答えればいいのか……
「まぁいいよ、」
「!」
ぱぁぁ、とルーの奴は表情を輝かせて、
「や、やったぁ! ユウタ、そしたら今度も一緒に、きょ、今日の夜でも! そ、その、こんども……//////」
え゛?
なんだか、その時よーくみるとだが、
表情は笑んだままだが、なんだか妙な頬汗のかきかたで、
なんだか焦点の合っていない、
目のハイライトを失った、しんだ冷凍イカの様な目で、
黒目を、“えんぴつ、で、ぐるもじゃ、に”塗りつぶしたようなそんなぐるぐるな瞳で、ルーは俺にそう、求めるように言い告げた……
こたえかたまちがえたかもしれんねコレ。
ところで、具体的には、昨日のあれってなんなのよ?
「に、においつけ、みたいな……、?」
猫が電柱に自分のにおい付けをするようなものか。
…………、
俺ちゃん、電柱なの……?
「そうすれば、ユウタが、ほかの……素敵な、かたに取られないようになるかな、できるかな、って……」
いたってふつーの考えのように、そう我意を述べるルーのやつ。
やだこのここわい。
「……ユウタにも責任があります! ボク以外の娘に……ボク以外のにんげんに、あまり目移りばかりしないでくださいっ!」
「そんなこといわれても……」
……ふっ……俺にもモテ期が到来か……
一人はこのルーと、後はあのメイドどもを指して、である。
やだぁー、前者は♂? だし、後者は今時流行らない暴力ヒロインのサイコ集団ですよぉこれぇ。
まあ、あながち悲観ばかりではないだろう。
そう思いたい……
そんな時、
「ルーさま、ご無事ですか!」「ルー様っ」
「! タチアナ、イリアーナ!!」
屋敷の方から、メイドが二人、走って駆け寄ってきた……………
そして、
「………………」
「おじいさま!」
げっ、となってしまったが、
木剣を両手の下で立て、
ローブを身にまとったガーンズヴァル爺が、
屋敷の玄関の前で、立って待っていた。
顔は…………よくわからないが、疲労困憊を隠したような、そんな感じ。
まさか、一晩中、待ってた、とか?
「…………」
「おじいさま、その、…………」
…………、、、
「ごめん、なさい、」
「…………」
ガーンズヴァルは口を静かに開いて、
「ルーや、おまえに、なにもなければ、それでよい…………」
それだけを、優しく、ルーに言った。
しかし、その次の瞬間、俺の目に照準をあわせるように眼光を向けてくると、
その背後から放った殺気で、俺の肉体を八つ裂きサイコロ肉ミンチにするかのような気迫を向けてきて、
「ドウジバシ、何もしては、おらぬよなぁ?」
「いや、その、いやその、するより、された、というか…………」
「 う゛ む゛ ? 」
「いやその、いや、その、いやぁ~~…………」
おれちゃん、ぴんち!
そんな瞬間であったのだが……
「ルーさま、だいじょうぶですか? …………?」
「あ、ぁ、そのっ、」
メイドの一人…………タチアナが、文字通りに鼻を利かせたらしい。
「あ、ぁ、あっ…………」
「…………」
スン、と匂いを嗅いで、
「……ルーテフィアさま、昨日の晩は、ゆうた様のお宅で、何をされて……」
「あぅっ?! ……な、なんでもないよぅっ!!」
「………………」「……むっ?」
げっ、どうなる、俺、
ルーに、ガーンズヴァルが誰何する。
「もしや、ルーや! ……まさか」
「このモノと、どこまで、」
「一晩、ユウタと誼を深めました」
「!」
「……そうか」
「そうか……そうか……」
「うわっ! じーさん、なんで泣いてんだよ?!」
「……孫を取られる我の気持ちが、馬の骨の本人にわかられてたまるか……!」
なにかはよくわからんけども、そんな一日の始まりであった。
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