3(3/10)-かみ?紙?神!-
日刊投稿中でございます…
ごゆるりと…
× × × × ×
「さて! ゆうた、よろこんでくれるかな……」
そのまま午睡を楽しんだ後、
にへらぁ、とルーは表情を綻ばせて、ゆうたのいる勝手口の向こうへと出向こうとしていた。
屋敷の玄関の前で身支度していると、ガーンズヴァルが現れた。
「おじいさま! 手紙を書いたのです!」
「手紙、であると!」
ガーンズヴァルは喜驚した。
ルーの頭をよしよし、となで回して、ルーの側はそれを、
しっぽがあれば振り回しているくらいの
喜びようと満面の笑みで喜んだ。
それから、という指で、ガーンズヴァルは手紙にふれて、
「ルーや、この、純白の紙は……」
「おじいさま! この紙は、えぇと、ゆうたにいただけた物なんです。
とっても質が良くて、書き心地もよくて、色滲みもせず、
とっても丈夫で……」
[そうか……あの異界の者のもたらした産物か…]
「おじいさま……?」
顔に陰を落としながら、ガーンズヴァルはため息をついて嘆息する。
「紙……紙さえあれば……」
「おじいさま?」
ルーテフィアは尋ね返してみるも、
ガーンズヴァルは余裕がなさそうに返事がない。
そんな時、
「ガーンズヴァル様、来客です」
「ウム、我にどのような者が?」
「その……」
「我が屋敷の、御用商人のハーレンヴィルの当代、
テュポンさまでございます。
用件は……」
その時、メイドが辞儀をして迎えた、その客人の当人が、扉から招き入れられた。
「え?」
ルーテフィアは目を疑った。
それは当然だろう。
顔面だけオーク鬼かのような、無骨な醜男が、派手ではないがたしかに豪華な装い立ちで、現れたのであるから……
勝手口が開け放たれた時、道寺橋家では夕飯のさなかであった。
そのキッチンを突破して、土足のまま踏み込んだルーテフィアは、
目当ての人物を居間に見つけると、涙をあふれさせながら理由を説明した。
「ゆ、ゆうた、ゆうた!」
「なんだよ急に」
「はやく来てください! お、お、おじいさまの元に、オーク鬼みたいな男がやってきたんです!」
ルーテフィアは無我夢中でゆうたの家まで急行していた。
あんな恐ろしいものははじめてみた。
どんな加護の掛けられた剣ならば、奴を討ち果たせられようか?
自分一人では、とうてい太刀打ちのしようがない!
だが、この優しくて知恵の効く、異世界人の親しいお兄さんならば、
なにか、なにか打つ手を用意してくれる……筈!
「おじいさまが食べられちゃう!」
「へいへい、わーったよ」
支度もままならずに、ゆうたはルーテフィアに連れられて、
異世界への道を急ぎ向かった。
「はーあぁっ、いそがしいそがしっ!」「………、、、」
屋敷について最初に遭遇したのは、
モップで玄関の乾拭きをしている、
二人の既知のメイドの姿があったことだった。
「たしかにいま、オークのような風体と顔の男がおらっしゃっておりますけどね、」
小柄な方はそこまで口を述べると、はぁ、とため息をついて、
「だから畜生顔なんて、異世界人の方まで相手してられません!」
「んなっ」
イリアーナか、
こいつはあてにならん。
「タチアナさん、そのお客人って、どういう人なんです?」
なのでもう一人の銀髪メイドに訪ねたところ、
「ああ、今おらっしゃれているおきゃくさまのことですか。
………、まあ心配はいりません。
せいぜい我々メイドは、次の奉公先を探さざるを得なくなるのが、
そのときの最悪の想定になるくらいでしょうか。………、
心配はございませんよ。
当家に深い関わりのない、ゆうた様につきましては……」
タチアナの表情は微動だには……いや、かすかに失意の色が浮かんでいる。
まるで、これから訪れる苦難を、回避はどうやっても不可能で、
まるで直撃をうけるかのような顔ぶりだ。
「で、どういう事なん?」
俺にはさっぱりわからん、とゆうたはボヤく。
「だ、だ、だ、だから、あんな、ボクってば初めて本物のモンスターを見て、ゆうたにたおしてもらおうと おもって……」
「おりゃあゲームの冒険者だとか勇者じゃありません。
それに、口振りを聞くと、いかにも、相手は人間ですっていいようじゃないか」
「そうなの?!」
「混乱し過ぎよ、おまえ……」
「え、え、え、えぅ……」
童謡の一節を思い出す。
ルーテフィアは今にも泣き出しそうで、こうなりゃゆうただって、犬のお巡りさんみたいになりたいところである。
と、そこに、
「わたしのルーテフィア様におまえ、だなんて粗野に呼びかけないでもらえます!?」
「?」「ほぇ?」
そんなところに、第三者の声が上げられた。
見慣れない、というか、聞き覚えのない声と、
見たことのない人物…
…年のくらいはルーよりやや上だろう少女が現れていて、二人の目の注目に晒された。
「ご説明、いたしましょうか、?」
その目前にあらわれたのは……
長いツインテールを両脇に跳ねさせて、
仕立てのいい服装に上下の身を包んだ、
蒼色の髪をした、可愛らしく、麗しい美少女であった。
「おひさしぶりでございます。アリエスタ・ハーレンヴィルと申しますわ、ルーテフィアさま!」