7 (7/8) 歩幅を越えたその先に?
「ふにゃ、ふぅ、ふう、ふぅぅ……ゆ、ユウタ……ぁっ?」「お、ぉぉおおお……?」
というわけで、……残された、俺とルーの、ふたりきり。
「ご、ごめんなさ、い。……こないだの時も、見苦しい真似を、してしまい……
……もし、他の人の前で、ユウタやボクの家族以外の前で、こんな粗相をしてしまったら、と思うと、そうなので……
だ、だから、ユウタのことが………つかず離れず…いつもずっと……これから…ずっと……傍にいて、ほしいのです……/////」
……なーるほど、
家臣云々の話の裏どりは、これで取れた。
つまり、俺ちゃんはおまえさん……ルーちゃんの、メンテナンス係? になれば、いいのね????
……それなら、っ!
「ふぇ、ほぇ…? ……はにゃっ?!」
あっはっは、……
もっとも、ここからの俺ちゃんも、こいつ…ルーへは、不埒な真似はしでかしていない。
では、なにをしておるか???
大昔の、妹どもと遊んでいた時の経験や勘を、思い出しつつ……
そんなこんなで、俺はルーのやつと、スキンシップ?めいた、……まあ、じゃんけんで遊んだり、あっち向いてホイ、をやってみたり、
顔面博覧会だ! つーて、俺が得意の百面相を一方的に繰り出して、ルーの奴が大うけしたりだとか……
そんな感じで、気が付くと、数時間が経過していた……っておい、マジかよ。
「むふ~、♡ はみゅ、……うにゅぅ……////」
「……」
「? どうされたのですか、ユウタ?
ユウタ、ユウタ//// はやく、ボクのとなりに、いっしょにきてくださいっ//////」
……まぁったく、末っ子ちゃんムーブというやつである。
「……ボク、そんなに駄々ばかり捏ねてますか?」
?! 今の俺のって、モノローグのはずだよな???
けども、そう聞かれたら……言われたら……
「い、いや、そ、そうはおもわんけどな~、って……ねぇ?」
けど、俺はティキィンなので、そんな殊更荒立てるような主張は、しない主義なのだ。
「ねえ、じゃないですよー、」
……そうして、デカイベッドの上に、ルーと俺は収まった。
「むふー、ひみつきちができたみたいですねっ/////
ボクたちだけのっ/////」
「そうやな……そうか? そうか……zzz」
嗚呼、我がドウジバシハウスのひとらには事後報告になるだろうけど、
とりあえず、ルーが寝落ちするまで、のんびり俺も、過ごさせてもらおうかね……zzz
「ユウタ、?」
「なぁんだぁい??? くぁ、……~~~ぁっ、んぐぅ」
「おおきなあくびですね? ……ぁぐ、んっ」
ははは、ルーにも、俺のあくびが移ったみたいだ。……
「……さっきは、驚かせて、ごめんなさい。」
んあ? 何の話や???
「……いまだから言うけど…ユウタとだけのひみつにしてくださいね? ひみつですけど…ボクは、相手やボクの体調や気分の場合によりけりですけど、すこしだけ、見通せちゃうんです……自慢じゃないですけどね…?」
…ほーん?
そうなのね…中二病、というやつか……異世界人もチュウウニズムはあるんだな……子どものうちには、よくあることだ。
「……けっこう、勇気を振り絞って、言ってみたのですけどね」
まあ、勘がいい、ってことじゃろ? わかったで~~。
なんでもいいやい。
とりあえず、お前も眠いなら寝とけ~
(そう受け止められるというのは思ってなかったですけどね…。でも、それはユウタの優しさとして、そうボクは受け止めますよ…?)
「…そうしたら、もうひとつ、伝えてなかったことがありますね…」
うん?
「ボクにはね? 妹がいるの。」
「まだちっちゃいけど、すごく賢くてね…?
帝都でね…ボクのおとうさまおかあさまと一緒に、暮らしてるの…」
「離れてくらしてるの。おじいさまの屋敷で、 ボクは、ひとりだけ…」
ぐすん、…とルーは鼻をすすった後、
「ユウタぁ、ユウタだけは……、ボクのそばに…ずっとそばにいてくださいね…?」
……そうか……
……何分が経っただろうか。
俺を傍らにしているルーの方からは、寝息のような息遣いが聴こえてきている。
「……大切な物、たいせつなひと、っつーたら、大事にせんといかんわけでよー、
ルーよ、おまえは、俺なんかをそうしちまったら、俺ちゃんは腰が軽い人間だから、多分後悔するぜ? きっとよー…」
「…むにゃ……すぅ……えへへ……告白、されちゃった……えへへ……zzz」
「……。。、。」
月明かりに、ルーの寝顔が照らされている…優しい表情、優しい灯りだ。
そうして、…暗くなった部屋の中で……俺ちゃんのモノローグがひとつ。
「…………、……」
窓からは、月明かりが差し込んでいるので、
ルーの寝顔が見ることができた。
寝顔を見ながら……いや、本当に寝ているのかどうかは、わからんちんなのですけども。
それにしても、ルーの顔立ちはかわいい…
顔だけ、というわけでもないだろうが……
いや、今こうして俺が脳裏で譫言しているのも、
さっきの謎の発言が本当だとしたら、
この、こいつ…ルーには、お見通し? というやつなのであろうが。
暗い部屋の暗闇で、ルーのその顔が、なんだか赤らんでいたような気が……いや、気のせいか…
…重い!
もう、ごまかしてられない。
そう、ヘビーやわ、ヘビーメタル、重戦機エルガイ…それはちゃうやて。
そう、すんげー、ヘヴィーなんやわ…
迂闊にルーのことを知れば知るほど、どんどん深みにはまってきている感覚は……ある。
後戻りできなくなるのでは? という、直感めいたものが……理屈でも分かるか、この道理は……
ま、これでも、ええか……
いや、良くはないだろうけども。
少なくとも、ルーの側の事情というのは、今だ、なにも解決できていないのだ。
なので、ここから先、俺ちゃんは、何をしてあげることができるのか???
嗚呼、最終的にだとしても、この先に、生産的な帰結へ結びつくのか、それを望めるのか、どうなのか……
ぎゅっ、と俺の手首に、ルーのやつのおててが握り掴んでいたことに、いま気づいたわけだが。
……
このおこちゃまも、苦労しておるな……
まるで、俺の手を握るルーのやつのちいさなおててが、
こいつにとっては船の錨みたいなもんなのか…と。
ちいさくてちいさな、本当に、頼りないくらいの、ちいさな、おてて……