5 (5/8) 歩幅を越えたその先に?
###……んで、ガーンズヴァル屋敷に舞い戻ったらば、ルーはなにやらを宣言して……
「おじいさま、」
開口一番に、ルーは爆弾を炸裂させた。
「ボク、きょうは、きょうはね? ユウタといっしょに、一晩いっしょに、眠りたいです…///」
「?!!!」
彼の手元から、かじりかけのピザトーストが取り落ちた…
ふぉおおおおお?! とガーンズヴァル氏。
落雷に打たれたかの如き衝撃に、彼の表情はスパークしていた!
「「?!!!!」」
まて、メイドもなぜ動揺している?
その銀髪ホムンクルスメイドふたりも、一様に、己等のついばみかけたピザトーストを手から落としかけ…って、寸前のところで手持ちに取り直したな。
しかし、むせたようにけほんけほん、とじいさまとメイドふたりは、ピザトーストのかじり食いかけで喉を詰まらせかけたらしく。
「げほ、げほ……ごくん、っと。ふうぅ…このおいしい食べ物は、ワイロってことだったんですか、ちくしょうがおー!?」「なんだと!?ド、ドウジバシ……我に罠を掛けたのかっッッ」
「けほ、……そうならば、メイドの相応、というもののつらさ、むごさを、またこないだのように教育してあげませんとね……その前に食べきってしまいますが、もぐ」
そう言及されて、先程まで美味そうにピザトーストを食っていたガーンズヴァルさんが狼狽えているのを背景に、同じ以上にうまそーに舌鼓を打っていた、当のメイドふたりはそのような言いようを。
いや、こいつらは、この間…ルーをダブルチューしていて…
ウッ、頭が! …俺の脳裏はフリーズした。
…フリーズ中に、以下の問答があったらしい…
「る、ルー様、こいつは、このドウジバシは、ケダモノですよ!!!
伝承やわらべうたにあるような、狼だとかガラガラヘビだとかのたぐいです。
ルー様のような、けがれなき人間というわけではありません!
欲求不満のつがい無しのケダモノだから、
もしまちがったら、ルー様が、どうなるか、どうなってしまうか……!」
「わたしも、同意見です……!」
「え? ユウタの、ふだんを見ていても、そう思うのですか?」
「そ、それはぁ……しかし、そのぉ……」「……うー……」
め、めいど、
メイドふたりよ、もっとだ。もっと、もっと粘ってくれ。
「る、ルーやよ!」
お、おお!
ガーンズヴァルさん、なんとかして、貴方様の暴走中のこのお孫さんを止めてくだちぃ!!!!
「し、しかし、…ルーや、この男は、お前よりも年を食っていて、同い年の小僧の小童だとか、あるいは同性の、友人だとかとは、違うのであって……」
ん? 同性?
俺とルーは、おなじ男のはずだよな?
「ドウジバシ! キサマの野暮は、今は、余計だ!」
へ、ヘイヘイ……?
ちくしょー、もってくるピザトーストの枚数増やしたら、このジイサンの応対も、もっと丸くなってくれんのかな…(そういうはなしではない)
「おじいさま、」
「な、なんだ、ルーやよ、そんな急にかしこまって……?」
「ボク……おじいさまがしてくれた、あの日の約束のこと、まだおぼえてます。
おじいさまは、おぼえていますか?」
「!?」
「あの約束の日は、いつになれば、ボクにその時が来るのですか?」
「し、しかし、ルーやよ、そ、それは、それでは、
ルーやは……
こんな、豆の煮たような、煮崩れたような面の、この男が、良いというのか?!!」
「ユウタは、ボクの恩人です。そんなこといっちゃだめ!」
む、むぅ、
「ボクたち一家の恩人でもあります。そうでしょう?
そして、ボクの魂と肉体は、あの日……」
「ルーや、るーやよ、もう、もう勘弁してくれ!!
そ、そうだ、ドウジバシよ、
代わりの身代を、代わりの身代と申していたよなああの時は?!
そうだ、そうなのだ。
それによる支払いを、なんとしてもするから、
時間はかかるかもしれない、分割払いとなるかもしれない、
だから、そうだから、ルーやを、るーやの身柄を、るーやは、我の、儂の、わしの……儂の手元に……もどしておいておくれ……」
「へ、へえ、はあ……」
もう、こうなると形無しである……英雄ガーンズヴァルといえども……
「それとね、ユウタは、ボクのこと、かわいいっておもってくれてるみたいなんだ!////」
「?!」
「ボクが、ユウタのたいせつなひとになったら、
たいせつなひとになれたら……
もしそうなれたら……
ユウタがアクマさんだったとしても、
支払いの代金として、ボクのことを受け取ってくれると思うから……」
「る、ルーやよ、るーやよ……」
「だからね、おじいさま。ボク、ユウタにとっての、たいせつなひとになりたいの!」
「……」
「……!!」
「……」
「…………、、。。。」
ひっ?!
な、なんだよ、ガーンズヴァルさん、
唐突に殺気を噴出させたかと思うと、
次の瞬間には、
ぽろぽろ…と、とめどなく涙を落涙させはじめていた。
「ど、どうしたんですか~~…?」
「……ドウジバシ、」
不甲斐ない祖父を、許してくれ……ガーンズヴァルさんは、呻きながらそう唸り……
「不埒な真似は…オヌシの側からは、するのでは、ないぞ…?」
ひゃ、ひゃい……
「さて、行きましょう///// ボクの、おへやにっ////」
「ま、まぁてまぁって、ルーよ、さっきのあれは、冗談、っつーって……」
「取れた言質に嘘も冗談もありませんっ。//////
さあっ、いっしょにいっしょに!!!////
〈身体強化魔法〉!」
「う、うひゃあああっ!?」
俺ちゃんは、魔法でパワーの加護に満ちた状態の、ちみっこのルーに山賊担ぎされてしまい……
そのまま、屋敷の奥へと……