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1 (1/8) 歩幅を越えたその先に?



###「のーみそとろとろ!!」




 そう、その日はそうなっていた。




祐太ユウタ、今日はおまえに言うことがあるぞ」



「…へ?」



 臨時の家族会議が発令されたのはその日の晩のこと…

 

  

「…………へ???」



 発議の内容の趣旨は、こうであった…

 

 

 

▼あねき から おれ への 資金融通の 禁止。




「ゆうちゃん、あんたもあんたよ。なんで気を付けることができなかったの!」


「かあちゃんのその怒りのツボがわからんっつーのじゃい! おれは!」



 のっけから大狂乱の惨事であった……主にかーちゃんが暴れているだけではあるが。

 

 激動たるその模様に対し、あねきどの……ゆいねぇの方は、表面上の態度としては冷静をとりなそうとしながら、




「お母さん、今度もまた、わたしの邪魔をするの?」



「さぁあ、なんのことやら」



 ミ☆

……あねきの腹の底に、怒りの火が着火したらしい。

 まるで、黒い色の炎が立ち昇ったかのように、剣呑なオーラが背後に満ちつつある…

 一方の挑発したかあちゃんの側は、相変わらず飄々としながら……しかし、



「私は、あなたのことはあなたのこととして、ちゃんとした家族のひとりとして、ちゃんとしてほしい、って事なだけなのよ?

 そりゃあ昔の時からの、ゆうちゃんへの執着とかはあるでしょうけど、もう、あれから何年も経つのよ? しっかりしなさいな。

 言いたい事としてはね?」


「…!」



 うっっ……。……言わんとすることはあるだろう。

 かくいう俺というのも、その発言には同意する部分はある。

 そう、そうなのだ。あれから時間の経った、今の俺ならば。

 だけど……あねきどの…つまり、優依…ねぇは、

 まさに逆鱗を逆撫でにされた龍の如く……

 そこが怒りの我慢の限界点であったらしいようで、

 


博美ひろみ……おかあさん、 わたしは、あなたのことを…わたしは…本当に……!」


「なによ、優依ちゃん! あなたったら、こういう時は特に反抗的なんだから!」


「おかぁさん……、おねえちゃん………、。」



 間に挟まれたいもうとは、涙を流して泣いている…



 あああ、俺も、俺ちゃんも、泣いてしまいたい……



 ママ上どのは普段通り強硬なので、おそらくは、もはや俺の命脈は尽きたも同然だった。

###あねき銀行、倒産!?ということである。

 そ、そうなったら……

 

 

「とーちゃん、へるぷみー!」 俺は奥の手を使おうとした!

 だが……

 

「いやあ、とうさんも思う所はあってな……さすがに、優依は大学生とはいえ、この金額は、ちょっと、なぁ……」


「えええ」

 


 そんな、もうパパ上どのは懐柔されてしまっているだと?!



「優依、今回ばかりは証拠も押さえてあるわよ…」


「…! わたしの財布に入っていたはずのレシート…!」



 優依ねぇは、紅顔させながら……自分の長財布が脱いだ服に刺さっていたままだったであろう己の着替え置場と、かあちゃんの方を交互に見た。

 まあ、ここに関しては、身の回りがなにかとルーズなあねきどのにも、非はあろうが……



「優依!あんたねえ、あんたの財布の中に入ってたここしばらくのレシート、こっそり全部見たわよ!

 ここ数日、朝飯と昼飯なに食ってるんだと思ってみたら、やっぱりそうだったわね。

 なにも挟まってない一番安いコッペパンとコーヒー牛乳しか買って食べてないじゃない!」


「むぐ、……」



 あねきは普段は傑物オーラが出ているのだが、

 こうなると、かあちゃんどのに、いいようにやり込められるばかりである。


 

「 博美ひろみ!!」

 

 

「 あんた昔っからそうなんだから、自分が図星を突かれて不利になると、あたしの名前を呼び捨てにして!

 そんな見え透いた拗ね方、最近は末依だってしないわよ!」



「 しるもんか! 」




 そこまで声を荒げて、ゆいねぇは、はーぁ、っと息を吐いた後に、


 


「…もう寝ます」



「明日の朝までゆっくりおやすみなさ~い」



「…! ……、、、。。。」



 ユウタの母…ドウジバシ ひろみ…の大人げない砂かけ同然の呼びかけに、

 おぼえてろよ、とゆいねえ……あねきどのは、うらめしげにセリフを残して、自室へと去っていった……

 

 




「 お夜食、ラップかけておくからね~!」

 

 

 

 …  !  …

 

 

 “ドン!”…という、二階からの壁か床をどついた音。ぞれが優依の返事だったようだ。



 

「おかーさん、なんで…… 

 あああああんっ、

 おかあさぁん~~~~!!!!!!」

 

 

「あら、あんたも行ってくるの?

 なら、いってらっしゃいな。

 あんたたち姉妹は、昔からそうやって…」

 

 

「 ちょっとまて、かあちゃん!

 舞依にその云いぶりはないだろ?!」

  

  

「 ゆうた!あんたはだれの肩をもつのよ!!!」

 

 

「 どれの肩ももちませんって……」

 

 

「 だいたいねえ、今日のこれは、

 そもそもあんたが原因じゃないのよ!」



「 うぐっ… 」

 

 

「 わたしも不機嫌になるときはなるのよ!ふん、だっ!」



 餓鬼のようにふるまう母親……まあ、まあこのひとは、昔からこんなもんだったのだ。

 別に、今に始まったばかりのことではない。

 これまでもそうだったのが、今もこうだったのだ。

 

 すると、これから先の未来はどうなる?

 ……そんなハテナ?を脳裏に浮かべつつ、

 ふと、横合いの、いもうとさま……舞依……へと視線を向けたらば、



「 おにいの、ばかおにいの、くそあにきの、ばか~~~~~ぁっ!!!!!」

 

 ぼすっ!

 

「 ぐえっ!?」

 




「くそあにきのせいだ!」



 舞依も、自室……姉貴の部屋と同室である……へと、階段を走って登って行った。

 いまの腹パン、いって~なー、おい……

 


「 あーあー、舞依もこうなっちまってる……はぁあああ…………。。。。、、。。」




 あああ、こういうときはとことんガキっぽくなるんだよ、うちのかーちゃんは……





「 おやじどのー」



「 あのなあ、とうさん、どうしたらいいか、わからないんだ……」



「 そうですかい…おやじどの…




 ……あんたの嫁だろ、」

 

 

「 ああ、この親父のな。

 そして…おまえの母親だ。」

 

 

 ………

 

 ………

 

 

 がっし、ぐっ!



 男家族同士、涙を呑みながら、腕手を酌み交わした!





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