1(1/6)-五十歩百歩のその歩幅-
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「ふむ……」(ふっふっふ……)
かくして先日、有力な金蔓…もといマネタイズの窓口を得たワタクシ、ドウジバシゆうたは、
きょうも再び、あねき…ドウジバシ 優依…に売り込み提供を図っていた。
といえども、今回はよりシェイプしてみた。
あねきやその友人の仲間たちの専門に合うような、より材料系や機能、能力がすごい、面白い、興味深い、あるいはもっと勅諭的に…金になりそう! といえるものを、チョイスしてきたのだ。
といっても、これは…オーダー…といった方が良いのだろうか。
というのも、アヴトリッヒ家の家長たるガーンズヴァル爺の了承と了解を取り付けて、
只今のおれちゃんには、ガーンズヴァル屋敷の人員の全面協力体制が約束されて、それが実際に提供されていたからである。
いまこうしてあねきに渡したブツというのも、
よりサンプル用途に適したような、端切れ、ベレット、試料…といえるような形式の物品でして、
これというのを、
ガーンズヴァル氏の奥方・エリルローズおばあさんと、その娘のエリルリア叔母さんに、
持ち前のすごい!魔法や錬金術の腕前で、多複種類のそのサンプル品を、
前述のその二名へと、特注として、限定的に造り上げてくれたもの、なのであるのだ。
なにせ……マジでヤバい。
いや語彙力! といえるではあろうが、
なにせ、エリルローズお婆さんの方は、かつての勇者英雄・ガーンズヴァルと共に、
魔王征伐に挑み、その旅の果てに、それを達成した!
勇者英雄のパーティのそのひとり……その魔導士…魔法使い。
マジモンの伝説的人物なわけであったのだ。
一方のエリルリア叔母さんというのも、これもすごい。
ガーンズヴァル爺とエリルローズ婆という、その才能あふるる才傑たるご両親の間に生まれたこの人物も、
アヴトリッヒ領が辺境伯量として立地する、そのエルトール帝国・本土。
その帝都の魔導アカデミアの、当時の入会最少年齢記録を更新したほど!の、
ズバリ気鋭の才覚を光りに光らせて前半生を過ごしてきた、
そんな生い立ちの人物なのであったというのだから。
(それだけに留まらず、そのことが些細に思えるほどの多大なる功績や貢献、現象/原理の発見や発明などというのも、このエリルリア女史というのは何度も何個も、現役時代に成していたそうだ…
…わけあって、今はあんな具合に昼間から酒飲んでクダ垂れているように、辺境で開店休業状態ではあろうけども。
そして…それにしたって、まだ帝都の研究所というのをクビになったわけではなく、故あって、閑職に追いやられたからだ、という話だったそうで?)
事実として、異世界側では偉名として、歴史に名を遺すほどの人物であった。
しかも、それが、ふたりも!
さて、そんな二人が惜しみなく協力してくれるとあって、そうそうたるモノが用意できつつあった……
それらサンプルをあねきにわたして、そうして、そのあねきとの折衝を繰り返しつつ……
傾向としては、根幹となる魔導の神秘の重大さへのウェイトという意味でエリルローズ婆が居り、
エリルリア叔母さんは、より野心的な、インダストリアル的? というか現代的アプローチで、魔導のそれへと迫らん、という感触が、あねきの反応をみてての、俺のフィーリングとして得られていた。
いやー、エリルリア叔母さんにも、窓口繋げられて、やあ、よかったわホンマに……
何かと気難しいあの人であるが、お菓子…を餌にすれば、釣れる。
その現象の確認は取れているが故に、今はそのあたりの習性を目下研究中である。
そんでもう、魔法術、錬金術、魔導科学、魔導化学、魔導工学、魔導生医学…etcetc
なにやら俺が予期していなかった巨大な鉱脈というのに、掘り当たっちまったようです。
そうして、いまに至る……
とりあえず、先日のあねきの言から引用して、
治癒薬・毒消し薬・それから、蘇生薬なんてものも。
それ以外にも提供されているのだが、まあ魔法薬品の、その濃縮原液、これらというのを各種類、用意してもらった。
次に、
術式経典
魔導符/魔導札。
……というシロモノについても。
はてな?となるだろう。
さて言おう。これとは、俺がガーンズヴァル爺に決闘を挑んだあの日、
あの時に、ガーンズヴァル爺が繰り出した…
爆弾?!
というのではなく、それもそうなのであるが、そうではなくて……
それだけではない、それのみに使いの幅はとどまらない、
というべきだろうか。
形式としては、特殊な魔導インクを用いた、
いわば…印伝細工…鹿の皮をなめしたモノに、漆を用いて、立体状に柄と文様を刻んだ、本邦・日本の伝統工芸品の一種…的な?
これというので、魔導原理/錬金原理でいうところの、
いわば電子回路や半導体、もしくはエネルギーや情報データの記憶やチャージ、
いわば電池としての使い方もできたりする、
そんな、異世界では非常に汎用性に富んだ、応用の度が高い、そんな技術ジャンルなのであるそうだ。
そう、……魔導。
この異世界の神秘。
まろやかなる深淵と晴れやかなる高み。その両極の間に広がる、海のごとく、山のごとく……な、それ。
それへのタッチ、というのを、ワタクシめは、あねきに、囁いた……
“前人未踏、前代未聞、…やっちゃわなぁい???” 「!!」
そうなのである、これについても、先日の姉貴の言の通り、
“半導体や電子部品、電子製品的なものがあるのなら……”というのに、合致しているからチョイスしたのだ。
「ふむふむ、ふむ、」
ど、どうでっか??? あねきはん。
「うーぅむ、…いいね。」「おおお……」
!好感触!
「チャンスだね。千載一遇といえる。
今日もこれから大学に行って、早速これらを手土産に、皆の前でお店を広げてみることとするよ。
さあ、今日はどうおどろいてくれるかな…?
昨日、おとうとくんから貰った件のブツというのを皆に見せてみたら、
みんな血相を変えて驚いていてね……ふふん」
なるほど……初見であれを見せられたら、たしかにどうともなっちまうだろうさ。
「そんでは、また俺も今日これからはルーのやつのあやしついでに異世界行ってくんけども、なにか、要望というのは、ありまっか?」
「ふぅむ、そうだね……なら……」
ふむふむ、あねきの要求としては、そうである、と……
「そうなんだよ。今日持っていくこれらの分析と解析で得れる知見次第で、また改めて追加の要望を、おねがいしたいかな…?」
「なるほどの。なら、今日もまた、俺の勘が囁くような何かがあったら、それを今日の分のお土産にして、帰ってくるわー」
「うん、それで行こう。」
……じゃあ、行ってくるね、おとうとくん、
──ああ、あねきも、気をつけてなー。
さて、そのように今日の作戦は要諦が固められたわけですが、
「ばかおにぃー」
「なーんだ、いもうとよー」
どうも気づくのに遅れたが、
こないだから“くそあにき”呼ばわりを自重して控えているような、
そんな今日のいもうとさま……ドウジバシ 舞依……が、俺の背中にだれているわけで。
「なーなー、ばかおにぃー」
「なーんぞやか、いもうとさまよ」
いもうとは俺の肩の上に、その手元のアイスクリームの容器を支えるつっかえみたいに俺の体を利用しつつ、
「わたしの居場所が、なくなってきてる気がするー」
「バカいも、おまえにはおそとがあるじゃろ、」
「わたしをジャリ扱いするなぁー!!?」
「くそあにき、しね!!!!!」……と捨て台詞を吐いて、バカいも、こと、いもうとさまは去っていった……ああ、おそとへと行ったんやな…今日も。
その面持ちは、なんとなく、うるうると泣いていたような気も……いやいや、これはあいつの普段が祟った結果やで。
「あふ、ようやくユウタとふたりになれた…。」
「おー、ルーちゃんよー、いらはいー」
実はずっと部屋の入り口で、ガーンズヴァルのお孫様ことルーテフィア・ダルク・アヴトリッヒ、この異世界っ娘は待ってくれていたのである。
長い時間またせて、すまんかったの……ほな、うちらも、今日の異世界、いってみっかー。
「けど、ちょーっち、おれたん、せわしなくなるやもしれんぞ、」
「うんっ♪ 大丈夫なのですっ! ボクのそばにいてくれるだけで、ボクはとっても、うれしいのですっ/////」
「あーい」
こんな感じに俺へといつもどおりに接してくれている、
いつもどおりのほえほえ萌え萌え……ショタ?をやられているルー氏であったが、
じつはこれでいて、とっても、置いておけない人だったんです……
それではその様子の実現場へと、今日も行ってみよう!