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8(8/8)-アヴトリッヒ家の華麗なる食卓 TAKE 2-

###8(8/8)-アヴトリッヒ家の華麗なる食卓 TAKE 2-





「見損ナッツ!!!」



「へう゛っ?!」「お、おお」




 まあ、こうなると突っ込めるのは…妹様は撃沈してらっしゃる…

 なので、俺がルーを成敗した!



「ゆ、ユウタ? いつもボクにやさしいキミが、いったいどうして、どういう……?」



「あねきをいじめるのはやめてくれよね…。かよわいひとなんだから…」「なっ////」



「!?」



 ルーは愕然となり、あねきは…なんかいつにもなく、湿度と温度が高い雰囲気を俺へと向けはじめているのだが、これはどういう…

 

 

 まあさておき、

 ところで、ルーよ。なぜにお前はそうやった???

  いつものお前はそうではないだろうに…そんなやつではなかったろうに…

  俺ちゃん、かなしい……

  

  

「えええっ?!!!! は、はゎぁ……」



 俺のその言葉は正気に戻そうとしてこいつへと向けたわけだが、果たして実際には一連の推移のトドメとなってしまったらしい。

 ルーはこうして沈没したのであった……



 “きょうはフレンチトーストよー”




 そんなルーの耳が、ぴく、と動いた。…

 カーちゃんはフレンチトーストを焼いてくれていたのだ!

  それを、今から食べに行こう、…として…

  

  

  

 「おとうとくん、おとうとくん、」

 

 「なにだね、」

 

 「ちょいとちょいと、」

 

 あねきは、呆然として白く砂のようになっている砂像の如きルーに指をちょいちょい、と向けて、


 

 「こいつ、にも食わせるのかい?」



 とは言いますがねえ、…と俺は頭を振ろうとして…

 

 

 

 あ、そうだ。

 

 

 

「あねき…ここで、ちょっくら、やっておきたい密談が…」


「ダイレクトおとうとくんショップってことだね? フゥム、」



 あねきはそう一瞥の声を俺へと掛けたのちに、



「出品の品というのは、おとうとくん本人そのものの権利なのかい?

 それなら幾らの競りの競い合いになろうとも、金子の惜しみはしないよ」


「俺本人を出してるわけではないし、そもそも競売の類でもありません。…」


「そうか。…ざんねんだ…」


 わりあいガチトーンで云ってのけた気がするぞこのあねきさま。

 でも真顔でおどけられても、参っちまうぜ…俺以外のやつならよぉ、多分。

 

 まあそんな冗談同士をお互いで交換したのち、



「よし…聞こうじゃないか」

 

 

 ありがてえ……あねきさま……

 

 

 おれは三顧の礼で平伏した。




*****


 そうして先ほどの透視眼鏡を装着したあねきどのは、なにやら俺のことを、不動の如く、向けた顔をこちらに固定して、凝視している…イヤンっ。


 

「…なるほど、これがさっきの手品の、そのタネというわけだね…」



 あねきは……果たして日ごろから、初見の人ならば不安になってしまうくらい、

  物事のいちいちに対しての反応が…薄い?というか、ポーカーフェイスというか、なんというか…。

  まあそういう人なわけだが、さりとて言おう。俺はあねき研究道の第一人者でもあり、つまるところ、一見さんの初見さんではないのだということを。

  というわけで、俺ちゃんはこのあねき…道寺橋 優依…の機敏というか感情を、察していた。

  可読できる言語に可視化するとしたら、こうなるだろう。

 “YOU、マジか? これ”

 ああそうですとも、ユウ・カジマ。

 だいぶ…というかかなり?吃驚されているようですよ、今日のこの姉貴さんは。 

 



 そうして、算段を、俺はあねきに、伝えた。

 

 あねきは、しばし考え、そして、返答した。

 

 

「わたしの大学で、わたしの手柄にしてほしい?」



 そうそうそう、

 

 

「インチキなことをかんがえるなあ、おとうとくんも…」



 その割には、あねきのそう動くことのない口元も、耐えきれない、こらえきれない、というように、にやけているじゃあないか……

 

 

「そうかい? く、くく……フフフ……」




 そうなると、はてな? とみなさまはお思いになられることだとおもう。

 わたしは密談を持ち掛けたのである。

 そう、このあねきに。

 

  その内容とは?

  その内容とは……“地球に持ち込んだ異世界産品を、まずさいしょに、あねきに渡す”……ということ。



 注釈すると、あねきは大学で材料工学をやっているだとかと以前小耳に挟みまして、

 あねきの学友さんたちというのも、皆揃いも揃って、モノづくり系の関係が覆いそうなのだ。

 ならば、その横の縁というかツテとおつながりに、乗っからせてもらおう、と。

 それならば? ということであった……


 まだここからどうなるか、俺には検討もつかん。

 あねきがどう利益や商売へと繋げ、あるいは価値品の商材として転がすかとかも、

 けれど、めぼしい研究材料にはなるかも、と。


 ただ、現状のいまこの時としていえることは、こうだった。

……体のいい廃品の押しつけ!…… 

 ま、まあ、飾ることなく核心を言うならば、そういうことでもあろう。…



「…でも、おとうとくん?

 そうすると、さっきのおとうとくんのは、ほら話ということだったとおもうけど、そうなると、」



「あっ…」



「ひみつ、ということだね?」



 ま、いいさ。……

 あねきはそう言葉で閉じてくれた。



………俺はまたしても、このあねきにやりこめられてしまった……



 さて、残るはルーである。

 はたしてこやつの機嫌次第で、俺たちの悪だくみは、どう倒れるものなのか。ということ…



「仲直り、しよう…」「ほぇ?」



 さて、復活したルーにあねきがそう声を掛けた、その瞬間、……

 この時わたくしは目撃しておりまして、

 はい…いやはやなんというか…

 笑った顔がうまく取れないあねきどのが、

 ここ一番の打算があるときに取る傾向のある表情のひとつ、

 “口元だけ、笑いの表情になる”…というのを。



 つづいて、その笑みというのは俺ちゃんにも向けられて、



「おとうとくん、おとうとくん、」


 は~い? なんじゃろなって、…ん?


「これを支払おう。」




 占めて、一万五千円。

 

 これの臨時収入が入りましたとさ。

 

 

「………」

 

 

 やったー! 俺ちゃん、ラッキー☆

 

 ガッピー!







「………」



 よほどダメージが深かったのか、話の中途でも覚醒も起床もすることがなかったいもうとさま…道寺橋 舞依…。

 一連の話が終わった後、

 ルーの調子を伺うのに忙しかった俺は、この存在を完全に忘れてしまっていた…

 なおも遺棄残置されていた、このいもうとさまにおかれましては、

 焼きたてフレンチトーストを無事、食いそこなったそうな。

 

 

 どっとはらい。





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