6(6/8)-アヴトリッヒ家の華麗なる食卓 TAKE 2-
###6(6/8)-アヴトリッヒ家の華麗なる食卓 TAKE 2-
「つまり、お主の住む家のカッテグチという裏門とやらが、あの扉の正体であったと?」
ええ、と答えた俺、しばらく目を見開いたままのガーンズヴァル爺。
「………、、」
ガーンズヴァル爺は、
どっ、と疲弊したかのように顔で天を仰ぐと、
「魔王め……なにをかんがえておった……」
ただ虚脱した表情で、それのみを譫言した……
のは置いといて、
代金。そう、代金である。
ここ一週間の始まりから今日まで、
とにかく、コンビニ通いで金銭を消費した、俺。
それの回復が必要と言うことでもあったし、
すくなくとも、この喜捨をこの一家へ継続するには、現金の元手がいる。
そんなわけで、いま、俺とガーンズヴァルさんは、
一緒に、この屋敷の納戸をあさっていた……
「……なにやら難しいのう。フム、換金できる金目の物、か」
雑多に、よくわからない物や物体が大量に置かれた納戸の中から、的確にそれを取り出した、ガーンズヴァル。
はてさてそれは?
「銘剣・ヴィンカーク、我の持つ剣の中でも、一番に振るってきた業刀ぞ」
Oh……
思いっきり、武器なシロモノであった。
しかも、実戦使用済み…………
「それは……」
「……フム……」
銃刀法、というのがありましてねぇ……と説明しながら、
俺ちゃんは、冷や汗をたらすしかない。
「……もっと換金しやすい物、をか…………」
ならば、とガーンズヴァルは懐から取り出した、皮の小袋の封を開けて、
「金貨……」
きんぴかに輝く、
金貨……であった。
すかさずスマホを開き、……グラム単位での買い取り価格、は。
この時俺のスマホには…普段愛読していたなろう小説への理解を深めるために、以前メモってたのがあった。
そしてそれが、即座に出た。
リアルタイムの変動値ではないとすれ、
量に対して、この価格だったら、………
「ふぅむ……」
はてさて、どうするか?
この異世界通貨を、
貴金属買い取り店か、金属リサイクルに持ち込んで、換金する、という算段だ。
だが、このコインの状態のままでは、取り回しが悪い気がする……
(ならばどうするか?)
とりあえず考えたのは、
これを溶かして、
簡単なジュエリー風の小物に仕立てて、それを輸入する……
「! そういえば、古いけど、3Dプリンター持ってるんだった俺って……
キャスタブルレジンとシリコンで時間短縮と大量生産、行けるか……?
でも、うちんちは電熱釜がない! そうか……」
「ふむ……?」
ところで、これ一枚の価値は?
「そうだな………………」
……え゛っ?!
「我も、懐が厳しいのでな……」
そ、そうしたら、この一枚くれるなんて、とんだ大金じゃないですか……?!
「うむ…………
我たちも、この金貨は………………」
え、え~い、そうしたら、…プランのBじゃい!
(そういうことなので、先ほど、脳内で考えていたことを、素直にガーンズヴァル爺に打ち明けることにした……)
「金? 金なら、貨幣ではなくとも、よいのか?」
そう、そうなのである!
ホムンクルス、なんてものだったり、自律機、なんてものを実現させる、
それだけの魔法魔導か錬金かはしらんけど、
相応のテクノロジィが存在する、それがこの異世界なのでしょう?
な・ら・ば……故にして、
この世界での価値品……通貨とか金品ではない、それ以外の貴金属製品……の類、
これらを用意するのは、比較的、簡単ではないのだろうか?と。
「ええ、別に貨幣の金貨とかじゃなくても、
材質が金なら、なんでもいいので……
あと、換金できそうな、金属類ならば……」
「そうか……そうか……なら、都合は付くか…………」
安堵したように息を撫でおろすガーンズヴァルさん。
本当なんです?!
とおれちゃんは感極まった……のは、さておいて、
「……しかし、そのためには、我が領都まで行くことが必要となる」
「領都、」
アヴトリッヒ領の、領都……
この開拓領の、市街……であるのか。
「どのみち、日が開けてからではないと行けぬ……
そうして、」
そこまで言いかけた、ガーンズヴァルは瞑目して、
「我の回りに、御主をどう説明すればよいかの…………うぅむ…………」
こっちの世界から見て、俺が異世界人、ということがですか?
「ウム……まあ、それはなんとかする……なので、
しばし何日か、待たれよ。」
ありがとうございます………………
「……なんですがね、そうしたら、自分もカネの都合が付かないと、その日以降まで、食料品の支援は出来ませんな…………?」
「ぬぅっ……?!」
まあ、俺も、財布の中身は、もう僅かなのであった…………
その辺を、ご説明………………
「…………スマヌ、切に謝らせてほしい…スマヌ…………
まさか、御主の念願の買い物の予定を崩させてまで、
我らに喜捨をさせてしまっていたとは…………っ」
恐れ入った、という、ガーンズヴァル氏。
初対面の時の威厳は何処へやら。
意気消沈したその姿は、老英雄だのかつての栄光の勇者だの、というより、
あのルーというお孫さんにお似合いの、人の良くて優しいおじいちゃん、
…みたいな様子のそれであった…
「…わかった!」
ガーンズヴァル爺は、のちに俺に語ったところの、“最終兵器”…
これを発動することを、この時に決意したのだという。
「……それならば、おそらく気には召さぬだろうが、これならば、どうだ……?」
冷や汗をかきながら、ガーンズヴァルは、それらを取り出して…………