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3(3/8)-アヴトリッヒ家の華麗なる食卓 TAKE 2-

日刊連続投稿中でございます…

ごゆるりと…

###3(3/8)-アヴトリッヒ家の華麗なる食卓 TAKE 2-








「……ドウジバシ、我が屋敷の自家製の、パンである。」



「し、白パンだぁ!! おじいさま、すっごい!!」





 目の前に置かれた、小ぶりなのが、一個。



 茶煤けた、石のようにもみえなくはない、それ。




 石粉混じりのパン。だった……



 その上……

 なんというか、あれだ。


 パンと言うより、中華まんというか肉まんの生地、それのなり損ない。 そしてさらに、それを、ふかすのに失敗したような、そんな味、





「白パン、白パンですっ、! 白パンだよ?! ユウタ!!ねえねえ!? もぐ、もぐっ! 」



 ルーのやつは、ぱっと見、おおよろこびなのであるが、



…………。。。。



 もぐもぐ、………………。。。。


 なんか、肉まんのまんじゅう部分のなり損なったような、そんなあじがする……





……う、ぅぅ、





 次にだされたのは、




 血の味のするソーセージ。



 うげぇ……




「とっておきの、自家製ソーセージ!!」



 血のあじがするドライソーセージ、それの薄切りが数切れ。





 そうしてそうして、





 次に出されたのは、




「じゃん!!」と、ルー。




 ろーすとびーふ、と銘打たれた、謎の肉質のわっか……

 ぱっと見は、巨大な、ちくわぶ、にしか見えない。



 色も色白く、なんか、フォークの先で感触を確かめると、ふわふわ、もちもち、している感じの気もする……




 とりあえず、いままでのやつよりかは、まともな味だった……




 味付けは塩味と野菜汁のソースだけだったけども。





「ねっ……、ねっ? ユウタ、とてもすっごい、りっぱなごちそうでしょーっ?」



「あ、あぁ、あぁあ、う、うn……」




「まだメインディッシュが残ってるよっ♪」




「う、う、うn……」





 そうしてだされたのが、





「……主菜メインディッシュでございます……」









 なんてこった!!!!






 置かれた皿の中をみた途端、俺は顔の血が引いた。



 俺のだいきらいな、カブと空豆……に似たなにかの入ったシチュー



 それと対面した。



……




 せっかくのルーとそのオジジの好意なのだ。

 折角のご厚意、無碍にするわけにはいかない。




「…………、。」




 俺ちゃんは、覚悟を決めた。



 慎重に、ひとすくいを匙で取り、俺は口につけて……




「グエップル!」




「?! どうしたの、ユウタ?!」




 少量の塩でくたくたになるまで煮込まれただけの、シロモノだ。


 具材の風味とも相まって、絶妙に、不味い……


 お、おれの口には合わん!!!




「ゲェフッン、えぇっえっふ、ごほっはっ! ……」







 自分でも、アレルギー疑ってるんだよね、このふたつ……







 ルーの家のディナーでの出来事は、まだまだ続く。








 果たしておれちゃん、絶体絶命。






「ゆ、ユウタが、ユウタが、大変なことになっちゃったよぅ?!」



「どうした、ドウジバシ……?」






 さ、皿、くれ…




「お、お皿……?」




 底の深いのを、二つ!




「わ、わかった! タチアナ、イリアーナ!!」





 ぐ、ぐえっ…………ぐえっふ、ぐふっ、ぐふー……





 念のため、と持ってきておいた、ペットボトル水、

 回復の聖水であろうそれを呷りながら、俺はなんとか自分のコンディションを立て直そうとしていた。




「皿、です……」




「!」




 持ってこられた、皿ふたつを、ひったくる。




 そして、鞄から取り出した、それの、



 粉を、だばあ、




「!? ち、畜生顔、そ、それは……?!」


「……なにやら、いいかおりがしますね…………」




 間近のそばで目撃したメイド二人は、あっけにとられているようだ。

 他のアヴトリッヒ家の居並ぶ面子も、ルーを含めて、皆、困惑だったり驚愕している…のだろうか。

 というか、詳しく反応を感じるには、緊急な俺には余裕が無い……




「ゆ、ユウタ、なんなのです?それは…」



 あっけにとられているのは、俺の傍らのルーもそうだった。




 とはいえ、はやくしなければ……


 皿に突っ込んだ粉に、ペットボトル水を加えて、

 匙で粉を液状に伸ばしてやる。



 

 そしてそれを飲みつつ、

 おれは尚も取り出した、栄養ゼリーを口でかっくらった……





 今日の昼に来ていたら、

 ルーに喰わせ飲ませようとおもっていた、

 栄養ゼリーと、



 粉末ドリンクの素




「ズズッズズ、ずずぅっ…………」




…………





「ふぅ、……」





 口直しに食ったこれらの服用により、俺ちゃんは、なんとか一命はとりとめた





 かー、現代日本の科学力は世界一!





 あー、なんとか甦れた







「ごちそう……さまでした……」








     * * * * *







「ごちそう……さまでした……」




「えっ……えっ、えっ」





 まるで、通夜の晩の日のような、重い沈黙であった。


 それを中断させて発した俺のしゃべりに、そのようにルーが反応して、





「どうしたの?! ユウタ、ボクたちのとっておきのごちそうなんだよっ!?」




 そう、そうなのである。

 それは判っている。

 それはわかっているのだが…………




「すまないな、みなさまがた……。

 ……しかし、そうとは言うが…………」




 だが、俺ちゃんは、ど~しても、気になっていた。




「…………あんたら、なぜ食事を取るのを続けない?」




「………………、」「………………」「………………」「…………、、、」





 そうなのである。それに対してである。




 俺以外の全員も、飯の大部分は、そのまま遺されていたのである。





     * * * * *




 はたして、それから数分後……




「「「「「「………」」」」」」「……」



 みな、カプリコォ…をたべている。


 俺が来るときに持ち込んだ、あの大袋入りのカプリコ、多複数個を、である。

 やけくそのように買ったはずのそれらが、…ものすごい勢いで、消費されていく……

 


 だが……無言であった。



 皆、揃いもそろって、無言であった。

 

 

 皆一様に、がっついている、一心不乱である、ということでもあろうが、それ以上に、無言だった。…




「………、」



 俺もカプリコを食べている。

 食べているが、……気まずい雰囲気であるので味に集中できない。



(もぐ、もぐ、た、タチアナ、なにか、……なにかしゃべりましょうよ? た、タチアナっ!!)


(…、もぐ、…いまは、場の沈黙に従った方が、いいのではないかとおもいますね……もぐ、)


(そ、そんな?! ふ、ふがむぐもぐ、けほんけほ、む、むせちゃいました……)



 メイド……イリアーナとタチアナのふたりは、

……さしずめ、まるで内職のような様であった。カプリコミニの個包装を剥いては、中身のカプリコを己らの口にへと運ぶ。

 そうして齧り終わり咀嚼し終えた後、今度はふたたび、また新しいカプリコミニを手に取り……

 その所作を繰り返す…そうして目の前のカプリコの暗食を続けながら、ふたりはそうささやき合い、



(さくっ……うん……そうすれば、わたしたちはまだ、このかぷりこぉという美味なる菓子を、ずっと食べていられますからね……ふふふ……さくりっ)


(あっ、それ妙案だゎ。いわれてみればそうっすね! やったーっ☆ もっと食べちゃいます!!! まぐもぐふがもぐ)



 隣り合うメイドふたりは、そう気配を飛ばし合いつつ……



「かりっ、もぐもぐ、♡、さくっ、まぐまぐ、///、ぱくっ、もぐまぐ、ぅう~んっ////

……えぅ?」



 はたして、暗食…

…というのであるが、この場の面子の中では、まだ仕草や感動の感情というのを、正直に表している方だ…

…しながら、はたしてちいさなルーは、まずひとつとしては、そんなユウタの様子に、

 後のふたつめとしては……この場の、己と同じくこのカプリコの暗食に没頭している、自分の家族たちのこの様子というのに、今気づいた。



「えぅ? えぅ、ぇう…?」



「………」(かりっ、)(さくっ、)(むしゃむしゃ、)(ぱくりぱくり…)



「……ぇ、ええっと、ぉ……ね、ねえ、ユウタ、なにがおきてる……の?」




「……うまいか、」




「えぅっ?」



 おれは虚無を在有とするべく、口を開いた。


……今この時、目の前の卓には、食後の甘味としてガーンズヴァル一家のこのアヴトリッヒ家がもてなしで出してくれた、

 樹液掛けのクロムギクレープ(風)、

 それが、手つかずで残っていた。

 いや、この場の面子の、その全員がそうであった。

 全員が、ほぼ、このクレープもどきを、皿の上に、ほぼ完全な形の残余として、残していた……のだ。

 

 

 翻って、この一家の面子というのは、今はこうして、カプリコちゃんに夢中になっておられる…

 つまり? うん。 



「うまいか? カプリコォン…ちゃんは」




「は、はいっ!////」




 俺の言葉が発されたそれに対して、ルーは、快活に正直に、素直に、そう答えて、

 



「とっても、おいしいよっ!」




「……そうか、」「「「「………、、。。。」」」」





「え……?」



…………



「ひぅ!? え、ぇぅ……」



「……」「「「「「………」」」」」



「そ、そのぉ……っ、……えぅ~~~………」



 ルーのやつは、俺の問いかけに、無邪気にそうおこさまらしく返してくれた。

……なのだが、その後の俺の返事と、この場の何かを悟って、しょげてしまった。

 貰い事故ならぬ、貰いしょげ、というべきか……




「そうね、愚姪ルーのいう通りだわ…」



 ん? この時、変化が起きた。

 この場の全員が、

 自分たちの用意したクロムギクレープには目もくれずに、

 内職のごとく…先日ぶりに俺が再びもってきた、このカプリコたちの個包装を解いては、己の口にへと無心で無言で……眼光を怪しく灯らせつつ咀嚼しながら……運ぶ、

 この暗食内職食堂空間の中で、である。

 

……声の主は……



「とっても美味しいわ。この、焼き菓子は。」




 そして言葉が途切れる。沈黙……だが、その人物は次の言葉を繰り出すその寸前だ。

 俺、ユウタは、ちらり、と目の先で、食卓の間のその存在を、見やった。

 その人物とは……




「ねぇ……」





 話を切り出したのは、こないだの、ルーのオバサ……失礼、叔母の女性のかた……である。







「ねぇ、アンタ。」



「は、はぁ?」





「アタシに、こないだ喰わせてくれたような、おいしいゴハン、クイモノ、食べさせてよ・もちろん報酬はないとは言わないわ?」




 はぁ、




「あたし、昔は魔導学者のはしくれやっててね……いや、今も名義上はそうなんだけど、」



「はぁ?」




「あんたに、好きな魔法薬造ってやるわよ。

 あんたは見た目もさえないし、モテてないだろうから、惚れ薬なんて、どーぉ???

 精力剤でも、いいわ。三日はサカってたまらないようになるやつ!


 あ、実験台は、そこの愚姪ルーで試しなさい?

 その子もあんたにはまんざらじゃないようだから、イイ思いできるとおもうわよぉ????」



「これ! エリルリア!!!」「ウォッホン!!ウォッホン!!!」



「えぅっ?!//// えぇぅっ?!///////////」





 ところでよー…愚姪? 前から思っていたのだが、これは……どういうことなのだろーか。




「待たんか、エリルリアよ。……我としては、この黄肌人のドウジバシに、もてなしの

席をと思い、今日をこうしたのだ。にもかかわらず……」



「でも、おとーさん、今日、朝ごはんのクロムギ粥、残してたでしょ?」



「ぐぬ、! ……っ……「ほっほっほ…」…ローズ、儂にも沽券というものがあるのだ、そう乗らずに、勘弁してくれ……」



 老英雄・勇者ガーンズヴァルはこのように。


 さて、ルーちゃんは?

 


「ゆ、ユウタ? ぼ、ボクは、ボクは……だいじょうぶ、だから、ね?」


「なにについての/なにが/だいじょうぶ/なんですかい、?」


「えっ?! ええっと……いやはやぁ、いやぁ、その、ええっと……ええっとぉぅ……

えぅ……ぇぅ~~~~………………」



……、。。。


 のこるは銀髪メイドどもか。



「ん? 畜生顔、どうしたんですか? ちくしょうがおー(もぐもぐふがふが)」


「……(さくっ、さくっ)……ふふっ、……(さくっかりっ)……」




…………




 まあ、話はそう転がってしまい…………





「……」「……」「……」「……」「「…………」」




「………………」




 はたして、カプリコの有り合わせが、卓の上から尽きたころのことである。




…………俺に拒否権はなかった…………






*********




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