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2(2/8)-アヴトリッヒ家の華麗なる食卓 TAKE 2-

日刊連続投稿中てございます…

この章はあと五話ございます

次の章は十話構成を予定しております…

ごゆるりと…

###2(2/8)-アヴトリッヒ家の華麗なる食卓 TAKE 2-









 さて、こうして始まったその日は、いつもとちがった。








「おじいさまが、でぃなー、に、さそってきなさい、って! 」





 珍しく一度ひっこみ、夕暮れ頃にまた顔を出してきた、ルーテフィアの開口一番がこれであった。


 そのお顔は、にっこにこ。





「だれ、を…………?」



「ユウタの、ことですよぅ! もちろん!」




 ばばーん! とぽんこつオーラな見栄張りしぐさを取って、ルーはそう宣言してくれた……




「“こんな精巧な玩具、生まれてから見たこともなかった……”、とおじいさまもおっしゃってました!



『じむ・すなぃぱぁ・つー』のこと、とってもとっても、自慢しちゃいました♪



 さっきもらったかっこいいゴーレムのおもちゃのことと、いままであそんでもらってる分、

 

 なにより、先日の、ツメキリとおいしいお菓子の分、


 ぜんぶの恩義がある、とのことで!」




「ほー…………?」




 純粋なご厚意によるモノ、ということらしい。

 なので、興味がわいた。




「ボクも、ボクのおうちのみんなも、みんな、ユウタに恩義があるのですっ!

 なので、これはお礼のさいしょなのっ!////

 ボクたちの……ボクからのお礼、受け取ってくれます、よね?」

 

 

「ふぅーうんむ……」



 

 たっぷり、数秒間……いや悩むとかではなく、単純に、言葉がうまく出てこなかったわけだけど、

 

 

「……ぇぇぅ、ふぇ……」「………、、。。。」



 一回両目を瞑っていた俺ちゃん、

 聞こえてきた唸りに片目を開けて見てみると、そこには、俺の言葉を待ちながら、返事が来ないからか、泣きかけに徐々になりそうな、ルーのお顔が。



 あかん、はよ返事しなくては、だ。



……、、。うん。



「よし、行ってみようか」




「! はぃっ♪」





 満面のポンコツオーラでにこにこ笑顔を浮かべた、ルーのやつ。


 何がうれしいかのように……いや、じっさい嬉しそうにしながら、にこにこと笑顔の、ルー。





「ボクのおうちに、ご招待♪」






 そんなこんなで、向かったのであるが…………




 とりあえず、今日ルーにふるまう予定だったカプリコォン…をたくさん入れた大袋を、手に抱えて。




     * * * * *




「おぉぉ……!!!」「ふふーっ、ここが!ボクのおうちの食卓の間なのですっ!」




 通されたのは、重厚なつくりの、食卓の間。



…その前に。

 果たして屋敷の扉を潜る時、

 扉の前のメイドに、一礼でかしづかれる、という体験もしてしまった。



 おーおーおー、今日はやけにしおらしいけえのぉ、銀髪メイドどもよ、

 

 

「ふんっ、そんな安い挑発には乗りませんよ、ちくしょうが…ぉ…お客様。私どもは、あくまでっこの屋敷のメイドなのでっ!」


「本日に関しては、本日の貴方は、正式な招待客、ということなので…」



 と銀髪メイド二人の弁。

 

 

(こうなってくると調子が狂って来るな……)



「もー、いがみ合うのはダメですよっ、メイドたちも……どうされましたか? ユウタ?」



「いや、特段…何にも、」



「ふえ?」



 まあそういう一幕を挟みつつ……



 そうして通されたのは、

 濃厚な、木の香りのする、室内……

 ヨーロピアンというか古風建築というか、その異世界建物の、重厚なその中!


 改めて見てみると、やはり壮観であった…


 食卓の間に通された俺は、果たして、なかなか自分でもワクワクしていたと思う。



 さて、そうすると、なのだったが。

 


 ここまで案内してくれたルーは、


「ちょっとまっててね!!」


 と言って、奥へと引っ込んでいった……

 はてさてなんなのやら……?




 まあそれはともかく、






「ドウジバシ、葡萄酒は、いるか?」




 食前酒、の振る舞い、ということではあった…が…

 酒ですか? いやいや、そんな、自分、アルコールとか、そういうの全然苦手で…………





「……飲まんのか?」




 …………、。。。。





「では、お言葉に甘えて……僭越ながら……」



「うむ、」





 コポポポ…………





「…………、、」




 俺の手に持ったグラス…多少、歪みのようなモノを帯びた形状だ…の中に、メイドの手により、葡萄酒……ワイン、がそそがれた。






 半透明の、紅葡萄酒色の、それ、。






「…………、、、、」





 グビリ、




「……酸っぱい……」




……これは、まるで、……

 ワインビネガーというのは、まあ名前は知ってはいる……実際に味を確かめたことはないけれど。

 しかし笑顔で同じ酒を飲まれているガーンズヴァル爺には申し訳ないので、俺はそれをはっきりと口にはできなかった……




 そんなところに、




「ユウタ、ユウタ、!!」




 食卓の間の入り口から、ルーが帰ってきた。


 何かを持っているようだ。


 そのまま俺のそばにまで来て、

 傍らで、にこにこしている、ルーのやつ。




 なんぞ、? と伺ったところ、





「じゃん!」



「! おおっ、俺ちゃんのあげた、ジムスナイパー2じゃないか、」



 ちっこいルーが、ゼル伝のショタリンクよろしく、

 両手で“ごまだれ~☆”のファンファーレが鳴るがごとくに掲げた、それ……

 


 なんてことはない、こないだあげた、ジムスナイパー2のアクションフィギュアだ。



「えへへ、すっごくかっこいいよね! でね? これがね~……」

 



 ふんふん、とうなずき掛けた、俺…………




 何の気も無く、手で取ろうとしたところ…………




“…………、……”



……――しゅたっ、





「 え゛? 」




 なんと、ルーの手の中のアクションフィギュアが、……動いた。



 アクションフィギュアだから、動くのは当然であろう? ともするだろうが……



 動いた? いや、動作した……のだ。



 動作して動いて、それから、俺の手にへと、飛び乗ってきたのだ。




「うごくように、してみたよっ、?」




「 え゛? 」





 なんやこれ、




……アクションフィギュア、とはいいますが、いいますけど、




 そして俺の手の中に飛び乗ってきた、自身でなにやらをしたという、ルーのジムスナイパー2。


 それが、その右手にもった、小銃ライフル型の狙撃砲……という設定の武器パーツを、

 まるで騎士が地面に剣を突き立てるがごとくに、

 俺のてのひらの柔肉に、銃のその片端側を、下に向けて、突き立てた……


 



〈よろしく、元持ち主……私をルーテフィア(ますたー)さまの元にもたらした人物よ、〉



「え、えぇ、ええ、よろしく…………」




 ピタ、とポーズを取ってした後に、

 そう言いながら、手を差し出してきたジムスナ君に、小指で握手する、俺ちゃん……



 ジムスナ君は、もう片腕で、俺の手のひらに、縦に銃を突き立てながら、である……



……ちょっと地味に痛いんですケド、

 などと細かく突っ込んではいられる場合かどうか。




……自律して、動いて、なんか仕草まで、とってる……





「る、ルー? 俺ちゃんあげたの、れごぉまいんどすっとーぉむ、とかみたいなたっかいおもちゃじゃなくて、

 ただの、ボット魂の、関節が動くだけの、ジムスナイパー2、なんですけど……」


「うん! だからねーっ?」



……



「うごくようにしてみたの!」




「…………、、、、。。。」




 はてさて、これのこの摩訶不思議不可思議の、その手品のタネ……。


「 魔導愛玩。」

 

…との説明を受けた。

 

 

「それだけでわかるかい!?」「「「「「「?」」」」」」



 なのでルーや周りのアヴトリッヒ家の面々に、由来の説明を聞く……ふむふむ、なるほど。

 

 なるほど、聞き終えた。

 

 うむ、大意をまとめるに、だ。……

 なんでも、大昔に人間のせかいのそばで魔王とやらが帝国をやっていた頃に確立された技術てくのろじぃに、“自律機”(オートマタ)というものがあるそうで。


 元来は天界……主な人間種族の信仰する光の神々の住まう場所らしい……の、

 その特級秘伝の聖なる産物として厳粛に扱われていたところを、魔界魔法の術や機械術に長けていて発明好きであったという時の魔王が、なんと目コピでコピー品を発明することに成功してしまった。

 こうして、最初は魔王帝国の特産品として売りに出されたところ、

 ぶちぎれた天界の、入れ知恵とパテントの公開……技術支援もあって、すぐに人類勢力側も模倣品を大量生産……

 

 形態や形式、形状や仕様、もちろん機能というところまで、ものはそれぞれで、大小問わず、ものの種別、扱い方、用途も問わず。

 極限環境での扱いはもとより、広く一般の、建築、土木、観測や調査探索、はたまた人間の身辺生活のお手伝いや補助、さらにはファクトリーマシーンや工業の労働力用途まで。

 一時はあらゆるところに普及し、その定着度は著しいものとなっていったそうなのだという。

 

 だが……発展を続けた結果として、当然、戦争や闘争目的にも用いられ始めた。

 それというのが先の大戦がああまで激化したその理由ということなのであるそうだが、

 

 しかし、自律機にとっての、本当の悲劇はここから始まった……

 対立し対抗して自律機同士の開発競争合戦を行っている間に、どんどんと実戦・最新仕様型の自律機の技術水準というのが高度化・複雑化・肥大化して規模を留めることなく重厚長大に恐竜的進化を遂げていき、

 対立同士が最先端のそれを繰り出し合っていく結果、要求される性能や能力、機能というのは、うなぎ上りに。


 そして、やがて、ある一点が、超えられた。

 

 そうすると……どうなるか。

 この頃にはすでに…でもあるし、ここから…というのも、そうであったという。

 というのも…製造にかかるコストはもちろん、導入・維持・運用に至るまでのおおよそすべてが、費用対効果の率というのが深刻に悪化していて……

 最先端さを維持したまま、改善や改良する余地や余裕というのはすでに無く失われていて、

 ついには、稼働させるために投入される魔力エネルギーやその濃縮燃料というのに対して、

 あまりにも!燃費効率の悪いような、そんな機材ばかりが最前線に投入されるに至ったのだという。

 

 おまけに、省燃費方向の技術が開拓される、というのに、どうも両勢力はあまり目がいかなかったらしい。

 そうして結局のところ、

 有効な省燃費技術の確立と普及がされる前に、この一大バブルは……はじけてしまった。

 

 バブルのはじけ方というのにも、曰くがあった。

 戦争の結果は魔王帝国の敗北という形で幕を閉じたわけだが、

 源泉にあたる普及品用途の原材料部品を生産していた魔王帝国とそれに連なる組織・係累(なんと!両勢力ともに、中身に使う品物は、対して差はなかったというのである…)の崩壊とそれに伴う製法や工場を喪失。

 これにより原材料や素材の供給が著しく困難になって、かつてのような高性能品の、大量普及的な量産製造が非常に困難になった。

 そして、なによりも、燃料に用いられる濃縮魔力素、

 これが、戦時中の負傷・死傷者への蘇生復活治癒魔法用途への供給に対する需要の高まりにより、まずは値段が暴騰。

 戦後は落ち着くかと思いきや、戦争を契機に便利機械品の地上界への普及とともにそれらの需要が生まれて取り合い状態となって相場は落ち着いたり安くなったりするどころか高くなる一方となったのもあって、

 自律機というのは今更動かそうにもどうにも持て余す代物なうえ、

 完全に採算割れになってしまった、ということなのであった。

 

 

 とどめに、である。

 この自律機というのに競合する技術テクノロジィというのに、

 人造亜生命少女……ホムンクルス、これの製造技術というのがあるわけだ。

(ちなみに、こっちのホムンクルスの製造技術の成り立ちについても、自律機とおおよそ同じ経緯であったらしい……魔王優秀すぎだろ……) 


 そう、ホムンクルス。

 タチアナさん…とイリアーナ…というふたりの改めましての自己紹介というのを聞く限り、

 この屋敷のこの銀髪暴力メイドどもも、その同族のひとつずつなのであるらしい。

 

 こちらというのが、戦時中の莫大な需要にこたえる形で、製造方法の革新により、なんとコスト的な価格破壊に成功。

 そうして圧倒的な製造販売価格面での優位を付けられた結果、

 なんと、ホムンクルスの製造導入維持費用に対して、自律機の方のスキームは、もろもろ込みで、コスト高と見なされるようになったのだ。

 これにも、前述の事情がある。

 ホムンクルスはまあ生き物と同じ食料を食べさせていれば生命活動は継続するわけだけども、

 一方の機械的創造物であるところの自律機というのは、動かすのにもメンテナンスするにも、動力源エネルギー…現代地球的にいえば燃料や電力給電の類…を必要とする。

 さらに言えば、ホムンクルス以外にも、移民や難民…

…人類圏側のもさることながら、焼け出された旧魔王帝国の臣民などの…

…人間種以外にも、広義には亜人とくくられる存在たちも含めて、余剰人口やその労働力の流入ということもあって、労働者余りとすらいえる環境が、現代の異世界人類社会においては生まれてしまったとか。


 こうなると、高価で嵩張る上に動かすためのエナジーにも事欠き、スペアやリペアのパーツが入ってこないので、不活性化していくばかりで満足な整備もおぼつかない、即ち稼働率の悪い、もしくは論外な、重厚長大な旧弊な機械物品よりも、

 人権や労働者の権利が極限までディスカウントできるが故の……臨機応変が効くところの、人力マンパワーの都度、集中投入による人海戦術。

 こちらのほうが、よい!…とされてしまって、

 結果は、後者のスキームに、どんどん転換されていった……優先度や必要度、重大性が高いような用途や目的ならなおさらに、そうされていったというのだ。

 

 故に、先の戦争から六十余年…つまり魔王帝国というサプライヤーが喪失してからその年月が経つ今となっては、

 今の人類社会の栄えて賑わっている中心部の世界には、かつての往時の頃の遺構くらいにしか、自律機の存在の痕跡というのは、あまり残っていないのだという…


 以上の、これらの作用の積み重ねにより、かつてのパワフルでたくましい自律機というのは、完全に取得メリットがなくなってしまったのだ。

 ここでもコスト的な優位差というのを、喪失してしまった。

  

  

 

 とはいえ、後に残ったのが塵芥ちりあくたのたぐいの諸行無常ばかり、というわけではない。

 そんなこんなのすったもんだをやっている内に、技術が普及化して定着し、

 今となっては、このように、“実際の労働力に使えないほど、ミニマムで、非力なもので、すぐに魔力切れになって動けなくなるような、そんなものでいいのであれば”……

 ちょっとセンスのある子なら、ルーのようなちびっこでも、

  細工仕込みと魔法術の仕込みを行えば、簡単にできてしまえる、そんな由来があったのだそうだ。

 

 もっとも、ここまで技術ムーブメントが縮退した現代では、

 いまとなっては、ただの魔法の勉強用や錬金術の練習用につかえるのがやっとで、

 嘗てのような花形を飾れる、実用品という立ち位置の座からは、遠くなってしまっているのが現状なのだそうだ……



 まあとっくるめるに、

 要するに、一種の、魔法による使い魔、というやつというそうで、





………………、、、、








 まあそれはともかく、






 ディナーの時間がはじまった






 はじまったのである。





 はじまったので、あるが……






…………、、、、、。。。。。。。









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