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幕間・少しだけ未来にて…(2/6)

今話よりキャラの掛け合いと合流いたします…

ごゆるりと…







 前話から続き、段落はここに移った。





 さて、それは、この物語のヒロインである、

 ルーテフィア・ダルク・アヴトリッヒ、

 その祖父が治める、このアヴトリッヒ開拓領でも

 同様の問題が発生していた……




 由来は大分遡る。



 

 このエルトールの…

…老皇帝、


 フリード・クロームヘルト・エルトール六十三世


……は、


 かつての…


…天空の神々とそれに導かれた西偏世界人類と、

 それに対して、勃興以降、あらゆる機械を生み出し同胞の繁栄のため神々に挑戦し続けた、野心溢れ、そして偉大なる旧デモンズフィール西偏魔王帝国、そしてその魔王たる彼女らのぶちあげた、《大魔繁栄共栄圏構想》、実現したならばどれほどのことになっただろうか今に至るも人類なんぞには全容が想像つかない野望あるそれに参加したか、人類主流と神々になびかなかった諸共……との、全面破局。



 そうして勃発した、あの忌まわしい人魔大戦。


 その折において、勇者として選ばれて神々と精霊と天使からの祝福を受け、赴き魔王を撃破し、

 人類英雄と今では名高い、ガーンズヴァル・ベルク・アヴトリッヒ。


 その現アヴトリッヒ領主の魔王討伐パーティに、その最後期において、儀典などの場で参加していたのが、かくいう、幼き頃のフリードであったのである。



 そんな由来もあり、ガーンズヴァルはフリードに、昔から有形無形の忖度をし続けたのが、この辺邦領の領史でもあった。



 一番最初は、七十年前……アヴトリッヒ領成立時においての、西辺世界人類からガーンズヴァルにもたらされた膨大な恩賞を、

 その一部を、国土の復興再建の為に、という要請で、 エルトール国本土の宮廷府に復興寄進を納めさせた時のこと。

 次に、六十七年前、その寄進は無利子無借金の寄付である、とし、

 利子無しの元額の返済を拒み、その額面をチャラに(無理矢理)させたこと。



 みっつめが、五十年前の、アヴトリッヒ領となってからの最初の地域整備交易路・エリルローズ街道の建設事業に、

 エルトール本国としての資金拠出援助を渋りながらも、

 その独占的徴税権を本国皇帝府に奉納させたこと。


(その徴税権とその利益は、フリードは自身の最初の子供への生誕祝いのプレゼントにした)



 四つめが……これが、いまのセンタリアとの戦闘のその遠因の一つである、


 三十三年前の、アヴトリッヒ領;第四交易路・正式名エリルリア街道整備の折、

 

 そのときは、国歴古いエルトールから各国経済界からの投資を吸収して急成長をし始めた勃興間もない若き国・センタリアの、

 その当時はガーンズヴァル個人の人徳とも相まって

(その頃からセンタリアはエルトールとのいくつかの懸案があったため、両国関係は硬直状態にあったのもあり)

 アヴトリッヒ領とは直接のみ友好関係にあったセンタリア国の、

 アヴトリッヒ領との国際共同開発計画であったのを、

 

 皇帝の勅令で、エルトール本国の銀行口座にあった

 センタリア側のアヴトリッヒ領への投資準備予算資金を

 差し押さえし、

 

 国防上の理由、として、ガーンズヴァルに

 エリルリア街道の経路の強引な変更と修正、

 並びに徴税権の召し上げ、

 さらにはセンタリア側民間及び公務での

 アヴトリッヒ経由の全街道の使用の制限化と、使用時課税の特別権行使による特別追加徴税の実施……



 結局この時の原因が由来で、

…魔王国由来のものを自国で再発明した飛空船により、 搭載する魔導石反重力機関の都合で、短時間の飛行を飛び石状に繰り返すしかできない為、


 その経路沿線と中間地に冷却用の湖水域と整備運用場が必要であったために

 大多数規模の航運艦隊を組織してそれによる大交易大国を夢見て、

 国運を賭けて投資してまでしていた所に、

 条件がすべてそろっているアヴトリッヒ領を経由する……という、センタリアにとっては僥倖で夢の如き、

 ガーンズヴァル直々の発案によるエリルリア街道の開通に参画していたにも関わらず、


 こうして、

 自身の存在する西偏世界東南部域からの、

 西偏世界中央との接続の低難易度化を邪魔されたセンタリアはエルトール中央への敵愾心を強め、


 その一件からじきに直後の、

 エルトール国と、そのアヴトリッヒ領と、対してセンタリア国との、各都度の武力衝突の頻発やそこからエスカレートしていく軍事的緊張がはじまったわけなのであったが……



 これらのすべてを、仕打ちのように、都度、アヴトリッヒのガーンズヴァルにへと振るってきた。

 皇帝フリード。




 それに対して、エルトール所属構成領の一つの、その代表たる国臣にして主君への忠義深いガーンズヴァルは、

 苦しみの声ひとつあげることなく、今までその指図にすべてそのまま、従ってきたのである……









「……という訳なのよ、」



「へー、流石アリエスタはかしこいなー」「ね♪」




 アヴトリッヒ領の、黄金色の森。

 その直中の、勝手口の前にあつらえられたコテージ……ルーのおうち……の中……


 

 そこまで説明した、アリエスタ・リィリン・ハーレンヴィル……という少女に、


 その目前に、いままで律儀な講衆となっていた、

 この作品の主人公……道寺橋ゆうた、と、もう一人の主人公にして、ヒロインのルーテフィア・ダルク・アヴトリッヒ。

 そのふたりがひとりづつ、仲良く横にすわり合って、

 アリエスタの授業を聞いていた、という案配である。





「……~~~~。。、、――っ!」





 それはともかく……

 特に!やる気の無いそのゆうたの生返事を聞いた、そのアリエスタは、憤然たるや、という仕草を我慢ならずに噴出させ、






「ルー、さま、は、ともかく、! そこの、ドウジバシッ!

 ちったあ現状把握に脳をつかいなさい!!!」




「っていわれてもなぁ」「うん、」





 キー! と炸裂し噴火するアリエッタさんである……とゆうたは内心で毒づきつつ。


 それを見越してか知らずか、

 アリエスタはさらに怒りのボルテージを上げて、

 そのユウタにむかい、


……びしっ!

 と、指を刺して向けると、




「ルーさまが、そこのドウジバシを甘やかしてるから、こうまで怠惰になるのですよ?!

 そこを! すこし! なんとか! ……」



「アリエスタさん?」




 ゆうたをびし! ばし! と指刺しながら、

 そうして言い募ったアリエスタのそれを、

 ルーテフィアが、そう……優しく、声を掛けた。



 ルーは、釈迦かバルカン星人のような仕草を利き腕で執りつつ、





「!! る、ルーさま……!」




 アリエスタは、 

 なんやかんやあって、ルーにぞっこんの少女である。

 年齢は、ルーよりも二個上、である。

 ルーを男性という認識でいたころ、このルーに恋をした。

 それが、幼少の頃のことである……




 この場の人間……いや、この世界の中で極限られた者しかいない、“ルーの秘密を知る者”の、その一人に、ついこないだ、なってしまった。



 それであっても、このアリエスタという少女の、ルーへの恋慕は続いている。



 華やぐ幻景が、一瞬……頭の中の花園畑にトリップしたアリエスタの回りに、爛漫と……百花繚乱と咲き誇ったのが、

 いまこの瞬間の事であった。




 アリエスタは蕩けていた…………






 なのであるが、





「アリエスタさん?」



「はぃぃ……・・・。。。。。」




 ルーテフィアは素敵なにこやか笑顔を、一切崩さず、




「──ユウタはボクの家臣ですよ?

 親愛なるアリエスタさん、ボクに敬意を払うならば。

 まず第一に、

 “ボクの、ユウタ”には……言葉を選んで、謹んでくださいね?」



「あぁあん!?」




        ショック!

 ルーは、その対艦ミサイルの直撃並の威力の、

 えぐるかのような言葉を投げ掛けて、

 その結果、令嬢戦艦・アリエスタ号は撃沈沈没した。



(まったく。ボクのユウタへの色目とスキンシップは、そう簡単にはさせませんよ?

 ユウタは、ボクのもの、なのですから……)




 嗚呼悲しいことに、アリエスタからの恋慕の思いは一方通行であった。……とする、ルーである。




“フラグつぶし”に余念がない、ルーテフィアである。

 ルーは一人で昏い笑顔を、暗黒微笑を心で浮かべつつ……





(わ、わたし、わたくしだって、ルーさまの家臣なのにぃぃぃぃ……、、、、、……――)




 両の目の端からは涙を降り散らしながらであったが、 アリエスタのその表情は、悦楽と恍惚の笑顔、であった…………





「(……ふぅ……まったく、このめすぶため。)」



「ルーよ、俺ちゃんにはよくわからん鞘当てだが、言葉に出てるぞ……」





 まあ、それはともかく、どうして今その話を?

 と、ゆうた。





「うちらの商会が! もろに! 割を食わされたのよ!」




 おぉう、とゆうたはたじろいだ……

 そんなゆうたにだけ当たりの圧が強い、空色髪の少女の、、


 恍惚から復帰した、

 アリエスタのその語気と気迫に、である。

 



「おとうさまも青色吐息なのだわ!


 我がハーレンヴィル商会の商会主である、わたしのおとうさま、が……なのですわ!



 確かに、この領ではもともと、かねてから仕事の不足、という問題はありましたの。

 


 だ、け、ど、!

 やみくもに集めた素人に、やみくもに作った工場で労務をさせても、

 

 経験も、ましてや教育と組み立ての図説のポンチ絵の冊子すら、

 そもそも、何をつくるか、の指示と計画と展望がやみくもででたらめであったら、用意できる筈がないのです!



 わがエルトール軍が装備している兵器類や装備品も、 長年にわたり、国外の多国籍企業や軍需複合体から逐次的かつやみくもに買い集めた、種類ばかりがあって統一も規格化も中途半端な、おまけに旧式の、そんなシロモノばかり!


 それの補充を、消耗分損失分ならびに専用の消耗品類の補填補給を、

 その元々のオリジナルを作った工業国たちより基礎工業力の劣る、わがエルトールの、その零細ができると思いますか?!

 多品種少量生産、とはいいますけども、

 そんなことができるのは、よっぽど優れた町工場だけ。



 元々の製造元の国外メーカーに発注して確保するのにも、

 センタリアの外交的横槍で、そのメーカーどもは

 おなじ物品ならセンタリアに優先供給し始めてるし、

 確保に成功しても、

 なにより!この広大なアリスティリーヴの世界だと、

 そもそも届くのに時間がかかりすぎるのだわ…!



 そんなさなかにあって、

 ガーンズヴァルさまはそんなこの国の宮廷部の口車に、またしても! 乗ってしまわれて!



 そんな風で作った、作らざるを得なかった工場を、なんとか稼働させて、当座の利益をなんとか確保しないと……

 

 

 このままじゃあ、ガーンズヴァルさまとうちの商会は

 一蓮托生なのだわ!!!」





 そこまで噴火したアリエスタである。





「まあ、それを話し合う、ということで今日はあつまったんだもんな……」





 ということが、本日のこの三人の議題であった。





……、、、、、


………………、、、、、





「いっそのこと、全部シミターの製造工場にするとか……はどうだろう?」「うん、」



「ところがそれが、なのだわ……」





……沈黙が三人を包んだ。





 しばらくして、アリエスタが口を開き、




「ルーさまの開発した、シミターや新型魔導砲に、その他の魔導兵器。それらの生産工場と生産ラインは、現状の最大規模のペースを維持するのが、現状、原料の調合の都合で、今の段階では手一杯だし、

 あと、工員たちへの教育養成のペースが……」




「うぅむ……」




 ゆうたが唸った。




「ふーむ、」




 ルーが、手元のシミターの模型を弄びながら、発言し、




「余った分は、順次、後方の部隊にも交付していけばいいよね?」





「まあな、しかし、それも、レイバーの穴……シミターの搭乗員の養成学校、そこの受け入れの容量ペイロードが、現状で満杯な状態だし……」



 ゆうたは瞑目した後、卓の上にあった、自分の分のシミター模型をさわりはじめて、



「一番最初にシミターの乗りこなし方を覚えた、教育校の第一期生が、前線から帰ってきたら、分校の設置もできるんだがなあ……」




 再び、三人は黙った。




「シミターの生産自体は、順調に行ってるが……」




 ……三人がこうも沈黙するのには、理由があった。










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