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幕間・少しだけ未来にて…(1/6)


^^^^^^^^^^^^









……物語のすこしだけ未来を覗いてみよう。




《観測者》の視点から……

 現在より一ヶ月半前に勃発した

 センタリアとエルトールとの戦争は、

 互いの被害累積による戦闘可能戦力の消滅、ないしは激減と消耗という結果により、


 わずか一週間で、主立った戦闘は中断せざるを得なくなった。

 そうして、

 一度目の停戦と、幾度かの外交的折衝が図られることになった。


 まず、

 現代的・ピンポイント兵器型、スマート兵器型、

 以外の、

 重砲支援用途・通常級ブラストログ以上の規模の、

 旧式大規模ブラストログや大型弾道ブラストログの、使用の一時凍結、

 それらに搭載用の、特殊弾頭の使用の全面的自粛。

 戦略級破局的魔法の使用の厳禁化、などのいくつかの合議を結んだ《条約》の締結とその合意の後、


 現在は互いの正面切っての大規模開戦は双方が避ける判断を執っており、


 そしてその現在今は、

 互いの領土本土の間に太く存在していた、領邦国家や都市国家、独立領、公国、領土未確定地帯地域、


 それら《ゾーン》を小中規模での小競り合いで取り合い、

 互いが、“仕度の終わった後の”……その時の侵攻経路のその確保の為と、

 おのれらの領土勢力の増勢に、少しでもいそしむ局面であった。



 開戦直後の、

 大威力弾頭搭載型弾道ブラストログの多数連射斉射飛来の投げ合いによって、

 エルトールとセンタリアは、双方、過酷なダメージを負うに至っていた。


 だが……それぞれ、前線が遠くなった内地においては、現在のところ、いったんの平穏が訪れてもいた。


 戦いの日々はいったん終わったが、しかし、日常の生活というのは、生き残った者たちにはそのまま続く……



 果たして、戦いの一区切りがついた後、

 エルトール国と、アヴトリッヒ領では“だぶつき”がにわかに問題となった。



 労働資源とその需要と、需給の問題が絡み合ったこの難題は、


 基本、成年の男性たちで大部分が組織されていた開戦前のエルトール常備軍が、開戦した戦争で、

 その三割が壊乱し、破滅し、損なわれ、

 現在再生中であるが、著しいダメージを負ってしまったことにその端は発している。


 開戦冒頭の、弾道ブラストログの飛来と着弾により、いくつもの軍事用の砦や城塞はもちろん、

 多くの……市街や街や町、村々にも、

 無数のグラウンド・ゼロが穿たれ、

 被害と悲劇は無視できない程に及んだ。

 市街・穀倉地問わず直撃したこれらにより、

 エルトールの国土にも深く及んだこのダメージは

 民草と産業のそれらにも幅寄せが及んだ……



 しかるに、以下のことが言えた。

 戦争で壊乱状態となって、目下再編成の過程にあるところのエルトール国防軍とその各方面隊は、

 虎の子の少女婦人魔法隊も含む、魔導科神聖部隊の第一線への投入配置がエルトール皇帝の指示によって、決定。予告された段階に入っていた。

 それから、予備役と、国の各地域の予備軍組織からの抽出と、

 教育錬成中だった訓練過程の隊員を、即座に部隊編入と配置に至らせた。

 

 軍の正規に属する範疇にあるそれら兵員資源の振り分けがそうされた。

……直に遠くない第二の熱戦に備えて、可能な限りの時間の早さと素早さと身軽さを持って、これらの実行はなされていた。

 だがここまでの戦闘で失った人的資源の枯渇は、なおのこと、深刻であった。 


 ……エルトール国首脳部は、第二段階の決断をした。

 長期に及ぶ不景気により、戦争前からだぶつき気味であった、国内の副人材層の投入である。

 従来の徴募対象の基準ならば、優先職業技能者、または二線級……とされた、すなわちの所の、冒険者、各ギルドの所属者の内の適性がある者。国内の各産業の予備的人員。

 従来基準での徴募年齢上限を超えていた壮年人材の、積極的徴募の開始である。


 さらにそれは第三線以下の層まで及び、先述のその綱領における適正外の人材をもその範疇に含まれたのはそうであったし、

 さらに、

 亜人、婦人女性であったり、年少者……までが

 配置に当たっては慎重な階層段落が設けられたうえで、

 その積極的徴募の対象とされたのである。



 彼ら彼女ら人員とその人材は国内の指定先にへと速やかな割り振りが行われた。


 国家の総動員体制の設布とその始動であった。




……しかし、ここで問題が発生する。

 

 まず、損耗して消耗した、各種兵器や軍需品の生産が、その目下の所の目的として命令通達がされた。

 人材を割り振られた軍需会社と産業界によるその稼働生産は、既存のエルトール国工業地帯の各工場施設に加え、

 専門外の民需向け民間…の会社企業や有名無名問わずの各商会、各産業ギルドにも下請けとして発注がなされ、孫請け以下まで何段階にも序列的に繰り下がられたこれにより、

 新規に設置、建築建造された新規施設のモノが

 順次開設され稼働可能とされていったものの、

 

 肝心の“つくるもの”が、

 かつての魔王帝国でもあるまいし、

 この西偏世界のほとんどの国家よりかは相当程度マシではあったものの、

 このエルトールの低弱な工業力では、

 開戦前から専門に稼働をしていた特定の重規模工場ならばともかく、

 

 ないよりはマシ、粗製濫造、付け焼き刃のノコギリ刃……

……的に設けられた、


 中小規模の、そんな、工場としての生産能力と能率と生産可能物品が低規格極まる、

 非生産的ですらある、そうした戦時急造工場では、まるでメリットがもたらせられなかった……のである。


 つくれるものが、軽工業以下の、家庭内手工業以下の、たかだか以下の、知れたモノであったのだ! 



 元々の産業の熟練した工員は、

 戦線に招集されたか、或いは影響力の強い財閥企業の優等工場に根こそぎ持って行かれてしまい、


 

 後に残るは、河原のつぶて並にゴロゴロと転がるように設けられた、

 二束三文の、箱だけがあるようなだけの、名前だけの小規模零細工場の、場所と地域を問わず立てられたその建ち並び、林立と、

 その出来損ないのサンドウィッチの具材として押し込まれた、全くの経験無しの人材のみ。

 工員相当として充当された彼ら彼女らのノウハウと経験と基礎的素養と、それ以前の教育育成の欠如が、問題と言えたし、あるいはそれ以前のはるかさかのぼった先のもとの元、の所まで、

 問題の根因と病巣は、ある……ということでもあった。



 一応、しばらくの間、国を挙げての、

 挙国一致体勢。

 これを主張するべく、


 エルトール皇帝は勅令を出し、

 無数に立ち並んだそれら工場群を、一斉に稼働させてみた。




 一週間でボロが出て、二週間目には沈没した。



 生産製造の為に消費された資源と物資と手間と時間はただの浪費となり、

 

 排出されたのは、ガラクタ以下のゴミだらけ。




 検品というのがいかに偉大な発明であるか!




 工員として頑張った彼ら彼女ら労働役務者……労務者……たちは、

 みなことごとく、労働災害や労働負傷の憂き目を浴びて、



 そして結局、三、四週間め、の今に至っては、工場群は諸共、そのほとんどすべてが、動員には停止の号令がかかり、暇の状態となる始末。


 


 重厚長大を希図したにもかかわらず、実際の得られた結果というのは、そのようなものであった……




 とかく、工員として集められた彼ら彼女らには、

 永久の如き、暇、の時間が、のしかかるように襲っていた……一人の寸分も残さず。




 やることがなかった……のである。






 同様の問題はセンタリアでも時同じくして勃発していた。

 が、

 しかし、センタリアは大規模産業化に戦争以前からいち早く挑戦していた国でもあり、

 なおかつ、このエルトールの連中よりも、“もっと、うまく”事態の対応を取れていたのだが……






 会議は躍り、話はつづく。




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