─鮮血の風刃─(4/4)
日刊連続投稿中でございます…
書き溜めが二話分増えました…
ごゆるりと…
^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「ほぅ……テクターとやらは、なかなか扱いやすいものだな。流石、我の孫の、入魂作よの…………、、」
自分専用にあつらえてくれた、孫のルーテフィア特製の、その倍力甲冑服の、その感触を確かめながら。
ガーンズヴァルは、目前で戦慄しているファルコン達の前で……
「……右に、いち、左に、に、中央に、指揮車が、いち…………」
……標定を、誰を一足先に地獄に放り込んでいくかの、その値踏みを、刻んでいく……
「ファルコンが、ファルコンがふたつも食われた!」
かまわん、やってめぇ!
キルしてやればいい! ゴーキル!ゴーキル!
「
ハン!
このセラミック・ハルバードなら、こんな軽装の人間なぞぉ!!!!」
たたみかけるかの一気呵成が、いままさに激動した!
こうでもないと、もはや戦意は保っていられなかったのでもあるが。
センタリア兵士の搭乗員らにより、始動させたネクロアーマー各機が、駆動を一斉に開始した……ガーンズヴァルへと向かい。
前進を行い……そうして、一瞬ではないが、二瞬か三瞬めかには、ガーンズヴァルへと肉薄したのだ。
ぎゃぁあがん!
「 セラミック斧が、割れた……――?! 」
がああ、ぎゃああああああっ!!!!!!!!?
そうして、また一機、食われた。……ファルコンが。
「FUCK!」
舌打ちをしながら、柔軟に対処をしようとした、この一機。
「アァガァ!?」
その一機もまた、次の瞬間には、食われた。
「こぉのぉお?!」
またもう一体のファルコンが、仕掛けてきた!
「?! アッ!?」
その足間の間を……鉤爪ロープを投げて、そして射出して、、戻した……
跳躍したガーンズヴァルは、次の瞬間、ブルバックのゼンマイおもちゃのように、挑んできたファルコンの股の間をすり抜けた。
その一連の行為だけをとったガーンズヴァルによって、かわされた!
この鉤爪は、勇者時代からの愛用品である。
鉤爪の先にロケットモーターが仕込まれており、
使用者の腰のコントローラーのアナログスティックで射出軌道を自由に操作可能。
漏れなくこれも、かつての人魔大戦の折、天上の神々から授けられた、特別品である。
もう一回、ガーンズヴァルは、そのロープを放って、射出した。
そして、着地し……
その鉤爪のロープで、
このガーンズヴァルに向って転回しかけた、ネクロアーマーの一体にへと、その切っ先を、投げ掛けた。
的確にその左脚部間接にへと絡まったその鉤爪は
ネクロアーマーの動きを封じ、
身動きの取れなくなり、もんどり打ったネクロアーマーは、やがて転倒。
「な、なんだ、なんだ、なにがおきているのだ?!」
ネクロアーマーの搭乗員が混乱している内に、
その暴露された背面部にへと、駆けだしたガーンズヴァルは辿り着き、着地。
そのガーンズヴァルが、転倒したネクロアーマーの背部から、
その内部搭乗員の首筋根元を掻き斬るように、
かつての人魔大戦の折に神々から賜った…神々の超常で創られた、単分子カッターの、…聖剣・フェストールドルマーと呼ばれたチェーンソーを、挿入……。
「あがあがあg、あっ!あっアッ!お、おがあざぁ……!?」
バリバリバリ!……――と、その息の根を、絶った。
年若く、断末魔の叫びを残したその搭乗員のセンタリア兵士は、そうして絶命した。
「……キサマらにも愛する肉親がおったろうにな。
ならば、なぜその慈愛を持った人間は、こうも血を求め合うのだろうかのう……」
「 ア、あ、ぁ…………」
この場のすべてのものへ、戦慄がもたらされていた
ファルコン部隊は半壊して、今、後続の屍甲化部隊が到着した所なのだが…
…皆、一様に、戦慄している。
いま、このネクロアーマー海兵隊・海兵屍甲化歩兵A中隊の進行は停まり、
その搭乗員たちは、全員、いまこの自分たちの目の前の惨劇と、それをもたらしたこの老英雄に、恐怖するしかなかった。
ここまで、五人分の血を、ガーンズヴァルは浴びた。
チェーンソーのエンジンの脈高い音が、どく、どく、どく……と、心臓の鼓動の高鳴りかのように、
光景のなかで低く響く……
いのちをうしなったネクロアーマーから噴出する搭乗者だったものの血とエキスが、その脈動にあわせて、どくどくと脈打ちをおこして、こぼれ出たそれが、裂かれ破かれた鎧の狭間から、流れ落ちる……
生光りする紅黒い、どす黒い、それ。
ガーンズヴァルの目は、
眼光の光りが、まるで点っているかのようだった。
そして、血が染みこんだガーンズヴァルの顔が、悪鬼の様にゆがんで……そして、嗤った。
「この我の、二つ名は……“風刃のガーンズヴァル”と申す。」
「……さぁ、諸共滅ぼしてくれよう、」
死神があらわれていた。
……――そうして、血の旋風が、巻き上がった――……
すべてが終わったのは、それから三十分後のことである。
「……ふむ、これであらかたか……」
「ガーンズヴァルさま、敵の正面は前進中です。
負傷者の救出と蘇生が終わった後は、後退しましょう。」
「うむ、判った。」
応援に駆け付けたエルトール軍の面々が、
負傷したり死傷した冒険者たちや兵員たちの、救出や救命……蘇生……などを、的確にこなしていく。
「………………、」
撃破されたG型ネクロアーマーの残骸たちが、
目の前の光景を埋め尽くしていた……
いや?その言い方はやや正確では無い。
ああ、自らが撃破した。
そのすべてを、だ。
「……我が細君直々のの、この特別のマントは、さすがよの…………」
ぱっ、ぱっ、と、マントに付いた埃と煤を払おうとする。
……血糊が、べったり、と手のひらについた。
「…………………………」
そこに、エルトール軍の現場責任者が歩いてきて、現れた。
「ああ! ここにおられましたか、ガーンズヴァルどの。
いやぁまったく、本当にたまげた! まさか、こんな大戦果を上げになさるとは、いやいや本当に、もう、ほんと……」
「 き さ ま ァ! 」
烈火の如く怒りを露わにして、ガーンズヴァルは豹変した。
「なぜ、非戦闘員の避難が出来てないのだ!」
「そ、その者らは腕に自信があると、自ら志願してこの防衛戦闘に参加した、この市の冒険者の若者たちで……」
「若手の冒険者だと? 子供ではないか!」
侃々諤々が、しばらく続く……
(我を責任者とし、これらの不始末も、死なれるかいきのこるかしたら、押しつける、その腹つもり……だろうよの、)
……――ぁ……
「ぬ?」
崩落しかかった市街の建物から、声が聞こえた。
「が、ん……ズヴァル……さま…………」
見ると、吹き飛んだ半身はすでに大部分が結合しており、そうして見ているうちに、細かい部分の回復と治癒も、瞬く間に完了したのがこの時のことであった。
「ふむ……天界仙・第七八式治癒術、か……」
自分たちが現役のころより、この頃は遙かに、治癒や復活も、簡単で副作用も無く、効果がすばらしくなっていると聞く。
すでに不老不死の域に事実上達しているその事に、
近頃は生命を大事にしない若者が! などと新聞で云々と言われていたのは、はたしてどれほど前のことだったろう?
(我なんぞ、自分の生まれ故郷の村の回りで、七百回は魔物に転がされた、というのは、もう昔話よの……)
そう、遠い昔の思い出と記憶を、ガーンズヴァルは回述した。
(……生き延びる、か。)
修羅のようになった、自分であっても?
(細君……ルーやよ。我にはほかの家族も、いる……)
この先も、絶望的な状況が続くのは確定している。
……おそらくは、自分は生きては帰れないだろう。
しかし、それでも、そのことをおもいだせたなら、
(帰る場所を、守るために、な……)
「みんな、もう蘇れた?」
「あぁ、まったく、酷い目にあった……」
「貴殿等、少しは命を大事にしなさい…」
「ガーンズヴァルさま!」
こうして穏当に驚かれたのは、久々ぶりか。
「私たちだって、無策で戦っているわけではありません。ひどいように死んでも、あらかじめ仕込んでおいた蘇生復活の呪文の仕掛けで、なんど死んでも蘇って戦えるようにしてたんですから!」
「御主、名前は?」
「! サーシャ、っていいます!!」
老英雄からのその質問へ
ぱぁ、と顔を輝かせたその少女に、ガーンズヴァルは嘆息するしかなかった……