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―鮮血の風刃―(3/4)

日刊連続更新中でございます…

あと、九話分ございます…

みなさま、ごゆるりと…





挿絵(By みてみん)




「各機、近接戦に切り替えろ!」





「白兵戦! 白兵戦の用意!」





 破壊される瞬間、まるで、


 ヴゥゥゥゥゥンン……


 という、不気味な怪音が轟くのが、ファルコンの隊員にとっての、まずもっての恐怖の一つであった。




 前衛の三機と後衛の一機にまで、その被害が出たところで、、


 ファルコン隊は各自の判断で、残骸となったクロスボウの残滓は放り捨てて、

 マウントラック……武装携行ハードポイントから、格闘戦、白兵戦用の、獲物……ハルバードを、抜刀。





 超硬セラミック製の戦斧だ。








「全機、全周囲に警戒!」




「ちかよってきたら、ぶちころせぇ!」




 こうして、ファルコン部隊は、相手の目的通りのまま、肉薄戦闘に持ち込まれた……




……鳥瞰で見ると、上空からは、このファルコンたちは、

 市街の道路の上で、一つのカタマリ状に、寄り集まりつつあった。




 まるで、肉団子として捏ねられるかのように。





「チクショウ、ちくしょう、なんなんだ、いったいやつは……なんなんだ?!」





 これでは、この先に存在する、エルトール軍の前線重要陣地、そこへの殴り込みは、すこし考え直す必要がある……

 後方の前線デポにまで下がって、一端、武器と弾薬の補給を。



 これでは、ミッションキルもいいところだ……




……という譫言を、ファルコン隊のリーダーであるファルコン1はしていたわけだが……





 たっ、……ぎゅぅん、





「……――潜り込まれた?!」





 この瞬間、ついに老人は動いた。



 ほどよく下ごしらえが出来たので。摂食してしまう時間とする考えなのであった……




 調理はほぼほぼ完了していた。




 できあがった、その肉団子……もとい、丸め込んだ、そのファルコン部隊の隊形。



 それへ、貫くかのように、一文字に、“刺す”。





「このぉ、こんなやつ、近づけば、(キル)してや……うわぁあぁ?!」





『ぎゃり、ぶぎゃ、がり、ぎゃぶ、ぶぎゃり、ぶぎゃ、』






「あ゛っ、あぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛………………」






 おぞましい音響の到来に、ファルコン隊の面子は全員、身の毛がよだつ瞬間をもたらされていた……



 最初の餌食になったのは、ファルコン隊機六番機の、ファルコン6であった。




 先ほどのエルフの少女を射爆した本人の彼は、

 機体の股関節部とその背後部位を一文字に鋭斬されて、その中の搭乗者本人も、おそらくは惨いことに機内でなっているだろう、その様な現象が、






 わずか一瞬で。





 もたらされた……


 






「……!……」







 そして、老人が、ファルコン隊の間際にへと、現れていた。




 G型のネクロアーマーのマシンを切断したことで、その躯はオイルエキスの液体を浴びて、液にまみれている……が、




 なんだあれは。




 ギュゥン、ぎゅぅん、という、エンジンとそれの駆動音が……鳴動する。





 鉤爪のロープの先端に、何かの機械が取り付けられていた……


 ……あれは、先ほど老人が手に持っていた、なにかの機械だ。



 なにか。そのなにかは、まるで、……



 その機械が、生け贄の血肉で目覚めたかのように……“変形した”。



 地面に突き立っていたそれに、老人が、厳かな歩みで、その前に立った。




 そして、老人の手にへと、握られた……――





 安全状態から射突モードを経て、ついに、可動状態に、変形がなされたのだ…………





 秘められていた凶暴さが、いままさに、抜き身になったかのような、その光景であった。





「あ、あれは……」





 ……“チェーンソー”?






「こ、このっ……」





 ふたたび、ダッシュで、老人は駆け付けてきた……






「カーモン、ベイビー!」




 

 相手に執ったのは、この怪奇現象の直中であっても自分のペースを崩していない、ファルコン4であった。




「テヤァ!」“!”





 ハルバードの一閃!

 しかし、老人には、かすめるようでいて、しかし、“当たっていない”。

 




「エィィ!」“……”




 ハルバードの、振り下ろし!


 しかし、これも、命中は、しなかった。







「ネクロアーマーには、その程度の火力など!」





 そして、老人の反撃がはじまった。

 繰り出される、チェーンソーの一閃!

 

 だが、ファルコン4は、特に防御らしい防御はしなかった。




 何故か?





「全身がアトラス鉄の肉薄鎧で被われているのでなぁ!!!」




 そう。冷静に考えれば、こんな、人間に扱えるサイズの武器で、この頑強な防御力のG型を、仕留められることはないだろうし、あまつさえ、損害を被るなど!



 そう、通常の、常識で考えたなら……



 むしろそれよりも、ファルコン4は、この老人が、先ほどファルコン6を撃破したのは、このチェーンソーとは別の手段ではないか? と考えていたのである、が……




(魔法剣士だと?! 魔法剣士……魔術を剣に宿して振るう、最強の剣士。

 

 だが、それは、それは……おれがガキの頃のヒーローだった、あの人以外には?!)




 そうしている内に……、“懐に、飛び込まれた”






「!?

 なんだぁ! こいつは……――」




 ヂュィィイイン!!!!……――という騒音が、

 この刹那に、けたたましく迸った。







「 あ、あ、ぁ、・ 。 」






 が、ぎゃぁあぁぁぁ?!





……――悲鳴と絶叫を轟かせたファルコン4に、

 この場のファルコン隊の全員は、戦慄した。





 貫通し薄肉鎧を食い破った、そのチェーンソーの刃によって、

 内部搭乗員のその男は、ズタズタな、

 肉のミンチに急速に再生変化がなされた。



 コクピットの中は血と肉片の噴流に噴射散逸して汚され、

 それはチェーンソーの刃が完全にパイロットの男の肉体をもう元戻りできなくさせるまで続いた。





……――鮮血を浴びた、老人が、その刃を引き離した。





 そ、そうだ、グフっ、ごふっ、ふ……


 おもいだしたぞ、


 おまえ、おまえは……貴方は……そう、貴方のお名前は……






 肉体を引き裂かれたファルコン4が、断末魔の言葉でそれを断定した。






 なんだあれは……騎士?!






 いや、それ以上の存在だ。






「勇者、勇者だ。英雄ガーンズヴァル、人類の勇者、英雄と謳われた男!!」




 

 それが、ファルコン4の、最期の言葉となった。






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