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―鮮血の風刃―(2/4)

連続更新二日目でございます

あと10日分ございますので、よろしくお願いいたします…

^^^^^^^^^^^^^^^^^








「ガリウス要塞の本陣までは、あと何キールだぁ?」



「6キールだぁ! ヒャァ、たまんねぇぜ!!」






 ファルコン部隊・ネクロアーマー隊のその戦意は旺盛であった。




 なにせ、目の前に現れたのは、人間が、ひとり。




 それも、なにやら見慣れない格好をしているということを差し引いても、油断と増長に耽溺しても、何も問題はなかろうという、そんな低脅威度の目標と見受けられた。


 なにせ、相手は老人の男であったのだから!





“……諸君等、”




「!?」




 しかし、





“諸君等……に告ぐ。いまならば、まだ退さがることができる。おとなしく、撤退せよ。”




 聞こえてきたのは、老人の声。……――





「拡声魔法か……、まったく脅かさせてくれやがる」




「ジジイ! おむつ履いてからきやがれぇ!」





 同じく拡声魔法で、ファルコンの一機が、そう嘲笑を飛ばす。




 対する老人は、まったくの不動であった。


 人間の全高の、その三倍以上あるネクロアーマーGタイプの全高とその巨躯を前にして、その集団部隊を前にして、

 ありえないことに、

 動じる、ということを忘れてきたかのようですらあった。


 


 今時、時代遅れな外観と出で立ちであったのもそうであった。



……直喩的に言えば、かつての騎士か、冒険者の服装でよく見られた、そんな装いである。



 マントと、腰には鉤爪ロープ、

 見慣れない型?あるいは自作の、

 全身の倍力甲冑の一種だろうが……と、それから、手に持たれた……あれはなんだ?



……――とにかく、剣といえないような、でも、それより遙かに、無骨で、凶悪さを秘めているような、その外観。


 そんな獲物を、片手に、携えている…………――





“いまならば、まだ、撤退できよう……なぜならば、”




「ファルコンよりファルコンへ、ありゃあ何の大道芸だ?」



「さぁな、問題ねぇ、まるごと、のし焼き(プレス・ステーキ)にしてやるぜ!」





“……我は、手加減が苦手でな……”






 たっ、





「…!?」





 次の瞬間、老人は走り出してきた……ネクロアーマーのファルコン隊へ、その正面へと。




 

……――真っ向から。





「なんだぁ、自殺願望者か!」



 

 そう悪態を吐いたファルコンのG型ネクロアーマーの一機が、クロスボウによる、射撃を見舞おうとして……





……!……





 たっ、……――たっ、





‥…――…‥





「なにぃ?!」





 その瞬間、驚愕にファルコンたちは染まった。





「回避するだと?! この距離での、この高初速クロスボウの矢弾を?!」





――状況は転がり始めた……――






「偶然のはずはねぇ!この、二発目でッ」




 ガッ――……




 ザン!




「!?」




 もっと訳のわからないことが、ファルコン隊たちの前で起きた。


 ……放たれた矢が、空中で、“斬られた”。



 

 いったい、

 老人は、なんの武器を使っているのだろうか。

 どのような、武装を……?



 だが、そのことを冷静に考察し分析できる余裕は、今のファルコンたちには全員、残されていなかった……


 


「各機、弾種選択、焼夷榴弾!」



「グレネェドを蒔けるやつは蒔いちまえ、アイツをぶっころせ!」




 ファルコン1よりのその指示によって、ファルコン部隊の各機は、速やかにマガジンを、黄色色のストライプが巻かれた、焼夷榴弾……のモノに、換装した。



 続いて、キャニスター・グレネィドの、徒手による、投擲!




 まともに当たろうモノなら、並の人間はミンチよりも酷いことになるシロモノだ。




……――だが……――




「なっ……」





「対弾・装甲マントだと?! そんな貴重品を?!」




 そのとき老人は、跳ねた。

 駆け抜けるさなかに、身を丸めて、翻したマントで、 自身の姿のシルエットにかぶせておおうと……



 なんと、この老人は、そのキャニスター弾の散片を、防御してのけていた!




「 ぐ、グレネェドが!?」




 センタリアのファルコン隊の兵士が驚愕するのも、無理はない。


 装甲マント……地上界の人間には未だ低級品しか作れない“はずの”、天上の神々たちがもたらした、超常の産品であったはずだった。



 かつての大戦で用いられたのはあらかた耐久寿命を超して只の布きれに成り下がったはずであるし、

 第一、それ以降には、人間同士の戦争を恐れた神々によって、新規分の地上界への恩賜は、なかったはずである……が、



 第一、それを有しているのは……それの着用がかつての大戦で許されていたのは!






……そして……





……たっ、


  たたっ――





「なんだ、こいつは?!」





 老人は、そのとき跳躍した。



 しかも、ただの跳躍ではない。



 一瞬で、市街路の中央から、その側面の建物の壁まで、ひとっとびで姿を移していたのだ。




 そして、もう一度跳躍……跳ねた。



 すると、こんどは道路をはさんだ、そのもう反対側の建物の壁へと、位置は瞬間的に変化していた。




 そうして、道を挟んで、上空……鳥瞰から見るとギザギザの軌道をとりながら、三、四跳躍めには、ファルコン隊の中央部分に出現できそうな位置まで、老人は位置を移し続けていた。




 まるで、超人による曲芸か、白昼夢を見ているかのようであった。




「身体強化魔法か?!

 ベィビー、

 気をつけろ、やつはエースだ!」





「 全周警戒!!」





 老人とファルコン部隊との交戦は、こうして始まった……




……そして、次の刹那、





…………――!!!……――





「なっ?!」「うぉ!?」





 その高速でジグザグに飛び続ける、老人……


 から、何かが打ち出された。




 ドウゥン、ドゥウン、ドルルルルウル……


 という、エンジンのエクゾーストを、高鳴らせながら。





 すると、怪奇現象はじきに起こった。


 ファルコン隊の方にである。




 何かが擦過するたび……手持ちのクロスボウが、切り裂かれて、破壊されていったのだ!






「なんだぁ!? これは!?」





 ファルコンたちの驚愕も、さることべからず……である







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