4(4/8)-ぷろろーぐ-
###4(4/8)-ぷろろーぐ-
はてな? おまえたち二人の関係性はなんだ? となったであろう。
ごしゅじんさま!とは云ったが、生憎とも、俺ちゃんは男で、美少女のメイドさんではないのでもあるし。
んじゃあなんだ、って、それを説明するのには、まず順序が要る。
俺は成人済みで、こいつについては、ぱっとみは外国人の美少女?美ショタ?の、 まあ元服の儀は済ませてはいるわけなのだが。
まあ俺も、果たして確信的に、人混みの前で街頭演説できるか、と言われたらば、まあそうではないのだが……ああんおまわりさん呼ばないでぇっ!
ならば、それでは開陳しよう…
このルーテフィア、もといルーに俺は、家臣として仕えている身でもある。
ん?
なんやねん家臣って……と思われるであろうが、
まあ今しばらくワタクシめの言い分を聞いて欲しい。
本当に?
そりゃあ、もちろん、現代日本で生じた関係性ではない。
これは、“向こう側”──での、俺、道寺橋裕太の、身分なのだ。
何も、誰も予期できた事ではない……つまりは偶然が積み重なっての末の、今に至る話である。
そのいきさつと結果によって、辺境伯当主の孫であり、そしてなって日が浅い新米の騎士であるこのルーテフィアの、まあ御用商人見習い、ということに、とりあえずなっているのだ。
しかし実体としては、年の離れた友人……みたいな立場と関係に、俺とルーは互いに接しているのがその中身であった。
まあつまるわけで、
このお貴族さまの貴族っ娘の、その第一人目の初めての家臣となったのが、
無職歴イコール年齢…となっていたところの、この俺ちゃんの初めての職務欄に、このようにして職業が書けるようになった、そういうわけなのである。
「おまえ、臭うぞ。………俺もだ、嗚呼、風呂の用意をしなくては……」
「あぅ、」
部屋の外の、夏の蝉の騒がしさはさらに大きくなっていた……
部屋のエアコンは三十年選手のおんぼろである為、正直、効きが悪い。
時計を見ると、……ふむ、
午前中からかるく二、三時間昼寝をしていただけなのに、俺もこいつも、ずいぶん寝汗をかいてしまっていた。
まったく! こうまで外が暑いと、室内で長寝するのも、体力がいる。
まあ、ぼちぼち、起きましょうか……
どういうわけか、目覚めてみたら、こいつ(ルー)の乳臭い体臭にまみれていた俺ではあるが
(毎度のことでもあった。が、寝ている間になにが起きていた?ということでもあろうが、俺ちゃんは仔細の検証を知るのが恐ろしいので、意図して考えない、というようにしている……)、
その隣の、
きめ細かいサラサラ肌であるもののじっとりぺったりと汗ばんだルーに、とりあえず小型冷蔵庫の水を渡してやる。
「ごくごく、ふぅ、……ねぇねぇ、ユウタ、」
「なにぞ、」
「おなかすいた」
「………」
このルーのやつは、年齢がそうなので、タッパが相応に低い…
なので、あぐらずわりをしている俺ちゃんへと、
目線を合わせようとして?かはわからんが、
布団の上に両膝までを地につけた両膝立ちの姿勢で、腰を浮かし、
ハグする寸前の子熊のように両腕手を左右に開いて、ルーはそう所望された。
その表情は、愛らしいといえるものである。
嗚呼……
無言でとりあえず、近くにおいてある菓子パンの一つを渡してやる。
「ありがとう、ユウタ! んっ……あぐあぐあぐ、あぐあぐ、ごくっん、けぷっ あぐあぐあぐあぐ……」
「さぁて、今日はどうするか?」
「ほひはへふ、はふほごひゃんほはへへはらははひとへ(とりあえず、ちゃんとゴハンをたべてからじゃないとね)」
はー、
まったく、この食いしん坊め。
まあ数ヶ月前まで欠食児童をやっていたのがこのルーテフィアという子供であった。
ちゃんと食べるものを食べれるのは、元気でよいという証拠だ。
そう、このマイハウスの俺ちゃんの部屋の只中において、
効きの悪い冷房ちゃんの所為で俺とともに肉体が蒸し上げられるがままとなっていて、
先程、なにごとの譫言を唸っていた、“相方”どのが、俺のとなりにいるのが、その異世界のそのことのなによりの証明となっていた。
いわば、俺という地球人の日本人と、この“相方”という純・異世界産の異世界人さん、というのが、こうして現代日本の住宅の一室で雑魚寝している状態が、である。
そういうことなのである……
それにしても、ルーは物を、実においしそうにたべるなー。
邪意はないつもりだが、このルーのやつ、今日もあざとさにまみれている…昨日よりもさらに増したような気さえしてくるぜ。
まったく、ヒロインとしての資格と適性はこの上なく溢れんばかりに充実して揃えているといってもよい。
だが?その場合、主人公は誰の役に、ということにもなるだろうか。
そうして見た場合……、主役としての能力と実力と適性に適っているのも、
今は英雄騎士の位を与えられて、いろいろ曰くはあるだろうけど……名実とともに騎士の英雄という幼少からの夢を叶えた、このルーのやつにこそ、もちろん違いがないだろう。
つまり、このルーのやつは、
主人公ヒーローとそのヒロインの両座を、一体になったかのような、そのこなし具合の存在なのである。
表裏一体? いや、一人二役、というべきなのだろうか。
いや、それについても、裏付けと理屈は、ちゃんとある…
性格がひねくれている俺の目を通してとしても、
多大に及ぶ献身と努力を殉じて、勇気と生命を掛けて、このルーの奴はがんばったのだ。
そのことにかんしては、申し訳なさすら感じるここ近日であった。
きっと、俺ちゃんの現在の立場にいるべきは、
本来はもっとルーにとっていちゃらぶできる、素敵ですてきな、ルーにとってのベスト・ヒロインちゃん(♀)が本来はいたのであったろう筈なのだろうな……とも、訳もなく、思い浸ってしまうほどであったのだ。俺ちゃんはよ。
ん? 俺ちゃんが女体化(TS)すればよいって?
そうはいうがねキミィ。
「むふー、ん?」
ぴと、っと。
「まーた、妙なこと考えちゃってる!
ボクのヒロインは…ユウタだけですよ?」
んな!?
こいつ、今日も、おれの思考を、異能で読みやがった?!
「おいしいゴハンと、ボクのユウタが、ボクのとなりでいっしょにお昼寝してくれる生活♪
まったく、今日もボクは幸運ですね♡」
胡座座りの俺の半身にその小さな体を寄せるようにしてしなだれかかり、身を預けながら、ルーはパンを頬張っている。
はあ、まるで樹の幹の木陰に、躯を寄せるかの如くに、である……
「気にするものなんてありません♪
ユウタはボクのもので、
すなわち、ユウタのあるじのボクもユウタのものなのですから♡
互いにあるがままでいいのです♪
ボクも、ユウタも♡」
はーあぁー、油断するとこうなる……
まあ、いつものことだ…
いまは発言があやういこのルーの奴も、これから大人になっていくにつれて、
思春期を脱した頃には、立派な騎士さまになれて、
いまのそれらは黒歴史となって、
おれという人物は、さしずめ過去のモノとなる、
そんな道順が、あるのだろうのによ……
(ユウタが、ボクの…唯一人の絶対のヒロイン、ヒーロー…というのには、嘘偽りはないのですけどね……? もぐ、もぐ)
身長差がけっこーあるので、俺の胡座の上に座るルーのやつが、首をかしげて、こちらに目を合わせることができる。
そのルーのやつが、なにか目で申されている…が、俺ちゃんには気配で意思を伝え合う能力はないので、申し訳ないが、そのままスルーした…
(そして…同じくらいに、ボクはユウタの唯一人のヒーローであれたら…ヒロインであれたら、ボクはそれだけで良いのですよ……? もぐ、もぐ、けぷっ。)
なーにか目で申されている…が、同上につき。
まあ、こんなこれがここしばらくの、日常であった。