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?!始めにクライマックス?! 1/6’(全6話)

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 全ての「はじまり」は、「おとぎばなし」のようなあらましからだったという。

 後世に残ったそれを、無邪気な人々は「勇者伝説」と呼んだ。

 或いは我々の言葉で言えば、こうだった。「ヒョウタンから出たコマ」。

 あるいはまた別の視座からは、こう言ったらしい、「嘘から出たマコト」……と。



………………


…………



……ある西の国と、ある東の国との、中間位置。

だが、ここは国境としては未だ国際的な整理と認証が付いていない。

 係争中地域である所の、広大な森林地帯だ。

 それを、抜けた先にあるのは、

……見渡す限りの、原野。



 枯れ木も山の賑わいとは言うだろう。

 だが、苔の類いなのか芝の類いなのか雑草の類いなのかもおよそ判読が付きづらいほど低栄養な植生の生え荒んだ大地に、立ち枯れ掛けた木が、まばらに丘地に点在しているような有様だった。


 心なしか、地の向こうの遠くに見える空というのも、濁って淀んだ風合いの蒼を背後に、陰鬱にくすんだ雲というのが項垂れるように沈んでいる。

 これではまるで、正午頃の直中だというのに、今に恐ろしい幽鬼かなにかの類いが、突然に横合いから飛び出してきそうでもある。



……そんな地面の窪地に、野菊に似た野花が植わっていた。

 かわいらしく綿毛をふわふわと纏っていて、

 その綿毛の種を、一つずつ、空の広がりへと、ちいさく小さな妖精か精霊がいるのだとしたら、その存在へと愛らしいミニチュアのブーケとして渡すかのように飛ばしていた。

 そのたんぽぽの姿を、低い影色が、被うようにスライドしてきた……遙か上の空の大雲が、その真上へとやってきていたのだ。



 自然の摂理。この異世界・アリスティリゥという場所の。

 そしてその片隅…………

 いくらか不気味な様相とはいえ、雄大な光景であることには相違なかった。

 だが、精霊や妖精の祝福というモノの実在は、本当らしかった。

……風が運ばれてくる……

 その大地の息吹に吹かれて、速度を増した雲はさらにスライドしていき……

 やがて切れ間が生まれた。

 その雲の裂け目から太陽の光が差し込んだとき、

 地の上のたんぽぽは、まるで照らされるようにして、その姿を輝かせていた。



 そよ風が、この草原とも言えない原野の彼方まで、撫でるように駆け抜ける…………


 だが、世界とこの土地固有の霊脈と精霊風の吹き溜まりの関係で、このあたりの気象環境は、通年を通じて、秋頃から冬に近い……見える光景以上に、肌寒い風のよぎりであった。




……それにしても、ここというのは、なんなのか。


 

 果たしてこの土地に価値はあるのか?

 なぜ領有したいのか。自国領にしたいのか。


 たとえば、埋蔵資源がどうのとか、

 農地として開墾するに最適だとか、

 いや歴史的な経緯のある埋蔵物が、己の国にこそ所有と所属の権があるのだから……などとは、これまでに双方の国の内外で、詐欺師やその大勢がうそぶいてきた所の話ではある。


 だが、大地の底に、有望な規模での魔力資源の埋蔵を察知できるような濃度の魔気はあまり表出がなく、

 土地は痩せていて、とてもじゃないが作物は育ちそうにない。

 もっといえば、この土地は昔、大戦争の戦場になった場所でもあった。

 前述のそれ二つの以前として、当時の破局級兵器の使用によって、土地は汚染されていた……


 例えば一人の人間として、入植者の志願があったとする。

 そうしてここに、クワと種籾だけ渡されて、いざ厳粛に開墾開拓せよ……とされてしまうのは、とてもじゃないが良心がないし、自分が、強靱なバイタリティーとポテンシャルを秘める魔族や亜人などの人外ではないただの人間でその上、何の神秘の加護も無いのならば……だったなら尚更、誰だって御免被りたくなるだろう。


 そのような惨憺たる有様の荒れ果て様だが、

 果たして正気なのかどうなのか、

 その、西の国と東の国…

…というのは、この場所の利用権と所有権を巡り、係争状態に予てからあった。


 理屈というのは、ある。

 だが、そんなモノは軟膏同然に、何処にでも塗れて付けることができてしまうものだ。

 その理屈の内と外と根っこまで含めて、どちらの国も、国ごと原野商法に引っかかった、と揶揄することは出来よう。

 だが、この度に於いては、双方大真面目に「戦争」として、この領土問題の最終的な解決というのを図ろうとしていたのだから笑いようがない。



 なぜ領有したいのか、領土として所有したいのか。

……今となっては、国家としての互いの面子と意地と沽券、或いは全うな組織政体としての内外への保障と信頼と約束の愚直な履行というのもが大ぶりに掛かっている為に、

 もはや、どちらの側も、相手へ振り下ろすために頭上に上げかけた振り下ろしかけの腕手同士で、泥仕合をやるしか無い状態である。

 腕と手同士でつかみ合い、相手の腕手を握り折らん、それをなしえたらば、次に、仕留めるべくして相手の喉を絞め殺さん、としている。

 そんな情勢に、今はあった……



……最後に立ち残るのは、どちらかが否か……




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