にわか雨
急に雨に降られた。
急激に振りだして時間がたつとすぐにやむ、いわゆるにわか雨だ。
傘など用意していない私はすぐに近くの軒下に避難する。
まわりの人々も雨から逃げるように足早でどこかへ行く。
早くやまないかな、なんて考えている私の隣に男性が一人雨から逃れるようにして軒下へ並ぶ。
その人は逃げるタイミングを失っていたのか服がかなり濡れていた。
私は普段から持ち歩いているハンカチを
「どうぞ、使ってください」
と言いながら、その人に手渡した。
「ありがとう、急に降られて困ったよ、このハンカチは洗って返すね」
そういいながら小さなハンカチで濡れた頭を拭いていく。
その人とハンカチを返してもらう約束をしながら私は、にわか雨が好きになれそうな、そんな気持ちだった。