とある少女の趣味
わたしは鼻唄で気持ちを盛り上げながら外を歩いていました。
周りの人からみたら完璧に散歩と思われるでしょう。
「あ! わんわんだ~♪」
周りに人がいないことを素早く確認してからわたしはスキップで、子犬の方へ向かいました。
「ふふふっ♪ 可愛い、可愛い!」
まずは警戒心を薄めるために優しく、元気のいい雰囲気を醸し出しながら、ゆっくり、ゆっくりと撫でていきます。
フフっ、これからが本番です。
わたしは自然に子犬の下顎へ手を移動させました。
瞬間、ゴキッと鈍い音が辺りに鳴り響き、わたしの手にもドスンと重い衝撃がきます。
「──んんっ!」
胸の奥がキュンとして思わず声が出てしまいました。
あぁ、何故、生き物を殺すのがこんなに気持ちがいいのでしょう?
イケナイコトだとはちゃんと分かっているのですが、なかなかやめることが出来ません。
何秒たったでしょうか? 胸の引き締めが収まるまでわたしはそのままじっとしていました。
──でも、あまりこの場所にはいられません。
わたしはバッグから手早くしっかりと研いだナイフと、自作のスタンガンと、友達のお見舞の時に病院から盗んできた強力な止血剤を取り出します。
まず、止血剤を首辺りに注射で注入しました。
次にナイフでサクッと折れた部分に狙いをつけて切り落とします。
止血剤では押さえきれなかった血が流れてしまいました。
わたしは急いで傷口に、自作のスタンガンを押し当てます。
青白い光とともに肉の焼けるいい臭いがしてきました。とても美味しそうです。
傷口が塞がったのを確認して、わたしは道具と子犬の首をバッグのなかに詰め込みました。
わたしはもう一度周りを見渡します。
人の気配は全く感じません。
わたしは胸を撫で下ろしてから、また同じように鼻唄をしながら歩きはじめました。
何故でしょう? 全然物足りません。
心の奥からもっと、もっと! と欲望が涌き出てきます。
何がたりないのでしょう?
わたしは何を殺したいのでしょう?
いえ、もうわたしは分かっているのです。
同族。
そう。人間をわたしは欲しています。
しかしどうしましょう? 人間は同族殺しにすごく厳しいです。
絶対に足がついてはいけません。
でも、ただばれないように処理するだけじゃ芸が無いと思います。
──瞬間わたしはいいことを思い付きました。
まずは丁度いい人間を探しに行きましょう。
それは案外すぐに見つけられました。
目の前には今、わたしと同じ位の少年達が五人立っています。
好奇心旺盛で、純粋な少年達。
わたしは落ち込んだ様子を意識しながらしゃべります。
「わたしの大切なハンカチがあの中に飛んでいっちゃったの……」
指を指す方向は物心ついた頃から絶対入るなと言われ続けている薄暗い森です。
予想通り少年達は探検だ! と盛り上がり始めました。
さて、少年達はどの様に死んでくれるのでしょう? 凄く楽しみです。
わたしは少年達に手をかけそうになるのを必死に押さえながら、張り切る彼らの後ろを着いていったのでした。
「ハンカチ通りすぎちゃったのかな……」
結構、奥の方まで来ました。
最初は張り切って進んでた少年達も徐々に不安の影が深まってきます。
そろそろでしょうか?
……もしまだだったとしてももう我慢できません。
「ねぇ──」
わたしの声に振り向いた少年達にむかって市販の催涙スプレーを噴出させます。
少年達は痛みで泣き出したり、痛むまでもなく泣き出したり、咳き込んだりでとても動ける状態では無くなってしまいました。
念のためわたしは、ビニールテープでリーダー格の少年の手以外の手足を拘束します。
「お友達を全員殺したら、貴方だけ助けてあげる」
わたしは咳や、涙が落ち着いたのを見計らってリーダー格の少年に話しかけました。
「僕は大切な友達を殺したり出来ない!」
「ふふっ友達想いなのね──でも、貴方が殺さないとみんなこうなるよ?」
わたしはバックの中から、さっき切り取った子犬の生首を少年達の目の前に転がしました。
目の前で少年達の息の飲む姿にわたしはわくわくしてしまいます。
「……わ、」
「わ?」
「訳わかんねーよ! ハンカチを探しにいってやったと思ったら、いきなりなんなんだよ! こいつらを殺すんだったら、僕は死んだ方がましだ!」
「ふーん……素直に言うこと聞けない子にはお仕置きね」
わたしはリーダー格の少年君にスタンガンを押し付けました。
青白い光が少年君にむかって吸い込まれていきます。
少年君はビクン、ビクンと痙攣しながら、ものすごい悲鳴をあげます。
外まで聞こえてないといいですね……
「さあ、殺そう? 最初は嫌かもしれないけど、やってみると気持ちいいよ」
「い、やだ……」
なかなか根性のある少年ですね。
わたしはもう一度スタンガンを押し付けようとしましたが、それではつまらない事に気づき、バックの中から鉛筆を取り出しました。
それを思いっきり目に突き刺します。
今度は悲鳴の声すら出ていませんでした。
「んっ……」
他の動物とは比べ物にならない快楽が身体中に回るのを感じます。
これ、殺したらどうなるのでしょう……?
考えるだけでキュンキュンしてしまいます。
「ほらほら、早く♪」
「そ、そんなの……」
わたしはもう片方の目も潰しました。
少年君はカエルを潰したときのような声を出しています。
「んぁっ……」
我慢できません。少しだけ鉛筆をグリグリと動かせてみましょう。
少年君がビクン、ビクンと動きます。
「ひぁっ! にゃあっ……ふぁあ……きもちいい……」
わたしもビクン、ビクンと動いてしまいました。
もちろん、全く違う分類だと思いますが……
「ふぅ……次はどこにしようかな~」
「やりまふ! やりますから、もうやめて!」
「えー」
今いいところでしたのに……おれるんでしたら、もっと早くおれてほしかったです。
少年君はもう目が見えないはずですが、感覚だけでもう一人の少年のところまでたどり着き、首を絞め始めました。
「ごめん……本当にごめん……」
首を絞められてる少年の表情と、絞めている少年君の表情が妙にマッチしているように見えてつい興奮してしまいます。
苦しそうにしていた少年が急に痙攣を始め、ついには動かなくなってしまいました。
「しっかり言うこと聞いたからご褒美をあげないとね」
わたしはスタンガンを押し付けました。
また青白い光が少年君に吸い込まれていきます。
しかし今度は、少年君が悲鳴をあげることはありませんでした。
心なしか気持ち良さそうな顔をしています。
まさか目覚めてしまったのでしょうか?
「ごほうび、ありがとうございます」
少年君は凄く嬉しそうに頭を下げながら言いました。
どうやら目覚めるというか、壊れてしまったようです。
「う~ん……喜ばれるとつまらないね」
わたしは少年君の腕を縛り、逆に近くにいたもう一人の方の腕のビニールテープを外しました。
「そうそう、名前なんて言うの?」
「春仁……です」
「へー春仁君か……そこの少年君の方も聞けば良かったな……まあ、どうでもいいか! ということで、そこの少年君をぶっ殺して♪」
春仁君はコクりと控えめに頷き少年君に近づきて、首を一回転に回しました。
骨の砕ける気持ちいい音が聴こえてきます。
「はい、ごほうびね!」
わたしは素早くスタンガンを押し付けました。
春仁君の物凄い悲鳴が上がっています。
これが聴きたかったのです。
「はい、あと二人行ってみよう!」
「は、はい!」
バキッ、ボキッという音が感覚を置いて二回響きました。
春仁君は涙を流しながら痙攣をしています。
躊躇せず骨を折る姿は気に入りました。
涙さえ流していなければ解放したかもしれません。
とても残念です。
「ごほうびに皆のところに連れてってあげる」
「まって! 全員殺したら助けてくれるって!」
「そんなの、きみには一言もいってないよ?」
春仁君の顔が絶望に染まっていきます。
やはり彼のやったことは彼にも経験させなければなりません。
わたしは春仁君の頭に手をのせ──思いっきり首を回しました。
骨の折れる衝撃がわたしの手に直接、伝わってきます。
「んんんっ……んはっ、にゃに……? はぁあっ! だめっ……もうこれ以上は……ぁは、んんんっはぁあぁあんんんんっっ!!」
胸の内からわき出てくる、あり得ないほどの快楽にわたしは、ビクン、ビクンと痙攣しながら意識を手放してしまったのでした。
ギリギリを狙った作品になってしまいましたが、セーフですね!?