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最後の魔女  作者: 砂鳥 ケイ
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最後の魔女95 王妃誕生1

 少女はビクビクと震えていた。何故震えているのかは皆目見当もつかない。もしかして、今もフサフサの耳をもふもふし続けてるのが原因?


「もう、お嫁に行けない⋯」


 ボソリと呟いたかと思えば意味が分からないことを呟いていた。熱はさっき確認したらなかったよね。あぁ、寝起きだから寝ぼけてるのかもしれない。でなければリグの威圧の後遺症に違いない。

 取り敢えず彼女がシャキッとするまでこの状態で待つことにした。勿論、耳もふは継続しながら。


「い、いつまで、その⋯触ってるんですか⋯」


 今度は涙目になってしまった。まぁ、朝だからね、涙を流すのは当たり前。


「後、貴女は天使様ですか?」


 え⋯⋯私が天使? 何十年と生きて来て初めて言われたよ。

 私が天使ね。うん、悪くない響きだけど、ちゃんと違うよって言わないとなぁ。


「違う。倒れたあなたを介抱してる」

「ええと、耳を弄るのは介抱なんですか⋯」


 モジモジしながら、頬だけではなく耳も真っ赤に染めていた。

 やばい、少しもふもふし過ぎたかもしれない。


「ごめん。あんまり気持ち良かったから」


 最近駄猫をもふってないから私自身もふりに飢えていたのかもしれない。


 この場には、私と獣人の少女と徹夜で探し回ってお疲れご就寝中のリグしかいない。


「ひぃぃ、悪魔⋯⋯」


 少女はリグに視線を送ると一層ガタガタと震え出す。


「大丈夫、この子は私の味方。危害は加えない」

「じゃ、じゃあ、貴女も悪魔なのですか⋯」


 天使の次は悪魔か。どっちかと言えばそちらの方が近いのかもしれない。


「違うよ。私は正義の魔技使い。シルフィ王女に雇われて呪怨と王様の豹変を調べているの」


 あんまり長々と喋るのは苦手なんだけど、最近少しずつ慣れて来たかもしれない。

 獣人の少女は、ベッドから跳び起きるとそのまま土下座の姿勢で全てを語り出す。


 彼女の名前はリリベル・カーベルン。獣人は、名を名乗る時は集落の名を一緒に名乗るのが一般的であり、カーベルンと言うのが集落の名前だった。

 狐の獣人のことは世間では狐獣人(ルナール)と呼ばれていた。

 獣人は種族により違いはあるものの一貫して特殊な能力に長けていることで知られていた。その中でも狐獣人(ルナール)は、幻惑系の能力に優れていると言われていた。


 狐獣人(ルナール)の集落から離れ、妹と二人で遊んでいた矢先に不注意から妹が怪我をしてしまった。

 キョロキョロと辺りを見渡すと、人族の物と思われる寂れたボロ小屋が目に入った。止血出来る布でもないかと思い恐る恐る小屋を覗くと、そこは既に廃棄された納屋だった。途端に雨が降ってきたこともあり、雨宿りを兼ねて暫くその納屋に厄介になることとなった。

 その時、突然納屋の扉が開かれた。そこに立っていたのは、他でもないエルスレイン本人だった。最初エルスレインは好意的に近付いてきて、妹の為に傷の手当てをしてくれた。ルルベル自体も悪い人族とそうでない人族がいる事を理解していた為に油断してしまったのだ。雨が止み、集落に帰ろうとした時だった。

 急に妹が苦しみ出したのだ。体温も上がり、呼吸も早い。


「可愛い妹ちゃんに毒を盛ってやったのよ」


 獣人は身体能力にも長けており、ただの村娘程度相手になるはずもなかった。

 そのことに怒ったリリベルはエルスレインを殺そうと鋭利な爪を振り上げる。


「その毒は特殊でね、私を殺しちゃうと解毒の術はないわよ」


 ただの脅しだったのかも知れない。信じる根拠など何処にもなかった。しかし、リリベルは苦しそうに息を荒げる妹の姿を見て、振り上げたままの爪を振り下ろす事が出来なかった。


「一つ私の頼みを聞いてくれたら妹ちゃんを助けてあげるわ」


 リリベルは一瞥の不安を感じながらも一つだけならばとその頼みを聞いてしまった。

 エルスレインの頼みは、周りから見れば馬鹿げたものだった。


「私をこの国の王妃にしなさい」


 この人、馬鹿なの? 百人に聞いたら百人ともがそう答えるだろう。しかし、エルスレインはリリベルの能力を使えばそれも可能だと思い込んでいた。


◆幻惑

 人の五感に直接働きかけ、有りもしない幻を本当の出来事だと思い込ませてしまう魅惑の技。簡単な内容ならばすぐに信じ込ませる事が可能だが、本人から見てありえないような出来事ならば相応の時間が必要になってくる。


 リリベルは、獣人の能力を活かしバラム王国の王城へと侵入し、時間を費やし国王であるバングを幻惑に掛け続けた。

 本人の自覚はなかったが、リリベルの能力もズバ抜けており、同族から見ても恐らくこんな無茶な幻惑が成功したのもリリベルたった一人だったかもしれない。

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