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最後の魔女  作者: 砂鳥 ケイ
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最後の魔女82 剣王1

 遡ること一週間ほど前の出来事。


 教皇様に呼ばれたドレイクは、王都カームベルグを訪れていた。王都カームベルグは教皇様のお膝元で、この世界で最も大きな国だ。

 堅牢な防壁に覆われ開国してから一度たりとも敵に侵略を許したことがない堅牢な要塞としても知られていた。同じ王都でもミュゼルバとは姉妹国契約しており、盛んに交流が行われていた。


若い兵士が仰々しく敬礼する。


「剣王ドレイク様ですね。お会いでき光栄です。自分は、ここ大神殿で騎士職を務めているサルコーと申します」

「うむ。儂に礼儀は不要じゃ、案内してくれるかの」


 通されたのは、いつもの別室だった。何かと依頼される時に通される部屋で、ドレイクとしては既に何度も見慣れた光景だった。

 少しの間待機し、待っていると司祭なる人物が入って来た。

 教皇様に呼ばれたと言っても、儂自身教皇様にお会いしたことはない。以前一度だけ、暗がりのカーテン越しにその影を垣間見たことがある程度じゃ。

 あの方は、決してそのお姿を他人には見せないと言う。そういえば、ミュゼルバも最近になって教皇様が変わったんじゃったな。前教皇は悪魔が化けていたと言う噂もあったの。いや、この考え自体が不敬じゃな。


「急なお呼び立てすまない。貴殿の力を借りなければならない案件でな」

「これが仕事なんじゃ、気にしないでくれ。それより、今度はなんじゃ、魔王でも現れたのか?」

「魔王ではないのですが、悪魔の目撃情報です」


 ドレイクは深い溜息をつき、ソファーにもたれ掛かる。

 情報屋から持たらされた情報は、悪魔でかつ高位悪魔をシュメルハイツで発見し、在ろうことか、人族に紛れて暮らしているというものだ。

 悪魔が人に紛れていると言うのは、実は割と良くある話で、高位悪魔ともなれば、姿形を自由に変えられると言われている。もしそうならば、何かを企んでいる可能性が高い為、悪魔退治の任を教皇様から直々に儂を名指しで仰せつかったんじゃが⋯面倒じゃの。


 悪魔は過去に何体も倒したことはあるが、高位悪魔は別格じゃ。過去一度だけやりあった時は、中々に骨が折れたわい。

 容姿などの最低限の情報だけ聞き、大聖堂を後にする。


 ドレイクはその足で、王都カームベルグを離れ悪魔の目撃情報のあったシュメルハイツへと向かった。

 飼い慣らされた飛竜に跨り、馬車で10日掛かる距離を僅か一日で到着した。


 「やっぱし、何度乗っても飛竜には慣れんわい。腰が痛くてしゃーなしじゃわい」


 まずは様子見からじゃな。仲間がおったら面倒じゃて。


 情報のあった宿屋の前で張り込むこと、数時間。

 出てきたのは、少女の姿をした悪魔と少し年上のこれまた少女だった。


 事前に聞いた時は聞き返してしまったが、本当にこんな幼子とはの。

 じゃが、あの異質な気配。誤情報ではなく本物の悪魔じゃな。


 ドレイクは、そのまま二人を尾行をすることにした。


 どんな悪さをするのかをこの目で確認するつもりじゃったが、ただ楽しそうに買い物をしているだけで、一向にその正体を現さぬ。痺れを切らし、殺気を漏らす。

 流石に、気が付いたのか、どんどん人気のない方へと進んでいく。


 てっきり、人の多い方へ誘い込み、儂が手出し出来んようにすると思ったんじゃがな。儂など取るにたらん相手と言うことか。はたまた偽善者か。じゃが、好都合じゃな。今日の所は相手の様子見で留めるつもりじゃったが、周りの邪魔が入らんなら、今この場で仕留めるのも一興。


「思惑通り誰もいない場所へ移動してくれるとは偽善者かもしくは、その正体が他の者に知られたくないかかのどちらかかの」


 戦闘はすぐに始まった。


 厄介な魔法を使うが、この程度ならば問題なく倒せそうじゃわい。

 第9位階序列とはな。1桁台とは大物じゃが、ちと実力が足らんのではないか?


 ドレイクは悪魔の動きを見切り、次第に追い詰めていく。そして、ついに膝をついた。そのまま止めを刺そうとしたまさにその瞬間に、何者かが邪魔をする。


 話を聞くにどうやら悪魔の仲間らしい。

 じゃが、悪魔と言う感じではないな。ならば、あの悪魔の眷属か何かかの。


 しかし、此奴、中々に手強い。一瞬の隙を見せればやられてしまうかもしれん。じゃが、儂は負ける訳にはいかんのじゃよ。

 動きを見切り、持てる切り札を使い、何とか追い詰めたと思えば、まさかの自爆とはな。

 じゃが、これでもう邪魔は⋯⋯!


 何じゃ、あの化け物は⋯


 儂が、この儂が萎縮してしまっておる。あんなこの場に奴いなかったはずじゃ。一体何処から沸いたと言うんじゃ⋯


 儂はその場を退いた。


 戦場から逃げ出したのは、今回で二回目じゃった。

 あれは、この世のものではない。我々を超越した神々しさすら感じる何かじゃった。我々が相手にしていいような存在ではないと瞬時に察した。


 その後の間諜の調査で、あれがあの悪魔幼女の真の姿であることが分かった。

 やはり、まともにやりあって高位悪魔はそう簡単に倒せるものではない。

 しかし、何故じゃろうか。

 儂が真に恐れているのは、あの悪魔ではなく、寧ろ傍らにいたもう一人の少女だ。

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