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最後の魔女  作者: 砂鳥 ケイ
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最後の魔女62 運命の出会い

 私を十二星へと駆り立ててくれた神様。数いる神様の中でも昔から私が一番敬愛していた神アプロディーテ様。敬愛しているからこそ、私を選んで頂けた時は凄く嬉しかった。


「良くやりましたね」


 その言葉をかけられ、私は何故だか涙を零してしまった。


 っえっぐ⋯止まらないよ⋯


 私がこれまで頑張ってこれたのも、私なんかを十二星にしてくれたアプロディーテ様へ、恩返しがしたかったのが大きな理由の一つだった。


 その後、泣き続ける私に寄添い、優しく介抱してくれるアプロディーテ様。そのまま、賑やかな式典は終わりを迎えた。


 全員が各々の場所へと戻り、この場には、私ともう1人⋯。


 最優秀となった私は、何でも望みを叶えようと言われた為、話し相手が欲しいとお願いしたの。


「シュティア様、これからどうする?」


 私の前にはキョトンとした顔をした少年が立っていた。勿論、ただの少年ではない。私の願いを聞き入れてくれたアポロン様が召喚した八十八星の一つである、こぐま座のイルドゥン。


「そだね、私たちも帰ろっか」


 何だか小さな弟が出来たみたいで嬉しいな。


 手を繋いで担当区であるバスカトゥール大陸の星の社へと戻った。



「イル! 見て見て、あれ、人がたくさん集まってるよ!」

「姉ちゃん、あれは年一でやってるお神祀りだよ。去年もその前も観に行ったよ」

「え、そだっけ? イルはよく覚えてるね。エライエライ。将来はきっと、いい十二星になれるよ。私が保障する」

「もう、子供扱いするなよな。こう見えてももう35歳なんだからな」


 私はイルの頭を撫で回す。


「はいはい、私の弟で在り続ける限り、イルは私に子供扱いされる義務があるんです」

「真顔で何おかしなこと言ってるの」


 イルにジト目で睨まれる。


 そんなイルと一緒に生活するようになってから、更に数百年が経過しようとしていた。いつものように義体を使い地界へ降りている際、とある人族の少女と出逢った。


 今思えば、これは必然だったのかもしれない⋯


 彼女は、最初に出逢った時は満足に食事を摂っていないのか、痩せこけており衰弱して危ない状態だった。そんな彼女は、私の姿を見るなり、一言「お姉ちゃん⋯とってもきれい」とだけボソリと呟いた。そのまま気を失った彼女を近くのあばら家へと運び、手厚く介抱した。


 私は時間の許す限り、彼女の元へ足繁く通い、面倒を見ることにした。

 なぜ私がここまでこの少女に拘るのかといえば、それは彼女が今まで見てきた誰よりも清い心の持ち主だったから。

 十二星である私は、人の心の色が分かる。心の色はその人の性格から今までしてきた行いなどを読取ることが出来る。悪人や、ましてや罪もない人の命を奪う輩はより濃い色をしていた。

 そんな彼女は、眩いばかりの美しい光を放っていたのだ。まだ幼く、周りを知らないというのもあったのだろうけど、自分が今まさに死にそうな思いをしているにも関わらず、私に呟いた言葉も然り。助けたいと思わずには居られなかった。


 それから10年の歳月が流れ、少女もいまでは見違えるように成長した。

 今では陰ながらその姿を確認するに留めている。だって、彼女にはもう私の助けはいらないのだから。新たに見つけたパートナーと今では一つ屋根の下で幸せに暮らしている。清い心の持ち主の周りには、同じように清い心の人々が集まって来る。


 彼女の幸せそうに微笑む姿を見るのが、いつしか私の日常になっていた。


 更にそれから数年が経過する。


 それは、いつものように義体を身に纏い、地界へ降り立っていた矢先の出来事だった。


 何の前触れもなく、この大陸に他国が攻め行って来たのだ。


 バスカトゥール大陸は、周りを海で囲まれており、その岸壁は鋭利な程に歪な形をしていた。この大陸の住人ならば、唯一の外交路である抜け湾を知っているが、部外者は知る由もない。そのような理由から外敵からの侵攻は未だかつて一度たりともなかった。

 しかし、数百年間以上の間、優秀な十二星の活躍により、どの地よりも豊かな恵みである事実は、ゆっくりと確実に外へと噂が広まっていった。この地を狙う者は、実は意外と多かったのだ。


 争い知らずのこの地の住人は、見たこともない武器を駆使する相手に、なすすべなく、瞬く間に侵攻を許してしまった。


 十二星は、他種族からは目に見えることはおろか触れることすら出来ない。しかし、義体の状態で殺されるようなことがあれば、そのまま命を落としてしまう恐れがあった。


「だめだよ姉ちゃん。大人しくこの星の社にいないと。地界に降りて、もし殺されでもしたら、姉ちゃんが死んじゃうんだよ?」

「でも⋯でも⋯みんなが、死んじゃったら、私が今までして来たことが全て水の泡になっちゃう⋯」


 シュティアは大粒の涙を零し、泣いていた。


「その時はまた別のモノ(・・)が住むだけだよ。大地が、森が焼かれても、この地に十二星である姉ちゃんがいれば、またいつの日かまた元どおりになるんだからさ」

「そんなに簡単に割り切れないよっ!」


 今まで、一緒に頑張って生きてきたみんなが、何処の誰とも分からない奴らに、蹂躙されて⋯殺されるなんて⋯あんまりだよ⋯。


 星の社では、自らの収める大地の映像や声などを聞くことが出来る巨大な水晶が置かれている。

 離れていても情報が分かるそれを重宝していたのだが、今回に限っては、それが逆にシュティアを苦しめる結果となってしまった。

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