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最後の魔女  作者: 砂鳥 ケイ
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最後の魔女54 盗賊団ヴォルス4

 私は今絶賛逃走中。誰もバッカスの脚には敵わない。走り出してしまえばこっちのもの。取り敢えず逃げる。逃げるったら逃げる。

 あんな化け物相手にしてられない。少なくとも何の準備もせずに高位悪魔と対峙なんて出来ない。


「お姉様を侮辱した輩をみすみす見逃すんですか!」


 リグにげんこつをお見舞いする。

 涙目になり抗議してくるリグは取り敢えず置いておく。


 とてつもなく大きな音が聞こえたかと思えば、突然背後が爆ぜた。

 恐る恐る背後を振り向くと、先程までいた砦が火の海に包まれていた。


 同時に見たくないものが見えてしまった。


 何か得体の知れないものが真っ直ぐ猛スピードでこちらに向かってくる姿。あの悪魔に違いない。


 何で滅多に会うことが出来ない悪魔にこう何度も何度も遭遇しちゃうかな⋯。

 でも、流石にこれは覚悟を決めるしかないかもしれない。


「先に言ってて、シュメルハイツで合流」


 猛スピードの場所からかっこよく飛び降りる。

 リグがついて来ようとしたけど、眼でそれを制した。

 戦えないのなら足手まといにしかならないから。


 さてと、準備準備。


 身体強化一式を自身に施す。

 ある一定のダメージまでを肩代わりしてくれる防御障壁は結局12枚しか間に合わなかったか。

 これ、発動までに結構時間が掛かっちゃうやつ。地下から逃げ出した時から準備してたけど、12枚か⋯。リグの時は、確かこの倍くらい張ってたけど殆ど破られちゃったんだよね。


 私の姿を視認した悪魔は、そのスピードを徐々に落とし、やがて止まった。


「ふむ。逃げるのを諦めたか。ならば我の計画を邪魔した報いを受けて貰うぞ。あぁ、ついでにあの悪魔を解放してもらう」


 リグはついでなのね。


「別に。広い場所に移動したかっただけ」


 馬車の方は見逃してもらうべく、ヘイトをなるべく私が稼がないといけない。


「私は、魔女シュタリア・レッグナート。最後の魔女にして貴方に終わりを告げる者」


 よし、決まった。我ながら中々に決まったと思う。

 悪魔の表情が変わる。怒らせるつもりだったのだけど、怒りというよりも少し驚いてる?


「魔女だと? 笑わせるな。魔女は絶滅したと聞き及んでいる。大方魔族が成り代わっているだけなのだろう。まぁいい。もうすぐ死者となる者の戯言など気に置く必要もない」


 コイツ、私を信用しないばかりか名乗ってるのに名乗らないつもりなの?

 しょうがない、少し下手に出てみるかな。


「これから死に行く哀れな私めにどうか貴方様の名を」


 私にここまで言わせた罪。その命で償ってもらうから。

 私がこうまで相手の名に拘るのには意味がある。

 高位悪魔には位階序列があり、強さがある程度決まってくる。推定、リグ以上だとすれば9位以内。

 私だって正直死にたくはない。覚悟を決めたと言っても勝ち目のない戦いに身を投じるなんて真っ平ごめん。


「下等種族に名乗るのも遺憾だが、まぁいいだろう。悪魔大神官の一人、第7位階メフィスト・フェレスだ」


 うわあ⋯やっぱりリグより上か。


 え、何⋯


 周りの景色が一変していく。


 今の今まで見晴らしの良い草原だったにも関わらず、赤黒い世界へと誘われてしまった。

 どういう原理なんだろ。


「逃げようなどとは思わぬように結界を張ったまでだ」


 マズい。


 結界を張られたことが?

 違うよ。私をただの雑魚だと思っているのなら、わざわざこんな手の込んだことをする必要はないはず。

 つまりは、私を強敵だと思っているということ。油断している相手に付け入るのは簡単だけど、どうやらそれは望めないみたい。


 不意に背後から重圧を感じた。


「たかだか小娘相手に随分用意周到ね」


 黒いローブを羽織った軍勢大凡20弱。

 私の背後から槍を構えて、その隙を狙っていた。


 《眷属召喚(サモンベテルギウス)


 現れたのは、魔界でも一緒に暴れてくれた闇王ベテルギウス。その強さはお墨付。


「背後のあれ、任していい?」


 ギウスはチラリと背後ではなく、前方の悪魔に視線をやる。


「御意。すぐに蹴散らし、加勢しよう」


 これで後ろのことは何も考えなくていい。目の前の悪魔にだけ集中出来る。


 闇色に紛れた無数の剣が上空を舞っていた。

 悪魔による先制攻撃。降り注がれる剣には猛毒が塗られていた。掠りでもすれば致命傷は免れない。


 コイツ⋯不可視(インビシブル)を使い隠蔽してやがったな。


 私には障壁があるからダメージは追わない。だけど、守りの要をなるべくは擦り減らしたくない。


 《聖域展開(セーフティドーム)


 私の魔力が続く限り展開される絶対防御壁。


 甲高い音を発しながら降り注がれる剣が聖域に阻まれる。


 てっきり本物の剣かと思ったけど、弾かれ勢いを失った剣は地面に散らばる前に消失していく。


 正面からは、悪魔が自身の拳を肥大化させ、聖域を殴っていた。


 殴られる度に魔力がゴッソリと持っていかれるのが分かる。


 聖域展開(セーフティードーム)を解除し、大きく右へ跳躍する。

 跳躍中に私の背丈程度はある火炎球を5個全てを悪魔に投擲する。


 悪魔は持っていた剣を乱雑に振るい、私の火炎球を掻き消してしまった。


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