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最後の魔女  作者: 砂鳥 ケイ
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最後の魔女42:やるべき事

 ニーナ視点

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 私は、もう生きるのが嫌で逃げるのが嫌でみんなの元に行きたくて、死を受け入れてしまった。

 結局それは嫌なことから逃げ出す事に変わりはないと言うのに。

 そしてその行いは、私を生かす為に身を賭してくれた人たちに対して最低の行いだと1人の少女に気付かされた。

 私よりも小さなその少女は、とてもとても強くて、そして優しかった。


 リアさん、いい人だったなぁ⋯


 こんな私を命懸けで助けてくれて、本当に⋯本当にありがとう。


 おかげでやるべき事が見つかりました。


「真実を暴いて、みんなの無念を晴らすから」


 そうと決まれば、まずはベラキール王国まで戻らないといけないわね。この姿のままだと、すぐに追っ手にバレてしまう。


 腰まであった長かった髪を肩ほどまでバッサリと切り揃え、身に纏っていた高価な服も全て売り払い、売ったそのお金で古着屋で一式揃えた庶民服。


 ほんの数時間前の私からは考えられないくらい変わったはず。

 辺りは闇に包まれ、行き交う人も疎らになってきた。


 調べた所によるとこの街からの乗合馬車がベラキール王国近くまで出ているようだから、始発便で向かう事にして今日はもう休もう。

 あ、でも少しでも節約の為に、今夜は野宿かな⋯

 逃げ出してからはこんな生活ばかりだけど、独りぼっちなのは、初めてかな。


 翌朝、危うく寝過ごしかけるもギリギリ始発便の乗合馬車へと乗ることが出来た。

 ギリギリと言っても出発時間を多少だけど遅らせてしまった。


 あっぶなかったぁ。でも私と同じように遅れて乗って来た人もいたんだから、私だけじゃないから許してもらおう。


 私の目指す目的地ベラキール王国までは出ていない為、その手前であるダーブルまで即ち終着点までの優雅な馬車旅。

 その後、半日程揺られて不意に馬車が止まった。

 普通に止まったのではなく、荒々しくと言うか、強引に止められた感じだった。


 外から声が聞こえてくる。


「ヒッヒッヒ、積荷と乗客を素直に渡せば、御者のお前には手出さねえぜ」


 もしかして、盗賊か何かに襲われてるの?

 これはマズいよ。何て運がないんだろう⋯


 乗り合わせた乗客が怯えている。


 馬車の窓のカーテンは閉めている為、盗賊たちからはこちらは見えない。

 乗り合わせた男たちが、馬車の扉が開けられないように必死に手で引っ張り抑えていた。


「おい、何だ!」

「グッ⋯」


 バタバタと倒れる音が聞こえた後、暫しの沈黙が続く。

 皆、固唾を飲んで見守っていると、外からドアをノックする音が聞こえる。


「御者のモックです。何が起こったのか分からないですけど、イキナリ盗賊たちが襲って来たかと思ったら、急に気絶してしまって⋯そのまま奴等の馬車毎見えない何かに運ばれて行ってしまいました⋯」


 何を言っているのかさっぱり分からなかったけど、皆で外に出ると、確かに盗賊が襲ってきた痕跡は見受けられる。

 馬車に刺さったままの短剣に、地面に広がる血の跡など。

 御者の話は、にわかには信じられない。

 だけど、助かった事には変わりない。


 その時、少し離れた場所に小さな人影? を見つけた。その人影は宙を舞っている。

 だけど、すぐに消えてしまった。

 妖精のような存在が確かにこの世界にも存在すると聞いた事がある。もしかしたら今のがそうなのかな? それとも気のせいだろうか。


 そのまま馬車は走り続けた。


 その後は特にトラブルなく、無事に終着地であるダーブルに到着した。


 馬車から降りると、既に外は真っ暗で馬車の停留場には人っ子1人見当たらない。

 同席していた乗客も私を除けば2人しか居なかった。

 私と一緒に遅れて乗り込んで来た人。フードを深々と被って怪しさ満点の人。


 馬車から降りた私は、そのままある場所へ向かって歩く。

 勿論、このままベラキール王国へと向かう。

 馬車旅の道中、途中の休憩の時に食料は買い込んでおいた。

 お陰で馬車賃と合わせて私の所持金はすっからかん。

 後はこの足で進むしかない。


 めげるな私!

 ここから王国までは、何度か通った事があるから、大丈夫。街道を真っ直ぐ進むだけ。いつもは宮廷馬車で8時間くらいかな?

 歩いたら、えっと、どれだけ掛かるんだろう⋯

 でも、進み続ければいつかは辿り着けるはずだよね。道は繋がっているんだもの。


 それにしても、夜は冷えるね。

 着の身着のままの為、コートなんてないし、寒さに震えていると、不意に暖かさを感じた。

 その後は不思議なことに寒さを感じなかった。寧ろ暖かさすら感じていた。


 私、自分で言うのもあれだけど、体力には自信がない。だのに、彼此数時間は歩いているのに、どう言った訳か全く疲れない。

 でも、ひたすら歩き、途中で寝心地の良さそうな木を発見すると吸い込まれるように眠りに落ちてしまった。


 気がつけば朝だった。


「ふぁーぁ、良く寝たな。あれ、何だか身体が軽い。てっきり筋肉痛で動けないと思ってたんだけど」


 そういえば、昨日から妙なことばかり起きてる気がする。誰かが私を手助けしている?

 亡くなった両親が天界から私を見守っているのかな?

 なんて、馬鹿なことを考えている暇はないよね。

 バックから、乾いたパンと陶器のビンに入れていたスープをゴクリと飲み干し、そのまま歩き出す。


 一直線の街道は嬉しいけど、心配していたモンスターがここまでまだ1匹も遭遇していない。

 正直、何の対策もせずにここまで来てしまった自分も馬鹿だとは思う。


 どれくらい歩いたのだろうか。

 何も考えずにまさに廃人のようにただひたすら歩き続ける。実際は数時間なのだろうけど、気分的には何日も歩いている感じ。


 背後から馬車が近付いてきた。


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