最後の魔女35:幼女との同棲
「ご主人様ひどいにゃ! もう少しでにゃももぺったんこになるとこだったにゃ!」
悪魔リグとの壮絶な戦いの過程で、戦地となった古城毎魔法で破壊してしまった。
勿論わざとじゃない。
あそこまでの威力の魔法は久々だったから少しコントロールを間違えただけ。わざとじゃない。
私だって誰の所有物かも分からない建物を無闇に壊したりはしない。
「眷属の分際で主に向かって何たる物言いか。主よ首を跳ねる許可を頂きたい」
シャモンが駄猫に対して物申してる。
全く、眷族通し仲良く出来ないのかしらね。
「許可する」
「待つにゃああああああ!」
全速力で駄猫が走り去り、その後をシャモンが音速で追い掛ける。
シャモン、それさ、さっきの戦いの時より速くない?
さて、うるさい連中が消えたし、帰ろうかなって、あれ、まだ生きてる?
「⋯⋯っす、酷い、酷いよぉ⋯痛いよぉ⋯ぐすんっ⋯」
瓦礫の中から何やら幼女の啜り泣く声が。
一体こんな場所に何処の幼女だろうね。
危ないなぁ。
声のする方へ瓦礫をちょいちょいとまたいで進み、持ち上げる。
その下にいたのは、勿論普通の幼女ではなく、悪魔リグだった。
声だけじゃなく、本当にベソをかいておられる。
いや、絵面だけなら年相応なんだろうけどね、貴方私よりもずっと年上でしょ? お姉さんでしょ?
悪魔に性別があるのかは定かじゃないけど。
「で、なんで泣いてるの」
あ、間違えた。なんでまだ生きてるの。の間違いだったごめん。
「あんたのせいでしょっ!」
ありゃりゃ、本格的に泣いてしまった。
あれ、もうこれ戦う気はないって事? 隙だらけだし、こんなの簡単に首チョンパ出来るよ。
悪魔の頭に手を伸ばす。
泣き止む様子はない。
私は非情で冷徹にならないといけない。
今一番しなければならない事を実行する。
相手は悪魔。人類の敵。
それは⋯⋯頭の上のツノを触る。
ぷにぷにした感触。意外と柔らかい?
もっと硬いものだと思ってた。人化中の悪魔と人との違いは、眼が紫色な部分ともう一つ。
頭に生えた2本のツノ。
教会で戦った悪魔のツノは長かったけど、目の前のツノは小さくて可愛らしい。
「っあん⋯いゃぁ⋯っあ⋯」
ちょっと何変な声出しちゃってるかな。心なしか頬も赤く染めちゃって。そんなに気持ちいいの?
感触は確かに悪くない。反応がついつい楽しくて、その後ももふもふじゃない、ぷにぷにを存分に満喫した。
「もうお嫁に行けない⋯」
何処で覚えたのそんなジョーク。
悪魔だよね? 結婚の概念があるの?
ツッコミは期待しないでね。心の中だけしかしないから。
「悪魔は交配しないにゃ」
いつの間にやら戻って来ていた駄猫がツッコミを入れやがった。
ていうか何で生きてるの? シャモンに首チョンパされたんじゃないの?
何だか遠くでシャモンが顔を抑えて蹲ってるような光景が一瞬。ほんの一瞬だけ視界の片隅に映ったけど、たぶんそれは気のせいで幻だよね。
見てはいけない幻だよね。
「責任取りなさいよねっ!」
「何の?」
頬を染めながら、泣きながら、幼女は私の目を見つめる。
「私と契約しなさい!」
後で悪魔⋯いや、リグに聞いた事だけど、悪魔にとって、ツノは大切なもので決して自分以外の誰にも触らせないらしい。
そんな事を知らない私はリグの初めてを奪ってしまった。
だから責任取って契約して欲しいのだとか。
ちなみに契約とは、悪魔が他種族と契りを結ぶ時に用いるもので服従の契約とも言うらしい。
完膚なきまでに私に痛めつけられて私に勝てないと悟ったリグは、自ら私の下僕になると言い出した。
最初は面倒だから断ろうかと思ったけど、自ら進んで下僕になると言う幼女に無下な態度は取れないよね?
魔女として。
でもリグは悪魔。人類の敵。いや、もうどうでもいいや。
契約と言うのは、血の血判だった。
リグは何処からか取り出した血判状を床に置く。
そして、親指を歯で噛み千切る。
皮膚の表面を薄くね。
私はそれを見様見真似で同じ事をし、互いの親指を合わせると、リグが呪文を唱える。
5分くらいで契約と言う名の儀式が終了する。
終了した途端、リグが倒れちゃって少しだけ焦った。
抱き抱えた瞬間、掌に暖かい湿りを感じた。
うん、大出血だね。
この血の量、致死量じゃない?
仕方ない⋯大事な下僕に就任して1分で死なれたら笑えない。
すぐに傷口を塞ぎ、溢れでてしまった血を体内に戻す。
勿論、全て魔法での処置。
私に病人怪我人の処置なんて出来ないから。
成り行きで、カムルまで戻り、宿屋のベッドにリグを寝かせる。
今朝出て行ったのにまた出戻りなんて恥ずかしいから宿は離れた別の場所を借りた。
ほんと、寝顔だけみればただの愛らしい幼女なんだけどね。
ほっぺもぷにぷにで柔らかい。
つんつんして遊んでたらいつの間にやら私も寝てしまった。
朝起きると私も一緒にベッドに横になっており、目の前にはリグの顔が、パッチリ目を開けてこっちを凝視している。
互いの顔の距離、僅かに10cm。
いや、別に幼女相手にそんな邪な気持ちはあるわけ無く、ましてや同性? 相手は人ですらない? あ、私も人じゃなかった。
と言うことは互いに人外だから問題ない?
いや、大有りでしょ。
「何見てるの」
「お姉様のご尊顔を」
「???」
お姉様?
えっと、いつから私の妹になったの?
下僕の契約は結んだけど、姉妹の契約は結んでないよね?
そもそも実年齢的には、私の方が妹なはず。
「お姉様とお呼びしたらだめ⋯でしゅか?」
ぐっ! 上目使い、顔を少し傾けてそんな顔して、出会った時の奥義舌足らず口調まで使いやがってからに⋯。
「何でもいい」
完敗ね。断れる訳ないじゃない。
照れ隠しで、すぐに顔を背けて起き上がる。
さて、どうしたものか。
「リグ」
「はい、お姉様」
リグは飛び起きると私の前まで寄って来る。
「これは、何?」
さっきからいい匂いがするとは思ってたけど、テーブルの上に暖かい食事が準備してあったのだ。
「お口に合うのか分からないですけど、作ってみました。食べてみて!」
何この子、お料理スキルまであるの?
もしかして私より女子力あるの?
いや、私は女子力が皆無なのは当然知ってるけどさ。
美味しい食事に飢えていたから、これはもしかしたらいい拾い物したかもね。




