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最後の魔女  作者: 砂鳥 ケイ
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最後の魔女23(青の教)

「お頭に会いたいって奴が来てやすぜ」

「ああ、どこの組織のもんだ?」

「そ、それが、可憐な少女でやして」

「はぁ? 可憐な少女なんて組は聞いたことねえぞ?」


 何かまだやり取りしてるけど、お構いなしに扉を蹴破って中へと強引に押し入る。


「な、なんだ貴様はぁぁ!」


 蹴破った部屋の中には、ここのボスと思われる髭面の人物と、その幹部であろう2人の人物が驚き慄いていた。


「お、お頭! あいつですぜ!」


 私に向かい武器を構える幹部の2人に対して、ボスが怒鳴りつける。


「やめねえかあああ!」


 その幹部2人の頭にゲンコツを落とすボス。


「何すんですかっ! 頭!」

「酷いっすよ⋯」

「だーってろ!」


 私はわざとらしく不敵な笑みを浮かべる。


「ずいぶんと元気そうね」

「あぁ? 頭に向かって馴れ馴れし⋯ぎょぉあぁ!」


 私に生意気な口を聞いた幹部に再びゲンコツが振り下ろされた。

 そして、ボスが私の方に向き直り、頭を下げる。


「姐御! ご無沙汰しております!」


 幹部2人の頭に手を当て、3人が並んで私に頭を下げている。

 少女に向かって強面の男たちが頭を下げる。

 滑稽ね。

 まぁ、そういう趣味は私にはないけど。


 私が姐御と呼ばれている所以は、今から15年ほど前に遡る。


 その日も私は、1人旅を続けていた。

 ガルディナ砂漠を横断3日目に差し掛かっていたそんな折、砂漠で野垂れ死そうになっていた1人の青年を発見した。

 発見した時は既に意識はなく、脱水症状で死の淵を彷徨っていた。

 私の献身的な介護で一命を取り留めた彼は、私とある約束をした。


「そうなんだよ。それで姐御には命を救われたって訳だよ」


 私との出会いを幹部の2人に大袈裟に語っている髭面の男。

 何が大袈裟って?

 私が天からの神の使いだとか、御告げを与えて下さったとか、何これ、神格化してない?

 聞いてるこっちが恥ずかしいんだけど。


「とまぁ、あれだ、姐御に無礼を働いたらこの俺が許さねえ! 仲間にもそう言っとけ、いいな?」


 幹部の1人が、今の話の疑問点を告げた。

 うん、だよね。私でもそこが気になるもん。


「15年前の話なのに、なんで当事者の姐御が、未だうら若き少女なんですかい?」


 この日3度目のゲンコツが幹部の頭に炸裂したのは言うまでもない。


「馬鹿野郎がああっっ! んなの決まってるだろぉぉが!」


 何だろ、私が魔女だってのは、知らないはずだけど。


「姐御は年を取らねえんだよ! 神の子だからな!」

「「「⋯⋯」」」


 私と幹部の2人が何言ってんすか⋯と若干呆れていた。

 まぁ、いいや。本題へと入る。


「言い付け通り、ちゃんと情報屋やってる?」

「ふっふっふ、良くぞ聞いてくれたぜ! ああ勿論だぜ姐御!」


 この頭のネジ緩んでるんじゃね? 的なあまり関わりたくない人物は、見た目通りのただのゴロツキではない。

 王都広しと言えど、情報屋を営んでいるのは彼だけだった。

 彼が情報屋と知っている人物もまた限られている。

 俗にいう、裏の人物専用の情報屋をやっていた。


 私は世界を旅しながら、偶然にも関わりがあり、尚且つ有望そうな人物には、将来自分自身に役立つ役職に就くように促している。

 別に暗示をしたとか魔法を使ったりは一切していないけど、こうして何年か後に出会った時に役立ってくれることは、実は意外と多かったりする。

 目の前のこのどうみてもゴロツキにしか見えない髭面の男も、私の言い付け通り情報屋を営んでいた。


 私は別に記憶力が良いとかいう訳ではない。


 関わりを持った人物には、印をつけるようにしている。

 印と言っても、消えない傷を身体に刻むとかそんな怖い話じゃないよ?

 魔法によって私にしか見えない印。

 私の目には、彼の名前であるゲイルとは別に情報屋という表示が頭上に出ている。


 偶然王都に来た初日に印を見つけた私は、こっそりと後をつけ、この場所を突き止めた。

 情報屋という訳だし、何かしら役には立つだろうと保険のつもりだったのだけど、ここでそのカードを切らせてもらう。


「教会と対立している勢力を教えて」


 幹部の2人が顔を見合わせる。

 何言ってんだこいつ。的な表情だろうか。


「えっと、あ、姐御⋯。わりいことは言わねえ。教会だけは手ださねえ方が身の為さ」

「ああ、そうだな。同業者が何人も殺されてるからな、命がいくつあっても足らねえ」

「だーってろ! お前ら!!」


 またしても無慈悲なゲンコツが幹部2人へと落とされた。

 もう何段コブが出来たのか、数えるのも億劫になってくる。


「俺が知ってる情報は⋯」


 昔は教会の横暴に対して反対勢力は両手では数えられない程にあったそうだけど、現在はその殆どが他でもない教会の手によって消されてしまったらしい。

 らしいと言うのは、表立って教会の犯行と立証出来ない為だった。

 専ら裏で秘密裏に対処しているということだけど、教会側は完全否定していた。


「だけど、昔から教会と対立している組織がまだ一つありやすぜ」

「どこ?」


 ゲイルは慣れた手つきでその場所までの地図を書き記した。


「青の教と名乗っている団体ですぜ。噂レベルなんすが、なんでもそのトップも聖女様らしいですぜ。国のお偉いさんも何人か所属していて迂闊に教会も手が出せないって話ですぜ」


 へー、他にも聖女様いるんだ。

 だとしたら少し面白い展開になりそう。


「ありがと」

「勿体無えお言葉!」

「じゃ、行くね」

「おい! てめえら! 姐御のお帰りだ! 全員外まで整列しやがれ!」


 何処にいたのか、この狭い建屋から20人程の男たちが出て来たかと思うと、両側に整列し見送ってくれる。

 歩き辛いったらありゃしない。


「いつでもまたお越しくだせえ!」


 なるべくもう来まいと固く決心した。


 道すがら、畏怖の目で見られている気がするけど、気のせいだと思いたい。さっきの光景を外から何人かが見てたからだろうけど。

 あんまり目立ちたくないのに。


 広場を越えた先に人集りが出来ている。

 なんだろうと思い、近付いてみる。


 当然私は背が低く、周りは大人たちばかり。密集している先など見えるわけもなく、少しだけ背伸びしてみたけど、やっぱり結果は変わらない。


 あまり話すのは好きじゃないけど仕方ない。


「何の集まり?」

「ああ、不定期で開かれる聖女様の治療さ」

「聖女様って、教会の双子?」

「いやいや、個人で活動されてるのさ。本当にありがたいこって。教会の治療だと、どうしてもお布施が必要だろ? ここだと必要ないからな」


 慈善活動の聖女様ね。

 もし、本当にそうなら教会が黙っていないと思うけど。

 是非事情を聞いてみたいな。2人っきりで話すチャンスがないかなぁ。


 治療が終わるのを待つこと1時間。


 何だか騒がしくなってきたな。


「おいおい、こんなとこに聖女様がいるぜ」

「教会の外に護衛も連れずにノコノコ出てくるなんざ誘拐してくれと言ってるようなもんじゃねえか」

「ちげえねえ」


 何だ何だ、いきなり悪党が登場したよ。

 このままだと聖女様ピンチ?


「おい、邪魔だ! 怪我したくなかったらさっさとどけっ!」


 治療に集まっていた人たちが散って行く。


 あなたたち、無償で治療して貰っといて、聖女様を見捨てるつもり?

 少しだけ不愉快な気分にさせられてしまった。


「はっ離してください!」

「いい女じゃねえか。こりゃあっちの方も楽しめそうだな」


 男たちが下卑た笑みを聖女様へと向ける。

 いつの間にか関わらまいと民衆の姿はそこにはなかった。

 この場にいるのは、聖女様と悪党6人に私だけ。


「おいガキ。見せもんじゃねえ! とっとと消えろ!」


 まぁ、そうなるよね。

 それに、私より年下にガキ呼ばわりされる筋合いはない。


 悪党どもを無視して、聖女様の元へ向かい、その手を掴む。

 悪党の手はチョップではたき落した。


「行こう」

「え、え?」


 聖女様がわたわたしているが、問答無用で連行した。

 悪党供はと言うと、追ってもこずにその場に佇んだまま。


 大広間を抜けて狭い路地へと入る。


 ここまで来れば悪党共も追ってはこないだろう。

 というか、立ったまま寝て貰ったからどの道追っては来れないんだけどね。


 やっと2人っきりになれたね。

 って、別に怪しい者じゃないよ?

 いや、十分怪しい気もするけど。


「自己紹介。私はリア。貴女は?」


 状況が掴めないのか、依然としてわたわたしていた聖女様だった。


「え、えっと、フェミナと言います、貴女は一体⋯」


 怪しまれてるけど、私の正体は言えない。少なくとも今はまだ。ごめんね。


「フェミナさんは、聖女様?」

「違います」


 彼女曰く、自分は治癒を使うことが出来るが、聖女とはある一定基準をクリアした教会に認められた存在を言うため、慈善事業でしている自分には該当しないと。


「聖女になろうとは思わないのですか?」

「そうですね⋯治癒レベルの基準はクリアしているので、なろうと思えばなれると思います」


 私も知らなかったことだけど、偏に治癒と言っても、レベルが存在するようで、少しの傷、怪我しか治せない者を3級治癒師と言い、次点が2級治癒師、部位欠損までの治癒の出来る1級治癒師、どんな傷も怪我も部位欠損も立ち所に治してしまう特級治癒師とあり、教会の定める聖女の資格は、2級治癒師以上を呼ぶそうだ。


 何処か遠くを見るような目をしながら、


「教会からは何度も誘われたんですけどね」

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