最後の魔女134 メイドのアリス
「私、もう一歩も歩けません⋯」
ミルエルのダンジョンに入ってから数時間が経過していた。
道中、ひっきりなしに襲って来るモンスターは全てリグが始末している。私は別に歩くのも慣れてるからいいんだけど、リリベルは結構辛そうにしている。
何よりも辛いのは代わり映えしない景色だろうか。進めど進めど見えて来るのは岩肌の洞窟一色。流石に私も飽きてきたかな。
「休憩しようか。リグは警戒を怠らないでね」
「はい! お任せ下さいお姉様」
休憩がてら食事にしようかな。魔法鞄から鍋と食材を取り出す。
そして、
《眷属召喚》
メイド服の服を着た女性が目の前に現れる。
彼女の名前はアリス。
同じメイド服でも戦闘に特化したシェリちゃんとは違い、家事スキルは勿論のこと、ありとあらゆるマッサージに精通している。
アリスは出現するや否やすぐに片膝をつき、首を垂れる。
「お久し振りでございます、リア様」
「アリスも久しぶりね、元気にしてた?」
アリスは戦闘は出来ないけど、本当の意味で私のメイドさんなのだ。
「私たち眷属に元気なる概念は御座いませんが、いつ何時主であるリア様に呼ばれても良いように心身共に万全の状態を維持しております」
うーん、欠点ではないのだけど、一つだけ物申すとすれば、アリスはすんごく真面目なとこだろうか。私の冗談が通じない。
「早速で悪いんだけど────」
「スモールボアのシチューに山菜の天ぷら、白飯に先ほど採取しました岩苔を振りかけとしてお召し上がり下さい」
「えぇぇ、今の見えた!? 材料が一瞬で美味しそうな料理になったよ! 何これ、魔法? それとも幻術⋯」
リリベルが目をまんまるにして口をアングリ開けていた。
驚くのも無理はない。そう、アリスは優秀なのだ。私がまだお願いする前に状況を察知し、行動に移す。でも、シチューと岩苔は分かるよ? 一瞬、岩肌から採取しているのが見えたしね。だけど、この山菜って、何処から仕入れたんだろう⋯。それに天ぷらって、油は何処から! 相変わらずの早技過ぎて私でもほとんど見えなかった。
まぁ、でも一つ言えることは、アリスの作った料理はどんなものでも凄く美味しいってこと。
見えなくなるとこまで遠狩していたリグを呼び戻して、三人で休憩にする。
「アリスさん、私冷たいものが飲みた──」
「こちらをどうぞ」
アリスに関してはもはやどうやって準備したかなどは考えてはいけないのだ。それは、アリスだからで通用するんだから。
「アリス、ご飯が終わったらみんなにマッサージをお願い出来るかな」
「コースはいかが致しましょうか」
「そうだね、じゃ、極上の至福コースで」
私は睡眠は必要ないんだけど、以前聖女だったアンにやった時に凄く好評だったんだよね。その時に色んなマッサージのネーミングをアンと一緒に考えたんだっけなぁ、懐かしい。三日寝なくても大丈夫コースとかあったっけね。
「かしこまりました。御三方同時に処置させて頂きます」
「わぁ、私マッサージなんて初めてかもしれません」
ウキウキ気分なのはいいけど、初めてされるならば少しだけ刺激が強いかもしれないよ私はもう慣れっ子だけどね。
そうして、マッサージにより洞窟内で甘い声色が響き渡ったのは言うまでもない。




