最後の魔女132 記憶
「ボーッとして、お姉様どうかしましたか?」
私とリグとリリベルは精霊の森で精霊の王さまに、あるお願いをしていた。
それは⋯⋯
「その様子、どうやら精霊たちに時の記憶に当てられたようじゃな」
時の記憶とは、極々稀に精霊の悪戯でその者の過去の記憶を本人に見せる行為のこと。
「⋯時の記憶?」
「うむ。精霊ネットワークを使ってもいいと言う精霊たちからの了承の証じゃろう。懐かしいことを思い出したのではないか?」
私は⋯⋯うん、思い出した。そう、あの時⋯悪魔王サタンと対峙して、大事な何かを無くしてしまった。その大事な何かがずっと思い出せなかった。
ごめんね⋯アレンくん⋯。今まで忘れていて。今すぐは無理だけど、必ず葬いに行くからね。
「リアさん、泣いているの?」
「あ、ごめんね、私ね、思い出したんだ。無くしていた記憶を。封印される前の曖昧だった記憶をね」
二人が若干驚いたような顔をする。そりゃ、急に思い出したなんて変なことを言ったらビックリするよね。
「えっと、お姉様、何というか表情が明るくなりましたよね、あっ、当然今のお姉様もとっても素敵ですよ!」
「何処となく口調も可愛らしくなりましたよね」
失っていた記憶を思い出した影響なのか、封印される以前の口調や表情に変わっていたみたい。指摘されるまで気が付かなかったけど⋯。
その後、私は妹たちに今まで話すことのなかった過去の生い立ちを語った。
いつのまにやら辺りはすっかりと暗くなっていた。
「悪魔王サタンですか⋯」
「あぁ、リグからすれば、従うべき主、王にあたるんだよね」
「何度か会ったことはありますが、私個人としては別に何とも思ってないですね。敵対するとなれば、当然お姉様の味方ですよ。と言っても悪魔同士は戦えないですけどね」
「リアさん! もしそんな時が来れば微力ながら私もお手伝いさせて頂きますよ。
よく出来た妹を持つとお姉ちゃんは幸せだね。
精霊王さまの計らいで、夜も遅いからと、今夜は精霊の森で一泊させてもらうことになった。
結局建屋の中は狭くて寝ることは叶わなかった為、自前の寝袋を三人分取り出し、広間で野宿となった。
精霊ネットワークは現在進行形の情報だけではなく、過去の情報をも知ることが出来る。それは私が生まれるよりもずっとずっと昔の情報でさえも。
あまり寝るなんてことはしないのだけど、今日だけは無性に眠りにつきたかった。その日見た夢は、よく覚えてないけど、なんとも心地よく穏やかでこんなに清々しい朝を迎えたのは何十年振りの事だろうか。




