最後の魔女130 ダンジョン消失の危機
ついに彼等が最後の階層まで到達してしまった。
最終階層は一応ボスの支配領域となっている。一応と言ったのは、そのボスがまだ存在していないからだ。
「だって、しょうがないじゃない! どうせなら強いボスを配置したかったんだもん。ポイントが貯まるのを待ってたのよ!」
より強いボスを呼び出すには相応のポイントが必要であり、つまりはそう言った理由で、このボス階層にはボスがいないのだ。
「はぁ⋯⋯私の命もこれでお仕舞いかぁ」
悲しい言葉で潤んだ瞳でこちらに視線を送るも、私はそれをそっぽを向いてスルーする。
そんな目で見られたって無理なものは無理。だって、相手が悪いよ。あいつ、私より強いし。
「っすん、うぅぅ⋯お願いします⋯リア様、助けて下さい⋯」
目を逸らす私の袖を掴み泣きながらヒスイが泣きながら懇願する。
私だって、鬼や悪魔じゃないんだから、出来る事なら見捨てたくない。だけど⋯。ん、ああ、そっか。別に戦わなくてもいいんだね。彼等をここまで辿り着けなくすればいいのか。一つ面白い事を思いついた。
「確か、ヒスイが使えるスキルに魔法転送なるものがあったよね?」
何故私がそんなことを知ってるのかと言うと、いつだったかヒスイがダンジョン運営に関してどんなスキルを取得すればいいのか相談に乗ってあげたことがあり、取得スキル一覧を見せて貰ったことがあった。
「あ、あるけど、何をするの⋯」
姿を晒さずに魔法だけを彼等の元に飛ばせるのなら、それ即ち私の独壇場。ずっと私のターン。
「どうせダメ元だし、やってみる。今から順次魔法を使うからヒスイはそれをどんどん彼等の元へ転送して」
「何だかそれ面白そうね。やってやろうじゃない、あいつら今に見てなさいよ!」
さっきまで涙で顔がグシャグシャだったのに、いつの間にか高慢で高飛車ないつものヒスイへと戻っていた。
まずは、最下層ダンジョンマスターの間へと繋がる扉を封鎖させてもらう。
《炎獄壁》
ヒスイに出現させる位置を細かく指示し、大扉の前に炎の壁を配置する。
突如として現れた炎に戸惑う騎士達。
あの強いお爺さんはっと⋯動かれる前にその動きも封じさせて貰うよ。
《水牢獄》
私が発動した魔術をヒスイが転送する。
よしよし、お爺さんが水の膜で包まれた。これで少しは時間を稼げるかな。
うんうん、水だから、ご自慢の剣じゃ斬れないよね。
さて、残った騎士さん達にはこっち。
《雷地雷》
床一帯に電撃が走る。
騎士さんたちは全身金属の靴に鎧だからね。かなり効果あるんじゃないかな。
うんうん、全員痺れて動けなさそうだね。
あのお爺さんは⋯って、おかしいな、水って斬れたんだっけ? いやあれは、蒸発してるのか。ありえないんだけど?
私の水の牢獄を物ともせず、サッと振り払うと、何事もなかったかのように刀を鞘へとしまった。
濡れていたはずの服も乾いてるし、ほんとあのお爺さん規格外なんだけど。
次の一手をどうしようかと悩んでいると、お爺さんは何かを騎士達に告げると、そのまま入り口の方へと歩き去ってしまった。
先程の一撃で満身創痍の騎士達は、おぼつかない足取りで、皆お爺さんの後を追い、ダンジョンを後にした。
「やったよリア! 私達の勝利だよ!」
私はヒスイのように素直に喜べなかった。
「得体の知れない攻撃と仲間の犠牲を覚悟する必要があったから今回は撤退しただけと思う」
「え、じゃあなに、また来るってこと?」
「たぶん」
「あ、でも見てみて! 奴等を追っ払ったおかげでかなりダンジョンポイントが溜まったよ」
ヒスイはまるで子供のように目の前のスクリーンを見てニヤニヤと笑顔を浮かべていた。




