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最後の魔女  作者: 砂鳥 ケイ
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最後の魔女127 悪魔王サタン3

 視界が段々と暗くなり、凄まじい程の重圧がその身に伸し掛かる。私は堪えきれずに膝と手をつく。

 そんな這いつくばる私を腕を組み見降すサタン。

 これは動けない⋯⋯。私が使う重力魔法に近い。本来なら転移で離脱するしかない。だけど、今は転移が使えないし、強引に脱出する以外に手は──。


「何だ、魔女とはこの程度か。ふん、早く動かねば、その矮小な頭を踏み潰してやるぞ」


 発言直後、容赦なく私の顔にその足を振り下ろす。

 強引に体を捻り、ギリギリでそれを躱すと地面に設置しておいた風爆が破裂し、その衝撃を利用して重力地帯から逃れた。


 このタイミングで頭の中で詠唱を紡ぎきる。



 《氷結世界(フリージングワールド)


 辺り一帯の温度が一瞬で氷点下を下回り、悪魔王サタンとその周辺が氷の塊に閉ざされた。


「これだけだと、まだ足りない⋯」


 体内に保有している莫大な魔力を杖へと込める。

 魔力の込められた杖が眩い光を発する。

 駄目押しだよ、これでも喰らえ!


 《永久絶対零度(エターナルアブソリュートゼロ)


 氷の世界の上から更に氷結を重ね掛けする。

 まだだ。それでもまだ安心出来ない。


 氷塊に手を触れる。溶かされないように魔力を注ぐ。

 氷漬けにされれば徐々に体力を奪われ、やがて死に至る。

 常人ならば数秒。だけど、コイツは一体どれ程の時間が必要なのだろうか。

 まともに、対峙すれば勝ち目はないと踏んで持久戦を選択した。だけど、それでも、勝てる気はしない。

 私の膨大な魔力が尽きるまでにはたしてこの化物の生命を止めることが出来るだろうか。


 絶対零度の影響で、辺り一帯が極寒に曝されていた⋯はずだった。

 僅かながら周囲温度が上昇する。気のせいかもと思ったけど、それは違った。

 目の前の氷塊から蒸気が立ち昇る。

 嘘⋯ありえない。これが溶かされるなんて⋯私が魔力が注ぎ続けている限り、絶対ありえないよ!


 あっ⋯⋯。

 な、なんで魔力が⋯。


 気が付いた時には魔力が殆ど底をつきかけていた。

 絶対零度の氷塊は無残にも音を立て崩れ去る。


 中から氷漬けにされている悪魔王サタンが現れる。


「氷を通して貴様の魔力を吸わせて貰った。これ程までに膨大な魔力を蓄えていようとは。前言撤回だ。魔女がここまで強者だとは思わなかった。こんなのが数で存在していれば、人族が魔族に勝利したと言うのも肯ける」


 はぁ⋯はぁ⋯目眩がする⋯。魔力欠乏症の影響で身体が思うように動かない。意識を手放してしまえばどんなに楽なのだろう。でもその瞬間にしんじゃうよね、私。

 ははっ、ごめんねアレス君。こいつを倒してお墓作って上げたかったけど、どうやら無理みたい。


 一度逃げて機会を伺う? 転移は使えないけど、あの使い捨ての魔導具なら逃げることは出来るかもしれない。

 だけど⋯⋯こいつを野放しに出来るわけがない。


 悪魔は人族の敵。こんな化け物がひとたび人族の世界を襲えば抗える者なんていない。瞬く間に滅んでしまう。

 本当は、ただ楽しく生きていけたらそれで良かったんだけど、仕方ないよね。


 私は生き残ることを諦める。


 アレス君の為でもあるけど、家族を仲間を皆殺しにされた人族の為に命を捨てるなんて知ったら、みんな怒るかなぁ。お姉ちゃん⋯今行くからね。


 《魔女の最終定理》


「ここで殺すのは惜しい人材だな。だが今は時間がない。そろそろ終わらせて貰うぞ」

「ええ、これで終わり。貴方も⋯私もね」


 《伍・封印(シーリング)


 右手を前へと突き出す。

 私の身体が虹色の炎で包まれる。目を奪われても可笑しくない程にそれは綺麗に光り輝いていた。まさに生命力そのものを燃やしていたのだ。

 やがてその光が右手に収束する。

 この魔法は魔法大全集先生に記載してある全ての魔法を取得した時に初めて覚えることが出来る魔法の一つ。私の生命を媒介にして発動する封印魔法。

 こればっかりはいくら化け物の貴方でも争うことは出来ない。どれくらいの間封印していられるのかは分からないけど、私の命を賭けるんだもん、永遠に近い歳月封印されることを願うよ。


 収縮した光が悪魔王サタンの元へと飛んでいく。


「封印術か。下らんな」


《強制反射》


 悪魔王サタンへターゲッティングされたはずの封印魔法が着弾する瞬間、何かに弾かれ私の元へと戻って来る。

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