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最後の魔女  作者: 砂鳥 ケイ
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最後の魔女124 ダンジョン踏破

「ここは⋯」


 迷宮ダンジョン地下百階層にあるダンジョンマスターの間。

 意識を失っていたアレスが目を覚ます。

 アレスはリアと別れてから、ずっと意識を失っていた。途中、何度か自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、あれは夢だったのか当人は知る由もない。


「アレス君! 気が付いたのね」


 すぐに駆け寄る。


「僕は一体⋯⋯ここは⋯ダンジョンの中なのか?」


 アレスは操られていた状態でのリアとの戦闘の反動で身体の自由が効かなかった。


 《アクセラレーション》


 肉体の持つ潜在パワーを最大限まで開放する技だ。

 しかし、その反動で少しの間身体が動かなくなる諸刃の剣でもあった。


 私は別れてから今に至るまでの説明をアレス君にする。


「じゃあ、僕たちは迷宮ダンジョンを攻略したのか?」


 妖精さんに視線を向ける。

 ボーッとしていたのか、慌てて取り繕う。


「えと、そうだね、二人共迷宮ダンジョン初の踏破者として認定するよ!」


 突如として、周りに巨大な宝箱が出現する。

 中には金銀財宝のお宝が所狭しと入っていた。


「最初の踏破者への報酬だよ。と言っても持ち帰れる分だけだけどね」


 このダンジョンに挑み散っていった冒険者の所持品はダンジョンが吸収する。その中でも特に高価な品が最初の踏破者へと送られる。それはまさに八十年分の量だった。


 量にして、ざっと十人乗りの大型馬車十台分はあるだろうか。普通に考えたら持って帰れる量じゃない。普通の人ならね。


 私は目の前の財宝の山を魔法の鞄(マジックバック)へと全て詰め込む。


 妖精さんはその様を終始目を見開き何故だか驚いていた。


「あはは⋯⋯魔女ってほんとハイスペックなのね」


 その後、妖精さんとたわいのない雑談をする。

 ちなみに妖精さんの名前はないそうだ。ダンジョンマスターとして生を受け、他に何をする訳でもなく誰とも話す訳でもない孤独な生活を送っていた。

 私も孤独だけど、私には眷属たちが居たからね。寂しくはないよ。でも、この妖精さんはずっと一人ぼっちだったんだね。


「じゃあさ、私がお友達になってあげよっか?」


 妖精さんは意外そうな顔をしたが、悩んだような素振りを見せた後、涙を一雫溢した。


「いいのですか?」

「いいよ。最初のお友達だよ!」

「僕も混ぜてくれよ」

「あはっ、ごめんアレス君、除け者にしちゃってたね」

「別にいいんだけどさ。あぁ、そう言えば、踏破者の報酬に何でも願いを叶えるって言うのがあるって聞いたんだけど?」


 その時だった。

 微かに大地の揺れを感じたかと思えば、すぐに立っていられなくなる程の地響きとなった。

 廃神殿が崩れ去り、花畑がヒビ割れる。


「なになに、何がおこったの!」

「ぐぬぬ、これは⋯⋯何者かが強引に下層に渡ろうとしているね」


 天井が崩れ去り、一人の人物が降り立った。

 その者は背に漆黒の翼を生やし、腰にまで届きそうな程の長髪で無表情の能面を被っていた。


 天井に空いた大きな穴。先程の妖精さんの言葉。もしかして、コイツは真っ直ぐ地面に穴を開けて降りて来たってこと?

 私も道に迷った時、それを考えたよ。だけど、かなりの高火力でやっと小さな穴が開く程度だった。しかも、それが一瞬で修復されてしまったから、無理だと判断したのに。だとしたら、目の前のこの人はそれだけの手段を持ち得ているということ。


 その人物は私たちを品定めするかのように見降ろしていた。


「どいつがダンジョンマスターだ」


 抑揚のない声に性別の程は知れない。まして仮面を被っているので表情も分からない。


 妖精さんが前に出る。


「私がダンジョンマスターよ。アンタ、何てことしてくれたのよ!」

「はて、それは真っ直ぐ降りて来たことを言っているのか?」

「そうよ! しかもアンタ、わざとダンジョンの機能が弱くなるこのタイミングを狙ったわね」


 ダンジョンは生物のように生きている。破壊されればすぐに修復され、モンスターも一定時間が経過すれば生き返る。

 しかし、唯一その機能が弱まる時間がある。

 それは、踏破されダンジョンマスターがその姿を見せている時だ。

 本来そんなことを外部の者は知る由もない。

 ましてや、踏破されたタイミングなど分かるはずもない。


「攻略するのにルールなどないはずだが?」


 完全に私とアレス君は蚊帳の外だった。と言うより、絶対に関わったら駄目だと私の魔女としての本能が大音量で警鐘をあげている。


「何が目的なの?」

「踏破者の報酬、全ての願いを叶えると聞いている」

「残念だけど、報酬を上げることは出来ないわね。何よりその報酬は一番最初に踏破した者たちへ送られるの。アンタには権利はないわ」


 辺り一帯の空気が変わる。

 ピリピリとした殺気紛いの気配に、私はアレス君を引っ張り、後方へと距離をとる。


 いま明確に向けられた殺気は恐らく私に向けられたよね。


「アレス君は下がって」


 強化魔法を一式自身へと施す。


「ちょっと何馬鹿なことをしようとしているの。私の許可なくこの場所での戦闘を禁止するわ」

「コイツを消せば我が最初の踏破者となるであろう。それだけのことだ」

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