最後の魔女122 ダンジョン攻略3
ここは地下九十三階層のどこか。
私は一人全人未到覇ダンジョンを充てもなく彷徨っていた。でも、何故だか分かる。アレス君はもっと地下にいるんじゃないかって。魔女の勘ってやつかな。
この階層に入ってどれくらいが経ったのか。お腹の空き具合から、たぶん二日は経ったんじゃないだろうか。
はぁ⋯。どれだけ広いんだろう。歩いても歩いても、目に映るのはモンスターばかり。それに、今まではまんま洞窟の中って感じだったのに、全貌は見渡せないし、奥行きも広いし、天井も見えないくらいに高い。
何かの力に邪魔されて先に進めてないのだろうかと疑うレベル。
こんなに長時間篭るつもりは無かったから、そろそろ食料が心許ないなぁ。アレス君に渡したマジックバックには、たくさん詰め込んでおいたからそれに関しては安心だけど。
後、このダンジョン内はいくつか使用出来ない魔法があった。
一つは転移。
諦めて一度外に出ようと思ったら、何度やっても発動しなかったんだよね。
くそう。ちゃんとダンジョンに入った際に確認しておくべきだったよ。
もう一つは、眷属召喚。
こういう時の為に探索が得意な子がいたのに。発動しなかった。
ぐぬぬ。
だから、下層に降りて攻略する以外に手立てがないってのに⋯
「なんで下に降りる階段がないのよ!」
誰が聞いてるわけでもなく、大声で怒鳴り散らす。
岩肌の空間に虚しく私の声だけが木霊する。
冷静にならないと駄目だよね。
私は頭の回転は良くないって自負してる。一般知識もないし常識もたぶんあんましない。自信があるのは、魔法に関する知識だけ。これに関しては誰にも負けないよ。
そだね、もしこの現象を魔法に置き換えるなら⋯幻影、幻惑系の魔法かな。人の五感に働き掛けて誤った情報を真実として思い込ませる。私はあんまし得意ではないけど、当然それらの魔法を解除する魔法もまた存在する。
《解除》
ガラスが割れるような音が辺りに鳴り響き、今まで見ていた景色が崩れ去り一変する。
先程まで広大で奥行きが広く天井も高かった景色がいつものジメジメした洞窟に戻っていた。
まさかの展開に考えが追い付かない。
そして、目の前にはこの幻影を創り出していたランプの形をしたモンスター? が私をジーっと睨み付ける。
お前か、お前なのか!
また幻影を見せられたらたまらないのでサクッと消し去ると、その奥にあれだけ歩いても見つけられなかった下層へと続く階段が現れた。
その後も睡眠を必要としない私は、それこそ不眠不休でひたすらアレス君を見つける為に下層攻略を続けた。
そしていつしか九十九階層で下層へと続く階段を発見した。
結局ここまでにアレス君を見つけることが出来ずに私も疲弊しきっていた。
これまでの連戦による魔力の消費がここへ来て身体にズッシリと重く伸し掛かる。
はぁ⋯はぁ⋯流石に意識飛びそ。
食糧が尽きて恐らく三日くらいだろうか。
水は魔法があるから事欠かないけど、流石にそろそろ倒れそう。
でもアレス君はきっと私を待ってるはずだから⋯一分一秒でも早く行かないと駄目なんだ。
這うようにして下へと続く階段を降りると、その先に広がっていたのは、まさに楽園と呼ぶに相応しいお花畑だった。
その可憐さと雄大さに一瞬だけ疲れも忘れて周りを見渡す。
見渡す限りのお花畑にまたしても騙されそうになった。
そうだよ。ここはダンジョンなんだからきっとまた幻影か何かに騙されてるに違いない。
《解除》
しかし、風景は変わらない。
ということは、この景色は本当なの?
背後から私に近付く足音が聞こえる。
咄嗟に振り返ると、そこに立っていたのはずっと探していたアレス君だった。
やっぱり私の勘は正しかった。ここに居たんだね。
「遅かったじゃないか。ずっと待ってたんだぞ」
「ごめんね、これでもかなり急いだんだよ。でも、無事で良かった」
「僕は運良く九十五階層に飛ばされてさ、モンスターは強くて倒せないから、隙を見て逃げるように下の階層へと逃げて来たんだ」
「そうなんだ。私も上へ戻る階段が見つからなくてさ、下へ下へ降りたんだよ」
何だろう。話の節々に妙な違和感を覚えるのは。
アレス君は強いけど、九十五階層から下はわんさか強いモンスターの巣窟だった。いくらアレス君でも逃げ切れるとは思えない。私は問答無用で全て蹴散らしてきたけど。まぁ、お陰で保有していた魔力は底をついちゃったけどさ。
それ以外にも不自然な点はある。
強制転送で飛ばされてから一週間以上経ってるのにアレス君の衣服は全く劣化していない。
私といた頃はモンスターとの交戦ですぐに傷ついてしまうから修復の魔法でいつも新品同様にしてあげていたのに。つまりは戦闘を全くしてないってこと。
見た目はアレス君に間違いない。私は鼻がいいから匂いも本人に間違いない。それは断言出来る。
目の前の人物はアレス君だよ。だけど何かが違う。
「アレス君に何をしたの?」




