表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の魔女  作者: 砂鳥 ケイ
117/145

最後の魔女116 最期の時

 現在、死神の夜の本部一室にて、副団長のガーベルの喉元にアレスは短剣を突き立てていた。


 周りの同業者がアレスを静止しようと声を掛けるもアレスは聞く耳を持たない。


「お前は俺たちを敵に回してでもあんな少女が大事なのか」

「アイツは僕に大切なことを思い出させてくれた。気付かせてくれた。頼む、お願いだ。どうか見逃して欲しい」


 急にアレスの背後から現れた人物は、躊躇うことなくアレスの脳天へ短剣を振り下ろす。

 アレスは咄嗟に反応し、前方へ側転してそれを躱す。


「馬鹿かお前ら。そいつは裏切り者だ。すぐに殺せ」


 死神の夜に所属している暗殺者は十二名。その中で突出して実力が秀でていた者が二名いた。

 一人はアレス。そしてライバルでもある今アレスに睨みを利かせているジュードだ。

 ジュードは何でも自分が一番でなければ許せなかった。必死に鍛錬を積み強くなっても常にアレスが隣にいた。実力の近いアレスのことを以前から鬱陶しく思っていた。追い越せないならばいっそのこと殺してしまえばいいのではないか。機会があれば何度殺してやろうと思ったことだろうか。

 今回の一件は邪魔なアレスを合法的に排除出来るとジュードはその口元を緩めていた。


「ジュード。僕はお前と戦いたくない」

「は? 裏切り者の末路はいつだって死だけだ。お前をこの手で殺して俺の方が上だったと証明してやるよ」


 アレスは歯痒さから唇を噛み締める。目の前のジュードもそうだが、リアに向けて放たれた刺客のことが気掛かりだった。

 他の者ならいざ知らず、実力が橘高しているジュード相手に易々と刺客を追わせてはくれないだろう。


 故にアレスが選んだ答えは⋯⋯一瞬で勝敗をつけることであった。


 一旦退き、窓から外へ出る。

 すぐ背後から追ってくるジュード。


 アレスはこれから繰り出す技に誰も巻き込ませない為に最適な場所を探していた。そんなアレスの背後から見えない投擲が襲い来るも、視認出来ないはずの短剣をアレスは背後を確認することなく躱していく。


 《閃光札》


 何度目かの投擲を躱していると、アレスが一瞬目を見開いた。躱したはずの短剣が目の前で閃光に光り輝いたのだ。

 目が眩み動きが止まると思っていたジュードだったが、アレスのスピードは変わらない。それどころか以前にも増してその速度を上げていた。

 ライバルでもあるジュードのことを誰よりも意識し、研究しその動きを熟知していたアレスはジュードが次にどう動くのかある程度の予想はついていた。

 これに納得のいかないジュードは苛立ちを隠せず次の行動に移る。


 突然その動きを止め、ニヤリと口元を緩ませる。


「お前相手ならばこれも惜しくはない」


 ジュードは懐から取り出した黄色の玉をアレス目掛けて投擲する。

 これまで背にして逃げるだけだったアレスは急に背後を振り返り、黄色の玉を警戒し、腕を交錯させる。

 その途端に黄色の玉が赤く光出したかと思えば、そのまま大爆発を引き起こした。

 周りに点在していた家々諸共炎の柱に包まれた。


「馬鹿野郎! 他人を巻き込むな!」


 直撃は免れたもののガードしたその手には、火傷の跡が見える。衣服も所々焼け焦げていた。

 流石のアレスもジュードがこんな強硬な策を使うとは考えていなかったのだ。


「重罪人を狩る為ならば手段は選ばん」


 そのまま足の止まったアレスに畳み掛ける。

 脇挿しを抜くと、高速で斬りつける。アレスも短刀でそれを受ける。

 その衝撃で二人の足元がヒビ割れ、揺らいだ。


 突如として始まった二人の戦いに周りにいた人々が悲鳴を上げながら逃げ惑う。アレスは瓦礫の崩壊に巻き込まれそうな住人を庇いながら応戦する。


「ジュード⋯お前、一体何人の罪なき命を奪ったと思ってる」

「知るか。標的であるお前を狩る為だ。小さな犠牲など知ったことか」


 周りを気にせず最大限にその力を奮うジュードに対して、住人たちを守りながら戦うアレス。結末は目に見えていた。次第次第に追い詰められていき片腕が斬り落とされ右眼も斬り裂かれてしまった。


「惨めだな」


 血塗れで倒れ伏せるアレスの胸元に剣を向ける。


 アレスに誤算があったとすれば、追い詰める為にジュードが手段を選ばなかったことだろう。


 僕は死を覚悟した。自分はここまでだと。

 今まで多くの命を奪ってきた身。いつか自分の命が刈り取られる番が来た暁には素直に従おうと常日頃から覚悟は決めていた。

 しかし⋯しかし、心残りがあるとすれば、僕のせいで何の罪もない少女が殺されてしまうことだ。

 僕に力があれば救うことが出来たかもしれない。


「命乞いでもすれば俺の気が変わるかもしれないぜ?」

「命乞い⋯? 誰がするかよ。やるならさっさとしろ」

「あばよ。お前を殺した後でお前が守ろうとした女もきっちりと俺が殺してやるからな」


 クソ野郎が⋯。


 目を瞑り、もうじき訪れる最期を待つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ