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最後の魔女  作者: 砂鳥 ケイ
113/145

最後の魔女112 黒の執行人

 行く宛もなかった私は精霊の森で二週間ばかりの時間を過ごしていた。

 精霊の森はそれこそ幻想的な世界で、その様は外界とはまるで異なっていて、それこそ時間を忘れてはしゃいでいた。


「居心地がいいのは分かるけどにゃ。いい加減また旅を再開しないのかにゃ」

「分かってるよ。気が付いたらお婆ちゃんになっても困るしね」

「もうなってるにゃ」

「ああ? 何か言ったの?」

「にゃんでもないにゃ!」


 全く失礼しちゃうよね。私はまだピチピチの二十代だってのにね。


「ねえ、リア。さっきの話は本当なの?」


 呪怨騒動の後、精霊さんのお友達が一杯出来た。その中でも当事者だったティナが懇意になって私とずっと一緒に行動を共にしてくれていた。


「そうだね。いつまでも厄介になるわけにはいかないからそろそろ出発しようかなって思ってるよ」


 ティナは私の袖を引っ張り「行かないで」と懇願する。好かれるのは嬉しいけど、私のことを待ってる人がこの世界にたくさんいるはずだから、だからごめん! 泣かないで、止めないで。なんてね。

 善は急げってね。名残惜しいけど気が変わらない内に出発しちゃおう。


「ごめんね、きっとまた戻って来るから。またたくさんお話ししようね」

「うん、約束だよ。絶対ね」


 その後、旅立つ旨をティナと女王様にしていると、見事なまでの髭を蓄えた人型サイズの精霊さんが私の前に現れた。


「リア、ずっと不在で紹介出来なかったけど彼が私の夫よ」

「魔女の嬢ちゃんよ。妻共々世話になっておる。また、此度の治療の件、感謝するぞ」


 ええと、女王様の夫ってことは、王様⋯ひえええ、お、王様って一番偉い精霊ってことだよね。それに凄い迫力だよ!


「ちょっとアナタ。リアが萎縮しちゃってるじゃない」


女王様に頭を叩かれた王様は申し訳なさそうに頭を下げる。


「んぉ。すまぬな。あまり人族と話す機会などないのでな」


 精霊王様は精霊の全てと繋がっていて、その事実を全て把握している。だから、私のことも全部知っていた。色々お喋りして最後に贈り物をくれた。


「世話になった礼じゃ。其方に精霊王の加護を授けよう」


 後で分かったけど、この加護というのが実はとんでもない代物だった。これのおかげで私が生きながらえたと言っても過言ではない程に。


 最後は終始ペコペコお辞儀するだけと化した私だった。

 たくさんのお土産を抱え精霊の森を出た私は、次の街へと向かった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 グラナダでの出来事


 最近この街ではある事件が住民を恐怖に震え上がらせていた。


「おい、聞いたかよ。また犠牲者が出たんだってよ」

「おいおい一体これで何人目だ?」

「だけどよ。狙われてるのは黒い噂を持った奴ばかりじゃないか?」

「ははっ悪いことは出来ねえってことだな」

「ああ、お前も気を付けろよ」


 何者かが悪い噂の人物を処刑している。この出来事からいつしか人々の間でこう囁かれるようになった。


 "黒の執行人" が犯罪者を裁いていると。


 犠牲者は夜な夜な狙われていることが名の由来となっていた。

 自警団も捜査をしているが、一向に犯人の正体を掴めていなかった。

 決して痕跡を残さない犯人に「これは神の裁きである」と囁く者まで現れる始末だった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ご主人、次は何処に向かってるにゃ?」


 リアは魔法の鞄(マジックバック)から地図を取り出すとある場所を指差す。


「今ここだから、一番近いのはここだね。ええと、グラナダって読むのかなぁ。もうすぐ見えて来ると思うよ」


 山々に囲まれた人口一万人程の街グラナダ。

 旅人の行き来が盛んであり、周りを囲む豊かな山の幸が街の名物となっており、人気だった。


 今晩泊まる宿を探して、早速噂の料理にありつく。


「にゃもは野菜より魚がいいにゃ」

「文句言わないの。健康の秘訣はお野菜なんだよ」

「にゃもは病気にならないにゃ。ご主人もにゃ」

「ぅ⋯それは、そうだけど⋯」


 まったく、にゃもさんはああ言えばこう言うんだから。


 その後、満足した私はいつもの日課である魔法の勉強を深夜までしていた。

 魔女である私は睡眠は必要としない。

 だから、時間潰しでいつも魔法の勉強をしていたのだ。


 私の常時展開していた危険察知が発動した。

 頭の中でウーウーと警戒音が鳴り響く。

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