最後の魔女110 頼み事
鳥居を潜った先には、何とも幻想的な光景だった。
うわぁ、凄いなぁ⋯なんて綺麗なんだろう。
思わず見惚れていると、私よりも大きな人形の精霊さんが出迎えてくれていた。
「お待ちしておりました。まずは自己紹介をさせて頂きますね。私は精霊女王をしています。宜しくお願いしますね」
ひえぇぇ! 精霊女王って、女王様だよね。偉い人だよね⋯。なんでそんな偉い人が出迎えなんて⋯
「は、初めまして魔女のシュタリアと言います。よ、宜しくお願いしましゅ!」
ぎゃ、やべ、噛んじゃったよお⋯。
精霊女王はクスリと笑みを零して続ける。
「貴女はこれまでたくさんの人や精霊を救って来られました。それは精霊王を通じて私にも聞き及んでいます。その全ての者に成り変わり、感謝を申し上げます」
「あわわ、頭を上げて下さい! 私が好きでしたことですから、どうかどうか気にしないで下さい!」
その後、あたふたしている私はある場所へと案内された。道中、すれ違う精霊さんたちが何だか悲しそうな顔をしていたような気がする。
気のせいかもと思ったけど、今思うとこの目の前の光景を指していたのだろうと思う。
厳重に管理された部屋の中にいたのは、目隠しをされ手足に拘束具を付けられた精霊さんだった。
私たちが中へと入ると、突然喚き出し、身体を激しく揺さ振り暴れ出す。
「お見苦しい姿を見せてしまい、申し訳ありません」
またしても女王様は、私に頭を下げる。
「こ、この方は一体どうされたのですか?」
「先にこの現状を見て頂きたかったのです。詳しく事情を説明しますので、場所を変えましょう」
隣の建屋へと案内され、そこには二体の精霊さんが小さな座布団の上にちょこんと座っていた。
「魔女様、貴女にお願いしたいのは、この子達の娘である先程の精霊、ティナを呪怨から解き放って欲しいのです」
両親の精霊さんが私の元へと飛んで来る。
「どうか、どうかお願い致します」
「娘を助けて下さい⋯」
精霊ティナは、ティンベルという港町の守護精霊をしていた。
しかし、数ヶ月程前に魔族に侵攻されてティンベルは事実上地図から姿を消してしまったのだ。
ティナはその際、魔族に対して抵抗したらしいが、それも虚しく結果的に呪怨という呪いの一種を掛けられてしまった。
それ以来、まるで性格が変わったかのように暴れ出す始末で見境なしに襲い掛かるようになってしまった。
取り押え、半ば幽閉という形で今に至る。
「呪怨ですか⋯」
聞いたことはあるけど、実際に見たことやましてや治したことはない。私のなんちゃって治癒で治せられればいいんだけど、やってみないと分からないな。
「何とかなりそうでしょうか?」
両親はすがるような目でこちらを見つめる。
「分かりません。実際に確認させて下さい」
再びティナの元へと案内される。
ティナは人の気配を感じると先程と同じように暴れ出す。恐らくそういった類の呪いの効果なのだろう。
早速治療を開始する。私の治療は、癒しの効果がある訳ではなく、怪我や病気になる前に時間を戻してしまうやり方だ。会ったことはないけど王都にいる聖女様は本当の意味での治癒を行うみたい。いつか見てみたいな。無理だろうけど、友達になれたら嬉しいななんてね。
私の魔力に呼応し、ティナの身体を薄緑色の光で包み込む。
いつもならば、怪我や病気はこれで治っていた。だけど⋯。
光が収まるとティナは何事もなかったように暴れ出す。やっぱり、私の治療が効いていない。
「ごめんなさい。私の魔法が効いてませんね。次の手を考えます」
私が力が無いばかりに両親は残念そうに項垂れる。
だけど、あてが無い訳ではない。
以前拝借? 押収? しておいた資料の中に呪いに関しての資料が確かあったはず。
魔法の鞄を探り、その時の本を取り出す。
「少し時間を下さい」
私の姿を見ると「先ほどの部屋に移動しましょう」と促され、場所を変えた。
えっと、なになに⋯
呪怨とは呪いの一種で、その効果は数多存在している。ふむふむ。
一般的に費やした媒介の希少度、時間に比例しその効果は増大していく。
何ページもある中から、今回のケースに該当しそうな呪いを探し、解呪する方法を探る感じかな。
呪いを解く為の解呪には解呪薬が必要で、それを作るにはたくさんの材料が必要みたい。
呪いの種類により解呪薬が異なり、即ち材料も異なる。何度も何度も見直したけど、この本には該当しそうな呪怨は載ってなかった。
でも諦めないよ。
次に私が取り出した本は錬金術の極意というタイトルの本だった。ページをめぐるとら薬品の名前、材料が難易度順に記されていた。後は、薬品の効能かな。戦闘に使えそうな薬品もあれば、ただの着色料など、その効果は様々だった。
そして、一番最後のページに記載されていた薬品は、全ての呪いや万病に効く、万能薬と書かれていた。




